超音波診断装置を用いた腰方形筋機能の検討(第2報)

  • 松岡 健
    福岡リハビリテーション専門学校理学療法学科
  • 高山 正伸
    福岡リハビリテーション専門学校理学療法学科
  • 原 賢治
    福岡リハビリテーション専門学校理学療法学科
  • 岩本 博行
    福岡リハビリテーション専門学校理学療法学科
  • 中山 彰一
    福岡リハビリテーション専門学校理学療法学科

説明

【目的】腰痛症は臨床で最も遭遇することの多い疾患のひとつである.その治療アプローチは多岐にわたるが,治療過程の中で疼痛および過剰な筋緊張は共通する大きな阻害因子といえる.これまでの研究により,腰部・体幹の安定性について,特に多裂筋・腹横筋の重要な役割・機能について多く報告され,腰部疾患に対するアプローチとして注目を浴びている. 反面, 時に過剰な活動・硬さ・疼痛を示す腰方形筋については,深部筋でもあり,客観的評価が困難であるため報告は僅かである.我々はこれまでに非侵襲的評価法である超音波診断装置を用い,健常人における腰方形筋内側線維・外側線維動態変化について検討してきた.今回は腰痛群との比較を行い,その機能変化について検討を加えた.<BR><BR>【方法】対象は本研究に同意を得た,整形外科的既往のない男女25名(以下健常群), 神経学的徴候のない慢性腰痛症者男女10名(以下腰痛群)とした.平均年齢25.4歳±2.24,腰痛群の経過期間は6か月以内とした.方法は,超音波診断装置(ALOKA社製SSD‐900)を用い,課題動作時の腰方形筋および腸肋筋動態をBモード・長軸走査にてイメージングした.プローブ(リニアプローブ・7.5MHz)の位置は,上後腸骨棘(PSIS)からの垂線と,第3腰椎高の交点とした.測定した超音波画像はDVDレコーダーに記録し,パーソナルコンピューターに取り込み静止画像を得た.測定値はmm単位で測定.測定肢位は,静止立位・体幹前屈20度・40度・最大前屈位とし,角度測定は立位にて大腿骨軸を基本軸,大転子・肩峰を結ぶ線を移動軸とした.測定条件は負荷なし(自重のみ)・負荷あり(背筋力計を用いた等尺性収縮)の2条件とした.測定に際し,骨盤の固定は行っていない.統計処理は,反復測定分散分析後,Bonferoniを用い多重比較検定を行い,各群間比較にはMann-Whitney検定を用いた.有意水準は5%未満とした.<BR><BR>【結果】健常群,腰痛群間の筋厚比較では,全ての角度・条件下で腰痛群が有意に高値を示した(p<0.01).また,腰痛群での各筋筋厚は2群とも腰方形筋外側線維>腸肋筋>腰方形筋内側線維の順であった.腰痛群各筋の角度別筋厚変化に有意な差はなかった.負荷あり時の角度別筋厚変化では,腸肋筋は前屈20度から40度で高値を示し・腰方形筋外側線維は前屈20度で高値を示した.腰痛群腰方形筋内側線維は条件に関わらず,角度変化に伴い筋厚が減少した.<BR><BR>【考察】今回の結果より,健常人でみられた腰方形筋内側線維の前屈初期での筋厚変化はみられなかった.このことは,分節的安定性の欠如へ繋がり,立ち上がり動作,歩き始め等に経験する動作初期の痛み・動きづらさとの関係を推測させる.また,腰方形筋外側線維は負荷量により筋厚変化に違いがみられることより,腰痛発症機序との関連が考えられる.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), C3P2382-C3P2382, 2009

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205568214272
  • NII論文ID
    130004580781
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.c3p2382.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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