保存療法となった高齢者大腿骨近位部骨折の機能予後に影響する因子の検討

DOI
  • 本庄 正博
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科
  • 村瀬 政信
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科
  • 三次 園子
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科
  • 倉上 啓介
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科

抄録

【目的】<BR>大腿骨近位部骨折では手術療法が第一選択となるが,手術が困難な例や手術を希望しない例はやむを得ず保存療法となる.本研究の目的は,保存療法となった高齢者大腿骨近位部骨折の機能予後に影響する因子を検討することである.<BR>【方法】<BR>2002年9月~2008年5月の間に当院において保存療法を行った65歳以上の高齢者大腿骨近位部骨折31例のうち,受傷前から歩行不可能であった6例と入院中に死亡した10例を除く15例を対象とした.対象は,性別が女性14例,男性1例,受傷時の平均年齢が88±8歳,骨折部位が頚部骨折11例(Garden分類stage1・2:2例,stage3・4:9例),転子部骨折4例(Evans分類安定型1例,不安定型3例)であった.対象のうち,退院時に15m以上歩行可能となった6例を歩行可能群,それ以外の9例を歩行不可能群とした.次に機能予後に影響する因子として,年齢,骨折部位,骨折の認識の有無,受傷前歩行能力,受傷から端座位開始までの日数を調査した.年齢は「90歳以上」「90歳未満」,骨折部位は「頚部骨折」「転子部骨折」,骨折の認識の有無は「認識あり」「認識なし」,受傷前歩行能力は「屋外歩行」「屋内歩行」,受傷から端座位開始までの日数は「30日以上」「30日未満」に分類し,各項目について歩行可能群,歩行不可能群との関連を検討した.統計学的処理はχ二乗検定を用い,危険率を5%とした.<BR>さらに歩行可能群については,平均在院日数,受傷から平行棒内荷重歩行開始までの平均日数,退院時の歩行補助具の種類を調査した.<BR>【結果】<BR>年齢は,歩行可能群が6例全て「90歳未満」,歩行不可能群が「90歳以上」7例「90歳未満」2例であった.骨折部位は,歩行可能群が「頚部骨折」5例「転子部骨折」1例,歩行不可能群が「頚部骨折」6例「転子部骨折」3例であった.骨折の認識の有無は,歩行可能群が6例全て「認識あり」,歩行不可能群が「認識あり」2例「認識なし」7例であった.受傷前歩行能力は,歩行可能群が「屋外歩行」3例「屋内歩行」3例,歩行不可能群が9例全て「屋内歩行」であった.受傷から端座位開始までの日数は,歩行可能群が「30日以上」3例「30日未満」3例,歩行不可能群が「30日以上」5例「30日未満」4例であった.これらの項目のうち,年齢,骨折の認識の有無,受傷前歩行能力について歩行可能群,歩行不可能群との間に有意な関連が認められた.<BR>また,歩行可能群の調査は,平均在院日数238±115日,受傷から荷重歩行開始までの平均日数73±31日,退院時の歩行補助具の種類がT字杖2例,四脚杖2例,シルバーカー1例,交互型歩行器1例であった.<BR>【考察】<BR>保存療法となった高齢者大腿骨近位部骨折では歩行可能となる例は少ないが,受傷前に屋外歩行が可能であり,受傷時に90歳未満で骨折の認識がある場合は,歩行補助具を使用して15m以上歩行可能となりうることが示唆された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), C3P2444-C3P2444, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205568190848
  • NII論文ID
    130004580841
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.c3p2444.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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