外反母趾と扁平足,バランス能力が転倒に及ぼす関係についての検討

説明

【目的】足趾・足底の機能向上は、バランス能力の改善が得られると報告されており,足趾・足底の評価は軽視してはならない評価項目の1つと言える.しかし転倒への影響を述べている先行研究は見当たらないのが現状であり,バランス能力低下が転倒にどの程度の影響を与えるのかは不明である.今回我々は、足趾に着目し、外反母趾と扁平足の有無,バランス能力が転倒に影響を及ぼしているのかを検討したので報告する.<BR><BR>【方法】過去1年以内に、転倒している群(転倒群)と転倒していない群(非転倒群)をアンケート調査にて分類し,足の外郭線を引き,第1趾側角度の計測と床面から舟状骨下端までの距離を実足長で除した値である縦アーチ高率を計測する.第1趾側角度と縦アーチ高率にて転倒群と非転倒群にて比較する.また第1趾側角度16°以上が何例いるのか転倒群と非転倒群で比較,縦アーチ高率にて男性16.4%以下,女性14.6%以下が何例いるのかを転倒群と非転倒群で比較する.バランス能力は,FRTと片脚立位にて転倒群,非転倒群で比較する.<BR><BR>【説明と同意】65歳以上の高齢者の中で当院の介護予防事業が適当とされ,研究目的および参加に同意が得られた女性32例,男性13例の計45例である.平均年齢は73.2±5.1歳,平均身長は151.9±9.5cm,平均体重は55.6±9.2kgであった.<BR><BR>【結果】転倒群は19例であり,非転倒群は26例であった.第1趾側角度は転倒群が平均左12.7±7.7°,右13.3±9.0°,非転倒群が平均左15.8±8.4°,右16.4±9.0°であり,有意な差は得られなかった.縦アーチ高率は転倒群が左15.2±2.6%,右15.3±3.4%,非転倒群が左16.2±1.7%,右15.6±2.0%と有意な差は得られなかった.第1趾側角度16°以上は,転倒群が左6/19足(31.6%),右6/19足(31.6%),非転倒群が左11/26足(42.3.%),右11/26足(42.3%)と非転倒群の方が第1趾側角度の大きい症例が多数であった.縦アーチ高率の男性16.4%以下,女性14.6%以下は,転倒群が左9/19(47.4%),右10/19(52.6%),非転倒群が左6/26(23.1%),右9/26(34.6%)となり,転倒群の方が非転倒群と比べ,縦アーチ高率の低い症例が多数であった.FRT,片脚立位は,転倒群と非転倒群にて有意な差は得られなかった.<BR><BR>【考察】浅井らは,足趾の機能がバランスに大きく影響を及ぼし,屈筋群などが低下しているものはバランス能力が低下していると述べている.また酒向らは足趾の外反母趾変形がある群は変形が無い群に比べ,バランス能力が低下していることを報告している.他にも過去の先行研究にて,足趾の機能低下はバランス低下を引き起こすと多数,報告されている.今回の結果からは,足趾の機能は転倒には大きな影響を及ぼさないことが示唆された.しかし,扁平足が疑われる症例が転倒群に約半数も見られたことから,内側アーチの影響は無視できないと思われる. FRTや片脚立位での結果にても有意差は得られず,バランス能力低下が転倒を引き起こすとは限らないことを示唆し,バランス訓練にて能力を向上させても必ずしも転倒を予防することは,できないと考えられた.<BR><BR><BR>【理学療法学研究としての意義】本研究にて足趾の外反母趾変形が転倒への影響が小さく,扁平足が転倒への影響に可能性があることを示唆した.またFRT,片脚立位でも有意差は得られず,バランス能力低下が必ずしも転倒に繋がるとは限らないと考えられた.バランス能力が転倒に与える影響について検討していくうえで本研究の意義は大きいと思われた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), E4P3191-E4P3191, 2010

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205571101696
  • NII論文ID
    130004582882
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.e4p3191.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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