サッカー経験者における蹴り脚と支持脚の大腿四頭筋の等速性筋力、仕事量、パワーの比較

  • 小倉 隆輔
    医療法人友愛会 盛岡友愛病院リハビリテーション科
  • 石川 玲
    弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻

説明

【目的】サッカーが盛んになるにつれ、サッカーによる傷害に携わる機会が増えてきている。理学療法士はサッカー選手の身体特性を知る必要がある。一般的に下肢筋力に左右差はないと報告されている。しかし、サッカーの特徴であるキック動作では蹴り脚と支持脚で大腿四頭筋の収縮様式が異なり、また一側下肢で蹴ることが多いため、サッカー選手の下肢筋力には左右差があるのではないかと考えられる。本研究の目的は、ボールの蹴り脚と支持脚での大腿四頭筋の筋力、仕事量、パワーに差がみられるかを等速性の求心性収縮(CON)・遠心性収縮(ECC)の両面から明らかにすることである。<BR><BR>【対象】予め研究目的を説明し同意を得られたサッカー部経験者の男子大学生10名(経験群)とサッカー部未経験者の男子大学生10名(未経験群)の計20名。経験群は、サッカー部員1名で残り9名はサークル活動に参加していた。被験者の蹴り脚が全員右であったため右脚を蹴り脚、左脚を支持脚とした。<BR><BR>【方法】Chattecx社製KIN/COM 500Hを用いて角速度180°/secで始めにCON、その後にECCをそれぞれ連続して5回測定した。なお、左右の測定順は無作為に決定し、CON測定時の膝関節屈曲運動とECC測定時の膝関節伸展運動は測定に不要な動きのため、検者が他動的に行った。得られたトルク曲線からCON・ECCのピークトルク値、仕事量、パワーとそれぞれの左右比(左/右)、ピークトルク値のECC/CON比(E/C比)を求めた。測定を2回実施し、級内相関係数でデータの再現性を確認した結果、両群とも0.7以上となり高い再現性が得られた。そこで、対象者個々に2回の平均値を求めてデータとし、左右の比較(1標本t検定)と2群間の比較(2標本t検定)を行った。<BR><BR>【結果】経験群では左右差がなかった。未経験群のCON仕事量、パワーで右が左より有意に高かった(p<0.05)。左右比を2群間で比較した結果、未経験群が経験群より低い傾向がみられた。<BR><BR>【考察】経験群で測定値に左右差がみられなかった理由として、サッカーにはキック動作以外にダッシュやターンなどの力強い動作が含まれること、競技レベルの選手が少なかったことが考えられた。未経験群のCON仕事量とパワーで右の値が左よりも大きかったのは、左膝関節を非荷重位で高速で伸展するという動作に不慣れであったためと考えられた。仕事量はピークトルク値に比べてパフォーマンスや競技レベルのよい指標であるという報告があり、未経験群では左下肢のスキルの低さがピークトルク値ではなく仕事量とパワーに反映されたと考えられる。今後の課題として、サッカー選手の身体特性を明らかにするためには、対象者の年齢層や競技レベルを考慮したデータの蓄積と縦断的な検討が必要である。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), C0919-C0919, 2007

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205568154240
  • NII論文ID
    130005014034
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.c0919.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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