高齢者における視覚機能がADLに及ぼす影響

説明

【目的】<BR>身体機能である筋力や活動性とADLの関連についての研究は多々あるが、視覚機能とADLに関する研究は散見される程度である。これまでに我々は、視覚機能と転倒経験との関連や転倒経験者における視覚機能の加齢影響について報告してきた。視覚機能は、聴力、筋力、バランス能力、歩行機能と同様に加齢に伴いADLを低下させる一要因と考えられる。そこで身体活動の起点となる視覚機能に着目し、日常生活で外部環境の立体的把握を集約する静止視力、周辺視野の視覚機能とADLとの関連について検討することである。<BR>【方法】<BR>自立歩行可能な精神・知的障害を有しない外来通院患者で、研究調査の承諾が得られた男女57名(男性21名、女性36名、平均年齢76.7±5.8歳)を対象とした。調査項目は、質問紙にて性別、年齢、既往歴、現病歴、老研式活動能力指標(以下、ADLスコア)を質問した。視覚機能としては、静止視力、周辺視野を測定した。静止視力はランドルト環を用いた。また周辺視野は、石垣らが考案した視覚機能測定ソフトを使用し、周辺視野は認識率で算出した。日常状態での静止視力の中央値である0.4をcut off値とし、低視力者群(0.4以下)33名と高視力者群(0.5以上)24名の2群に分類し比較検討した。また2群間比較についてはMann-WhitneyのU検定を用い、また静止視力への影響を明らかにするために年齢、周辺視野、ADLスコアを説明変数とするロジスティック回帰分析を行った。静止視力を対象としたcut off値の検討には、ROC曲線を用いた。SPSS ver11.5を用い、5%未満を有意水準とした。<BR>【結果】<BR>1)ADLスコアを低視力者群と高視力者群の2群で比較した結果、低視力者群では有意に低かった(p<0.05)。2)周辺視野を低視力者群と高視力者群の2群で比較した結果、低視力者群では有意に狭かった(p<0.05)。3)日常状態での静止視力を結果変数とするロジスティック回帰分析から、ADLスコアと周辺視野は、有意に関連していた(p<0.05)。<BR>【考察】<BR>本研究結果から、静止視力はADLスコア及び周辺視野に及ぼす影響が明らかとなった。視覚機能は、身体と同様に加齢に伴って低下し、またADLも加齢の影響を受けると報告されている。従って、周囲の立体的把握を集約する静止視力や周辺視野に関しては、日常生活において重要な要素であるため、ADLスコアとの関連性が認められたと考える。今回の結果から、静止視力を基本とした視覚機能が歩行を含めたADLにおいて重要な機能であることが再認識された。今後、ADLの維持・増大を目的としたプログラムを検討していく上で、視覚機能の維持・改善は重要な要素であると考える。<BR>【まとめ】<BR>静止視力はADL能力及び周辺視野に及ぼす重要な要因であることが示唆された。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A0043-A0043, 2008

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205568521728
  • NII論文ID
    130005014679
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.a0043.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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