歩幅の左右差と下肢骨形態の検討

  • 宮城 健次
    名護市スポーツリハビリテーションセンター スポーク・クリニックリハビリテーション部
  • 仲間 栄二
    名護市スポーツリハビリテーションセンター スポーク・クリニックリハビリテーション部
  • 目島 直人
    名護市スポーツリハビリテーションセンター スポーク・クリニックリハビリテーション部
  • 新垣 太樹
    名護市スポーツリハビリテーションセンター スポーク・クリニックリハビリテーション部
  • 比嘉 竜二
    名護市スポーツリハビリテーションセンター スポーク・クリニックリハビリテーション部

書誌事項

タイトル別名
  • 歩幅の左右差と下肢骨形態の検討--下肢回旋要素に着目して
  • ホハバ ノ サユウサ ト カシコツ ケイタイ ノ ケントウ カシ カイセン ヨウソ ニ チャクモク シテ
  • 下肢回旋要素に着目して

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抄録

【目的】歩行分析は理学療法士にとって重要な評価の一つであるが、臨床で行う評価は主観的評価であり、その方法や障害発生メカニズムへの結び付けに関して、まだ十分解明されてはなく多角的視点より検討する必要がある。また、歩行形態は多種多様で正常、異常という範囲での検討では臨床で対応できない現象も多く経験する。我々は歩行動作を検討する際、歩幅の左右差に着目し障害発生とメカニカルストレスを推察する。また、その左右差は骨形態の左右差、個体差との検討も行い、障害の原因となる動きか否かを判断している。今回、健常者を対象に歩幅の計測と歩幅に影響を与えると考えられる回旋要素を含んだ骨形態計測として大腿骨前捻角(以下F角)、果部捻転角(以下T角)、水平面足関節軸に対する足長軸のなす角(以下AT角)を計測し検討を行なったので報告する。<BR><BR>【方法】対象は健常成人10名(男性6名、女性4名、平均年齢25.5歳、平均身長165.5cm、平均体重61.8kg)であった。自由歩行の歩幅(以下歩幅)計測とF角、T角の計測はデジタルカメラで記録した画像を画像解析ソフトImageJにて解析し距離と角度を算出した。歩幅計測はデジタルビデオカメラで矢状面から2往復撮影し、4ストライド左右各々4ステップの歩幅を計測した。歩幅は足尖離地前と対側足底接地時期の左右足尖間距離とした。尚、右の歩幅は左脚を前に踏み出す距離とする。F角の計測はRyder法にて計測した。計測肢位は腹臥位で膝関節を90度屈曲する。大転子が最外側に達するまで内旋させ、下腿長軸と床面からの垂線となす角をF角とした。T角は、MichaelO.Seibelらによる方法を用いて計測した。F角、T角の計測は臥位となった被検者の足元よりデジタルビデオカメラで撮影した。各計測を3回行い、平均値を角度として採用した。尚、果部捻転角は大きいほど外捻を示す。AT角の計測は計測用紙上に被検者を自然立位の状態で立たせ、あらかじめマーキングした両内外果の直下と踵中央、第2趾足尖を計測用紙にトレイスした。両内外果に対する垂直線と踵中央と第2趾足尖を結んだ線となす角を分度器で計測した。垂直線に対し第5趾方向を+とした。検討方法は歩幅、F角、T角、AT角それぞれの左右差を算出(右の値から左の値を引いた差)し、歩幅左右差に対する各角度の左右差との相関関係を検討した。<BR><BR>【説明と同意】対象者には事前に本研究の主旨を説明し、同意を得て計測を実施した。<BR><BR>【結果】歩幅左右差とT角左右差で正の相関関係(r=0.64、p<0.05)、歩幅左右差とAT角左右差で負の相関関係(r=-0.71、p<0.05)が認められた。歩幅とF角左右差に関して有意な相関関係は得られなかった。<BR><BR>【考察】我々はこれまで本学術大会において下肢回旋運動の分析として三次元動作解析装置での振り向き動作、歩行動作の分析と下肢回旋要素としての大腿骨前捻角、果部捻転角の計測を行ない同側下肢間、両側下肢間での運動特徴と形態特徴を報告してきた。回旋運動は歩行時歩幅の拡大、動きのスムーズさ、運動制御など歩行の質の部分に大きく関与していると思われ、運動器疾患での障害発生や疼痛誘発、回避などに大きく関与しているものと思われる。歩行動作は左右交互に行う循環運動であり両側下肢間が協調的に動いていることから左右差、運動の偏りが影響しやすいものと推察できる。今回の結果から歩幅が大きくなる要素として、骨形態のT角が大きい、つまり右の歩幅が大きいとき右の下腿が左に比べ外捻している。また、その下腿外捻に対して進行方向につま先を向けるような位置関係となるAT角が第1趾方向への位置を示す傾向が確認された。このような形態は立脚中期以降に足部を強固する作用に関与すると思われる。また、つま先を進行方向へ向け歩幅を確保するのに有効であるとも考えられる。最も大きい回旋可動域性を有する股関節で歩幅がF角からの影響は確認されなかったことは興味深い。歩行時下肢全体の回旋運動は立脚初期から中期にかけて内旋、中期から後期まで外旋すると言われている。しかし同側下肢間の回旋運動は立脚初期に股関節、膝関節は同時に内旋するが早期に回旋可動性の少ない膝関節は外旋し、その後は股関節、膝関節が協調しあうように逆の運動をすることが確認されている。骨形態は運動特徴、荷重応力に影響を受け形成されているものと思われ、可動性の少なく床に接した遠位が固定されることによる捻れ応力の影響を受けやすい足部、下腿の形態に運動特徴が表れやすいものと考える。今回の結果から骨形態の把握により歩行特徴を捉えられる可能性が示唆された。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】骨形態特徴と歩行特徴を把握することは理学療法に対し個体差、個人差を考慮した障害発生の検討を行うことが可能になり、予防医学に対しても重要な示唆を提供するものと考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), A4P2031-A4P2031, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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