下肢挙上動作時における対側下肢支持と腹直筋活動の関係
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説明
【目的】下肢挙上動作は寝返りや起き上がり等の起居動作において利用される動作方略の一つであり、姿勢変換に必要とされるモーメントの発生に重要な役割を果たす。身体末梢部位の空間への挙上動作時には中枢部位の固定が必要とされ、背臥位で下肢を挙上させる際は中枢部位である骨盤の固定が必要となる。挙上下肢以外に骨盤に連結している体節として体幹及び対側下肢の2通りの骨盤前傾に対する制動機構が存在し、何れかの機能に障害がみられた場合、姿勢変換能力の低下や非効率を生じることが推察される。本研究の目的は、一側下肢挙上動作時の対側下肢の床面への支持量を変化させた時の腹直筋の活動量について検討し、下肢挙上動作における対側下肢の役割を明らかにすることである。<BR>【方法】対象は健常成人14名(男9名、女5名、年齢27.0±4.0歳)とした。動作課題は30°の右下肢伸展挙上とし、挙上位で3秒間の保持を行わせた。動作中の左下肢の床への押し付けの程度として「最も楽に自然な方法で(自然支持)」、「強く床に押し付けて(強支持)」、「左下肢重量以上の押し付けを行わずに(無支持)」の3種類の条件を付与して行った。左下肢支持量は床反力計(9865C、KISTLER社)により左下肢に生じる床反力を測定し、筋活動は表面筋電計(MQ8、KISSEI COMTEC社)を用いて右腹直筋の表面筋電図を測定した。挙上位保持中の両波形が安定した1秒間について、床反力はZ成分の平均値を体重で除した値(%wt)、筋電図は積分値を算出し最大等尺性収縮で除した値(%MVC)を求めた。各条件での測定3回の平均値と、非活動時の静止背臥位での測定値を各被験者の代表値として採用した。統計処理は3条件に非活動時を加えた4条件について一元配置分散分析を行い、post hoc testとしてScheffe法による検定を行った。<BR>【結果】床反力(%wt)について左下肢支持条件の要因による主効果が認められ、非活動時(9.0±1.4%)と無支持(8.7±2.0%)に対し自然支持(13.2±2.5%)と強支持(18.7±3.6%)が有意に高値を示した(p<0.01)。筋電値(%MVC)について左下肢支持条件の要因による主効果が認められ、非活動時(10.3±8.2%)、自然支持(13.6±8.5%)、強支持(12.2±7.3%)に対し無支持(28.4±16.7%)が有意に高値を示した(p<0.01)。<BR>【考察】非活動時に対して自然支持で約1.4倍の左下肢支持量を示し、腹直筋活動に差がみられなかったことより、健常者の自然な下肢伸展挙上動作においては、腹直筋の関与は小さく、対側下肢による骨盤の固定の要素が大きいことが示された。無支持において腹直筋活動が有意に高値を示したことより、対側下肢支持による骨盤の固定が行えない場合には、体幹側から骨盤の固定を行うために強い腹直筋の活動が求められることが示された。効率のよい背臥位での下肢挙上動作を行うためには、対側下肢による支持を伴った動作を獲得することが重要であることが示唆された。<BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2007 (0), A1533-A1533, 2008
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205568122496
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- NII論文ID
- 110006801090
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可