CBPサプリメントを用いたダイナミックフラミンゴ療法が骨関連因子に及ぼす影響
説明
【はじめに、目的】 本研究では濃縮乳清活性蛋白(CBP)サプリメント併用によるダイナミックフラミンゴ療法(DFT)が骨密度および骨代謝マーカーに及ぼす影響について検討した。また、CBPサプリメントの相乗効果がもたらす臨床的な知見を得て、骨改善における運動方法を確立することを目的とした。【方法】 対象者は主な疾患がなくエストロゲンや骨代謝に影響を及ぼす医薬品を服用していない健常な65歳以上の閉経女性28名であった。対象者は対照群(C群)、DFT群(DFT群)、DFT+CBPサプリメント摂取群(DFT-CBP群)の3群に分け、1ヶ月間の介入研究を行った。DFT-CBP群にはCBPサプリメント錠剤(CBP60mg/1錠)を用い、1日1回、1ヶ月間経口摂取とした。そしてDFT群およびDFT-CBP群には、週5回、左右それぞれの1分間のDFTを朝、昼、晩に実施した。採血は早朝空腹時に座位にて肘正中静脈より行った。測定項目はカルシトニン、クレアチニン(Cr)、総コレステロール(TC)、HDLコレステロール(HDL)、中性脂肪(TG)などであった。骨密度についてはA-1000PLUS(LUNAR社製)を用い、ケガや骨折などの既往歴がない側の踵骨を測定した。骨密度の評価にはステフネス、YAM比、同年齢比を用いた。骨形成マーカーとしてはEIA法によるbone specific alkaline phosphatase(BAP)を測定した。そして骨吸収マーカーとしてはELISA法による血中deoxypyridinoline(DPD)を測定し、Crにて補正した。結果についてはIBM SPSS Statistics19(SPSS社製)を用いて、平均および標準偏差を求めた。また、各群における実験開始前と実験後の比較についてはWilcoxon signed-rank testを行い、有意水準はp<0.05とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の対象については公開応募とし、介入研究で用いるDFTおよびCBPサプリメントの服用が可能な人々であった。対象者には研究の目的および方法などについては口頭と資料を用いて十分な説明を行い、書面にて同意を得た。なお、本研究は青森県立保健大学健康科学部における倫理委員会の承認を得ている。【結果】 DFT群においてもC群と同様に骨密度および骨代謝マーカーのすべての項目に有意な変化は見られなかった。そして血液成分ではカルシトニンが28.2%(p<0.001)有意に増加した。一方、DFT-CBP群においては骨密度の評価指標であるステフネスが19.4%、YAM比が20.0%、同年齢比が20.1%それぞれ有意に上昇(いずれもp<0.05)し、骨代謝マーカーのDPD/Crが13.8%(p<0.05)有意に増加した。そして身体組成については除脂肪量が1.0%減少し、血液成分についてはカルシトンが32.4%上昇、TCが4.5%増加、TGが20.2%減少、HDLが9.5%増加のそれぞれ有意な変化が見られた(いずれもp<0.05)。【考察】 骨密度や骨代謝の影響因子としては性や加齢をはじめ、栄養、メカニカルストレスなどが挙げられる。DFTによる片脚立位はメカニカルストレスとして両脚立位時の2.75倍の負荷量がかかり、1分間の立位維持は約53分間の歩行と同程度の負荷が大腿骨頸部に与えられる。そして本研究で用いたCBPはin vitroで骨芽細胞の活性化が報告されている。また、CBPの作用には骨芽細胞の他に骨の成長や強化に関与する成長ホルモンの分泌、インスリン様成長因子の分泌の活性化が示唆されている。本研究のDFT群においては骨密度の顕著な変化は見られなかったが、血液成分では骨吸収細胞の活性因子であるカルシトニンが上昇した。これはDFTによる骨へのメカニカルストレスの作用であり、簡便なDFTでも骨改善の可能性と考えられる。それに対して、DFT-CBP群におけるカルシトニンおよびDPD/Cr、身体組成の顕著な変化はDFTによるメカニカルストレスにさらにCBPの作用が加わり、骨代謝への活性化を促進した結果と考えられた。これらのことから、単独のDFT実施のみの骨改善方法より、CBPのような栄養サプリメントを併用した方がさらに高い効果を得ると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 骨格系と運動方法は理学療法における極めて重要な領域であるが、EBMに基づいた骨改善の方法は未だに確立されていない。本研究では骨代謝の特性から運動療法による骨改善方法を検討し、今後のEBMに基づいた学際的な理学療法研究につながると考えられる。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2011 (0), Ea0346-Ea0346, 2012
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205571164544
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- NII論文ID
- 130004693395
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可