理学療法領域における解剖学教育の質的水準の向上を目指して

DOI
  • 工藤 慎太郎
    国際医学技術専門学校理学療法学科 愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 柘植 英明
    中部リハビリテーション専門学校 愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 村瀬 政信
    相生山病院リハビリテーション科 愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 金丸 みき
    相生山病院リハビリテーション科 愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 橘田 正人
    多治見市民病院リハビリテーション科 愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 壱岐 英正
    渡辺病院リハビリテーション科 愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 小松 真一
    三好町民病院リハビリテーション科 愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 鳥居 亮
    相生山病院リハビリテーション科 愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 児玉 亮
    市立四日市病院リハビリテーション科 愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 時田 幸之輔
    埼玉医科大学短期大学理学療法学科 愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 小澤 由紀
    愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 太田 慶一
    愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 浅本 憲
    愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 中野 隆
    愛知医科大学医学部解剖学講座

書誌事項

タイトル別名
  • 愛知医科大学解剖セミナーの取り組み

抄録

【目的】<BR>理学療法教育における解剖実習は,医学部において医学生が既に剖出した遺体の短時間の観察に留まることが多い.そのため身体構造の三次元的な位置関係の理解及びその知識を臨床応用するには不十分である.愛知医科大学医学部解剖学講座では,6年前から複数の養成校教員および臨床実習指導者を対象とした解剖セミナーを開催し,『解剖画像教材』の開発・共有化に取り組んでいる.同セミナーの取り組みを紹介し,実際に『同教材』を用いた教育方法および教育効果を例示する.<BR>【方法】<BR>『解剖画像教材』は,必要な画像や剖出方法を検討したのち,セミナー期間中に局所的な剖出を行い記録した画像をPower Pointでまとめたものである.臨床上重要になる部位や講義で教授しにくい部位を中心に構成し,三次元的位置関係を理解させるために,臨床的かつ専門教育的な視点から種々の‘段階的解剖術式’を試みている.例えば,神経絞扼部位を体表面から深層に向かって段階的に剖出することによって,解剖学的絞扼因子の三次元的構造の理解を図った画像などである.<BR>『解剖画像教材』は,名古屋地区のみでなく福岡地区を含む養成校および実習施設において共有化している. 今回は,A専門学校(3年制課程)の第2学年を対象に行った「胸郭出口症候群の運動療法」の講義を例示する.講義前半は,腕神経叢周囲の解剖の復習に『同教材』を用いた.後半は,『同教材』を供覧しながら,腕神経叢の絞扼される条件および絞扼性神経障害に対する運動療法を学生自身に考えさせ,発表させる形式をとった.すなわち後半は,PBLのシナリオとして『同教材』を活用した.講義終了後,感想文について内容分析の手法を参考に教育効果を分析した.<BR>【結果】<BR>学生が講義により得られた効果は以下の7つに分類できた.1)身体知識の応用力の獲得(25.6%).2)モチベーションの向上(20.6%).3)イメージ化の促進(19.3%).4)画像教材の有効性(13.4%).5)新たな学習方法の築き(10.1%).6)新たな思考過程の構築(8.8%).7)講義への要望(2.1%).<BR>【考察】<BR>解剖学の成書は,矢状面や前額面など一定の角度から捉えた図譜が多く,かつ,筋系,骨格系などの系統別に記載されていることが多いため,筋と神経や血管との相対的位置関係を三次元的に理解することは困難である.また,市販の解剖画像教材は基礎医学者の視点で作成されたものであり,臨床との接点は不明確なことが多い.我々の『解剖画像教材』は,臨床的かつ専門教育的な視点から種々の段階的解剖術式を試み,剖出方法や撮影角度を工夫している.そのため,「胸郭出口症候群の運動療法」の講義において,腕神経叢の周囲の解剖について三次元的な理解を促進し,さらに解剖学的知識を運動療法に応用する能力を賦活することも可能になったと考えられる.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), G0396-G0396, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205568252672
  • NII論文ID
    130005016265
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.g0396.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ