脳卒中片麻痺患者の振動刺激による痙縮抑制効果について
説明
【目的】振動刺激は麻痺に対する促通効果があるとされているが,一方では痙縮筋に直接刺激を与える治療は痙縮を増強してしまう危惧がある.我々は脳卒中片麻痺上肢において,振動刺激を筋に直接与える方法で痙縮抑制に効果があることを報告している.今回,脳卒中片麻痺下肢に対し,同様の治療を施行し,痙縮への影響を検討したので報告する.<BR>【方法】対象は重度な高次脳機能障害のなく,研究について同意を得た片麻痺患者6名(男性6名,年齢;63.2±13.1歳,罹病期間;5.2±3.5ヵ月,Brunnstrom tset,stageV4名,IV2名)である.振動刺激は背臥位でバイブレーター(大東電機工業株式会社製MD-01)を5本同時に使用し,麻痺側足底から下腿後面にかけて5分間加えた.振動刺激は足関節背屈位にして下腿三頭筋を伸張しながら行った.評価は振動刺激治療の前後に行い,以下の項目を実施した.1)10m歩行時間2)下肢軌道追従機能評価装置(鹿児島大学工学部作製)による下肢運動機能の評価3)筋力測定装置サイベックス(cybex6000清水メディカル株式会社)による足関節背屈抵抗最大トルク値(サイベックスは背屈の角速度を15°/s,60°/s)4)足関節背屈のModified Ashworth Scale(以下MAS)<BR> 評価は訓練効果を除くため評価前に十分な練習の後,測定を行った.<BR> 統計処理は対応のあるt検定を用い,危険率0.05%以下を有意とした.<BR>【結果】振動刺激治療によって10m歩行時間とMASには有意差はみられなかったが減少傾向がみられた.サイベックスによる足関節背屈抵抗最大トルク値は角速度15°では有意差はみられなかったが,減少傾向がみられた.角速度60°では振動後が有意に減少した(p<0.05).追従装置による評価では運動・誤差面積(p<0.05),幾何学誤差面積(p<0.01)ともに有意に減少がみられた.<BR>【考察】今回の研究で振動刺激によって脳卒中片麻痺下肢の痙縮抑制および下肢の随意運動が向上したため,痙縮筋に直接振動刺激を与えることにより痙縮が抑制され,主動作筋と拮抗筋の同時収縮が軽減したと考えられ,歩行時間や下肢の運動機能の改善に繋がったと推察される.今後,電気生理学的評価を加え,さらに症例数を増やし痙縮に対する振動刺激の有用性を検討していく.<BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2007 (0), F0622-F0622, 2008
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205568237312
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- NII論文ID
- 130005016241
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可