慢性的坐骨神経痛が下腿三頭筋に与える影響

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  • 外来患者による比較検討

抄録

【目的】外来の臨床場面で腰部及び坐骨神経に病変が有る者に,下腿後面の突っ張り感を訴える場面を良く見かける。しかしその原因は様々で,治療も症状に対しての現状対応が殆どであることから,その他の周辺症状を見逃すことも少なくない。本研究は慢性的に坐骨神経痛を有する者を対象として,坐骨神経痛が周辺症状の一つである下腿三頭筋伸張痛(以下伸張痛)に影響を受けているかを検討した。<BR>【対象および方法】本研究の趣旨について口頭で説明を行い,同意の得られた70名(男性29名,女性41名,平均年齢68.9±14.1歳)を対象とした。対象者は坐骨神経痛の症状が1年以上継続しており定期的に当院で治療している50名(以下治療群),坐骨神経痛は既往としてもなく治療は行っていない20名(以下非治療群)の2群を対象とし比較検討を行った。なお対象者において,腰部及び下肢に関する手術歴や極度な変形を伴う者は除外した。方法は対象者を起立矯正台にて,20秒間の通常静止立位をとらせた。この際,足関節背屈矯正角度は20°(背面角度10°)とし,両足部を平行で最深部にて踵接地を行うよう指示をした。この時の伸張痛をVAS(Visual Analog Scale)にて評価し,両群間の比較検討を行った。解析データは,左右測定値の高値側とした。統計処理には両群間のVASの比較にWilcoxon順位和検定を用い(有意水準1%以内),また両群間の体格指数(以下BMI)はt検定を用いた(優位水準5%以内)。<BR>【結果】VASの平均値は,治療群7.2±1.5に対して,非治療群は4.1±1.4であり,両群間で有意差が確認できた。このことから,治療群は下腿三頭筋伸張時における疼痛憎悪が認められた。BMIにおいては,有意差を認めなかった。<BR>【考察】今回の結果から,慢性的坐骨神経痛を有する者はVASが高値傾向であることが確認できた。これは伸張痛に影響を及ぼすとともに,症状長期化の一要因となる可能性を示唆した。その要因には少なからず疼痛に伴う身体のアライメントの変化や,ラセーグ徴候などに代表される下肢後面の疼痛等の問題があると考える。アライメントにおいては,腰部や下肢の疼痛に伴い普段の動作時の筋出力の不均等から,また坐骨神経系の圧迫により,その末梢部の筋に機能不全が起こったものと推察した。これら症状の長期化が,下腿三頭筋の筋疲労や筋力低下などで伸張痛を強める原因となり,結果として坐骨神経痛の改善をより困難にしているのではないだろうか。しかし今回の研究は周辺症状の一つに着目したものであり,伸張痛の対応も考慮する点ではあるが,考察的部分も明確化されていないため,今後その他の要因を含め詳細な検討が必要である。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A0073-A0073, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205568180224
  • NII論文ID
    130005014709
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.a0073.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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