脳卒中片麻痺患者に対する通所リハビリテーションの開始時期による効果の違い

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抄録

【目的】<BR> 脳卒中患者において通所リハビリテーション(以下,通所リハ)は多くの場合,在宅復帰後の機能や能力の維持,向上を図ることを目的に行われる.理想的には,急性期・回復期リハ後,速やかに通所リハに移行することが望ましいと考えられるが,実際には通所リハ開始時期は社会的な要因等によりさまざまである.今回,当院併設の通所リハ(以下,当通所リハ)を利用した脳卒中患者において,当通所リハ開始時期の違いによる継続的リハ効果の違いについて検討したので報告する.<BR>【方法】<BR> 2007年5月から2009年10月までに当通所リハを利用し,長期に継続して介入および評価の行えた脳卒中片麻痺患者で,歩行FIMが5以上(見守り以上)の34名(平均年齢63.1歳±9.4)を対象とした.対象である34名の下肢の麻痺レベルはBrunnstrom stage(以下,BRS)2が1名,BRS3が12名,BRS4が12名,BRS5が9名であった.今回,リハ開始時期による効果の違いを検討する為,発症日(初回発作)から初回利用日までの期間が180日以下を回復期開始群(18名),181日以上を慢性期開始群(16名)に分類した.<BR> 評価項目は,下肢筋力,10m最速歩行時間,timed up and go test(以下,TUG)とした.下肢伸展筋力は三菱電機社製strength ergo240を使用し麻痺側,非麻痺側下肢伸展ピークトルク値を計測し,下肢筋力とした.また,歩行は普段用いている杖や装具の使用を認めた.評価は,初回利用時,3か月後,6か月後,9ヶ月後,12ヶ月後に行った.統計処理は回復期開始群および慢性期開始群それぞれの評価項目で反復測定分散分析後,多重比較検定(Tuky’s HSD)を行なった.なお,有意水準は5%未満とした.<BR>【説明と同意】<BR> 本研究は,東京湾岸リハビリテーション病院倫理審査会において承認を受け,対象者に研究内容について説明のうえ同意を得た.<BR>【結果】<BR> 回復期開始群においては,麻痺側下肢筋力,10m最速歩行時間,TUGで有意な改善を認めた(P<0.01).多重比較検定の結果,麻痺側下肢筋力は,初回利用時と6ヶ月(P<0.05),9ヶ月(P<0.05),12ヶ月(P<0.05)において有意に改善した.また,10m最速歩行時間およびTUGともに,初回利用時と3ヶ月(P<0.05),6ヶ月(P<0.01),9ヶ月(P<0.01),12ヶ月(P<0.01)にて有意な改善を認めた.一方,慢性期開始群では,麻痺側下肢筋力,TUGで有意差を認めた(P<0.05).多重比較検定では,麻痺側下肢筋力において,初回利用時と6ヶ月(P<0.05)で有意な改善を認めた.また,TUGでは,初回利用時と9ヶ月(P<0.05),12ヶ月(P<0.01)において有意な改善を認めた.<BR>【考察】<BR> 当通所リハによる長期の介入により,回復期開始群および慢性期開始群の両群において,機能や能力の改善を認めた.しかしながら,両群の改善の傾向には若干の違いを認めた.回復期開始群においては,麻痺側筋力,歩行時間やTUGにおいて,効果は介入早期から認められ,その後も長期間にわたり改善した.一方で,慢性期開始群においては,介入早期には有意な改善を認めず,介入後6ヶ月超ではじめて麻痺側筋力,TUGにおいて改善を認めた.<BR> 回復期開始群において早期より改善が認められた要因としては,開始時期が機能や能力の面でまだ回復段階であったことが一因と考えられる.同時に今回の結果からは,急性期や回復期の後にもまだ十分な伸びしろを有しているとも言える.一方,慢性期開始群において,介入後6ヶ月超で機能の向上が得られたことからは,慢性期の脳卒中片麻痺においても,継続して長期に通所リハを行うことでまだ機能・能力の向上がはかれる可能性があることが示された.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 脳卒中片麻痺に対する通所リハ効果はその開始時期の違いにおいて,効果出現時期に差異があることが示された.このことは,通所リハを行う上での機能予後予測の際に重要な示唆を与える.また同時に,どのような時期においても通所リハにより機能,能力の改善が得られる可能性があることを示唆した.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), E3O2224-E3O2224, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205571341312
  • NII論文ID
    130004582800
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.e3o2224.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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