虚弱高齢者における5回立ち上がりテストの有効性の検証

  • 呉本 冬馬
    医療法人 大泉会 介護老人保健施設 だいせん リハビリテーション科
  • 今岡 真和
    医療法人 大泉会 介護老人保健施設 だいせん リハビリテーション科
  • 七川 大樹
    医療法人 大泉会 介護老人保健施設 だいせん リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • 移乗動作能力の指標として

説明

【目的】近年、高齢者の下肢筋力を簡便に評価する方法として、Jonesらによって開発された30秒間に何回椅子からの立ち上がりが出来るかを評価する30秒椅子立ち上がりテスト(30-s chair stand test :以下CS-30)や10回立ち上がりテスト(Timed stands test 10:以下TST10)が注目されている。これらのテストは両手を組み、立ち上がり動作を行うため、介護老人保健施設(以下:老健)入所者に多く見られる上肢支持にて立ち上がり動作を行う虚弱高齢者は評価対象から外れる。そのため、老健施設の虚弱高齢者向けに、上肢支持を使用した立ち上がりテストを行い、試行回数や方法を修正したFrail Timed stands test 5(以下:F-TST5)を行い、有効性について虚弱高齢者の下肢筋力や移乗時間との関連性から検討した。<BR><BR>【方法】対象は、本研究の内容を説明し、同意を得た施設入所者19名、平均年齢83.9±9.8歳(男性9名、女性10名)を対象とした。調査項目は年齢、介護度、Functional Independence Measure、5回立ち上がりテスト(Frail Timed stands test 5:以下F-TST5)、10回立ち上がりテスト(Frail Timed stands test 10:以下F-TST10)、虚弱高齢者用30秒椅子立ち上がりテスト(30-s chair stand test for Frail Elderly:以下F-CS30)、長谷川式簡易知能評価スケール、転倒回数、等尺性膝関節伸展筋力、等尺性股関節屈曲筋力とした。F-TST5、F-TST10、F-CS30は、プラットホームベッド(高さ45cm)を用いてベッド端から膝窩部を10cm離し2回測定した。移乗時間は椅子をプラットホームベッドに対し、左45°に設置し、開始時から着座までを2回測定した。尚、立ち上がりテストと移乗時間は、上肢支持を使用して行った。統計学的検討には、Spearmanの順位相関係数を用い、有意水準は5%未満とした。<BR><BR>【説明と同意】対象者には本研究の趣旨を説明した上で、書面による同意を得られた対象者に計測をおこなった。<BR><BR>【結果】F-TST5の平均値は、13.3±4.3秒であり、Spearmanの順位相関分析の結果、F-TST10(r=0.96)、F-CS30(r=0.92)、移乗時間(r=0.56)の3項目と関連(p<0.05)を認めた。また、移乗時間と等尺性股関節屈曲筋力(r=0.50)においても関連が認められた。その他の調査項目では、関連を認めなかった。<BR><BR>【考察】本研究では、施設入所中の虚弱高齢者を対象にF-TST5と移乗動作に着目して関連を検討した。その結果、F-TST5と移乗動作に強い関連が認められた。F-TST10と移乗動作との関連性については以前に我々が報告した。平均値は37.4±28.5秒であり、CS-30と比較して施行時間を要する結果となった。F-TST5では平均値が13.3±4.3秒であり、CS-30やF-TST10と比較して施行時間が短く、他のテストとの関連性もあり、そのため、F-TST5が移乗動作能力の評価法として、簡便かつ有用である可能性が示唆された。さらにF-TST10で得た移乗動作との関連性はF-TST5でも同様の傾向であり、F-TST5は上肢を使用した複合的な移乗動作の評価方法として有用である可能性が示唆された。TST-10やCS-30などの既存の立ち上がりテストの基準から対象外となっていた虚弱高齢者に対し、移乗を評価する方法として上肢支持を使用するF-TST5を行うことで、広範な対象者に適応できる評価法になる可能性があると考える。今後は対象者を増やし判断値を求め、移乗動作の自立度の判定基準となる定量的な評価法にしていきたいと考える。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】臨床で用いられているTST-10やCS-30などの既存の立ち上がりテストの基準では、評価対象から外れていた虚弱高齢者を対象にF-TST5を行い移乗動作との相関を認めた。TST-10やCS-30よりも簡便に行うことができ、虚弱高齢者の移乗動作について定量化する評価法になり、手すりを使用して行うことで、より広範な対象者に適応できるテストとして有用であると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), EcOF1102-EcOF1102, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205570970880
  • NII論文ID
    130005017743
  • DOI
    10.14900/cjpt.2010.0.ecof1102.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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