検査測定実習における社会人基礎力の問題点

DOI
  • 松田 憲亮
    国際医療福祉大学 福岡リハビリテーション学部 理学療法学科
  • 中原 雅美
    国際医療福祉大学 福岡リハビリテーション学部 理学療法学科
  • 田原 弘幸
    国際医療福祉大学 福岡リハビリテーション学部 理学療法学科
  • 池田 拓郎
    国際医療福祉大学 福岡リハビリテーション学部 理学療法学科
  • 永井 良治
    国際医療福祉大学 福岡リハビリテーション学部 理学療法学科
  • 金子 秀雄
    国際医療福祉大学 福岡リハビリテーション学部 理学療法学科
  • 黒澤 和生
    国際医療福祉大学 福岡リハビリテーション学部 理学療法学科

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抄録

【はじめに、目的】経済産業省は,「職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事を行っていく上で必要な基礎的な能力」を「社会人基礎力」と定義し,意識的に育成していくことが重要としている.理学療法士の養成教育においても,特に臨床実習の際など,社会人基礎力に含まれる情意面の指摘を受ける学生が増加しているように感じる.本研究では,臨床実習指導に活用するための基礎資料にすることを目的に,社会人基礎力評価シートを用いて,検査測定実習を経験した学生の社会人基礎力の変化を検討するとともに,学生の評価と教員による他者評価とを比較し,学生と教員の評価の相違点を検討した.【方法】対象学生は,平成24年度に検査測定実習に参加した本学部理学療法学科3年生のうち,本研究に参加同意の得られた67名(男性36名,女性31名),平均年齢は20.6±0.7歳であった.検査測定実習は,本学3年次後期の開講科目であり,臨床現場において,検査測定の技能の向上を図ることを目的としている.学生にとっては,本格的な臨床実習前のプレ実習の意味合いを持つとともに,実際に患者様を評価する初めての機会となる.方法は,学生に検査測定実習前後の社会人基礎力を自己評価してもらうとともに,検査測定実習の指導を担当した教員に,学生の社会人基礎力を実習終了後に評価してもらった.なお,他者評価を担当した教員は,これまで本学の教育において,社会人基礎力評価シートを他者評価として活用した経験のある者とした.社会人基礎力評価シートは,3分類12項目の能力要素(前に踏み出す力;主体性・働きかけ力・実行力,考え抜く力;課題発見力・計画性・創造性,チームで働く力;発信力・傾聴力・柔軟性・状況把握力・規律性・ストレスコントロール力)により構成されている.本研究では,能力要素項目別に,5段階にて評価した.統計解析は,学生の検査測定実習前後の社会人基礎力の能力要素12項目別の比較にWilcoxon符号付順位検定,学生の検査測定実習後と教員の他者評価の社会人基礎力の能力要素12項目別の比較にMann-Whitney検定を用いた.なお,有意水準は,5%未満をもって有意とした.【倫理的配慮、説明と同意】対象には本研究の内容を十分に説明し,書面にて同意を得た.また,調査データの取り扱いは,分析担当者が実施し,情報管理に配慮して行った.【結果】学生の検査測定実習前後の社会人基礎力の能力要素12項目別の比較では,12項目すべてが,検査測定実習後に有意に高値を示した(p<0.05).学生の検査測定実習後と教員による他者評価の社会人基礎力の能力要素12項目別の比較では,前に踏み出す力の働きかけ力,チームで働く力の発信力・柔軟性・規律性の4項目において,教員の評価が学生の実習後の評価よりも,有意に低値を示した(p<0.05).【考察】本研究の結果,検査測定実習後に,学生の社会人基礎力は高値を示していたが,主にチームで働く力,前に踏み出す力については,学生と教員の間で認識が異なっていた.学生にとって検査測定実習は,実習期間が2週間と短く,実習課題も少ないため,実習中に失敗などを経験することも少ない.そのため,学生の自己評価が高くなったと考えられる.一方,教員は臨床の視点から,学生に一定の到達度を求めているため,他者評価が低くなったと考えられる.これらのことから,チームで働く力や前に踏み出す力については,検査測定実習前に指導することの必要性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】本研究は,学生が臨床実習前に欠けている能力を明確にし,不足している能力を学内教育において強化することにより円滑な臨床実習を行うことに寄与する.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48100957-48100957, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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