転倒回数と座位足開閉テスト施行回数の関係

DOI
  • 小林 薫
    国際医療福祉大学 保健医療学部 理学療法学科 国際医療福祉大学大学院 保健医療学専攻 理学療法学分野
  • 丸山 仁司
    国際医療福祉大学 保健医療学部 理学療法学科

抄録

【目的】座位足開閉テストとは、健康・体力づくり事業財団の体力テストのプログラム(平成3年)に掲載されている両足開閉を筆者らが一部改変して用いているテストである。第43回日本理学療法学術大会において、過去1年間に転倒経験のある高齢者は転倒経験のない高齢者に比べて本テスト施行回数が有意に減少していたことを報告した。そこで、本研究では過去1年間の転倒回数に着目し、転倒回数の違いが座位足開閉テスト施行回数に影響を及ぼすか否かについて検討した。<BR><BR>【方法】被験者は高齢者66名(男性10名、女性56名:平均年齢79.0±4.1歳)で、全員自立した歩行が可能であった。なお、中枢性運動麻痺および重症腰痛・下肢痛を有する者は対象から除外した。各被験者に過去1年間の転倒回数を聴取し、Bergらの転倒分類に従い、非転倒群、1回転倒群、複数回転倒群の3群に分類した。転倒は、「本人の意思からではなく、地面またはより低い面に身体が倒れること」とするGibsonの定義を用いた。座位足開閉テストは、1)被験者はパイプ椅子上椅座位で両足(裸足)を自作した簡易測定ボード(縦30cm×横30cm×厚さ1.5cm)の中央に揃えてのせ、上肢は椅子座面の側端を把持させた。2)検者の合図で被験者は可能な限り速く両足を左右同時に開き、母趾でボード外の床をタッチし、すばやく元の位置に戻す。これを1回と数え、10秒間の施行回数を測定した。測定は、1回の練習後30秒間隔で2回実施し、最大値を施行回数として採用した。その際、急ぐあまりすり足にならないことを注意点とした。統計学的手法は、3群間の比較について一元配置分散分析を用い、その後の多重比較にはTukeyの方法を用いた。統計ソフトウェアはSPSS 15.0J for Windowsを使用し、有意水準はそれぞれ5%未満とした。<BR><BR>【説明と同意】本研究の参加は任意であり、研究への参加に同意しないことによる不利益は一切受けないことを説明した。また、研究に参加した後、いつでも同意を撤回することができ、そのことによる不利益も一切受けないことを説明した。本研究の目的と内容を十分説明し、書面で同意の得られた者を対象とした。<BR><BR>【結果】非転倒群は39名(男性4名、女性35名:平均年齢78.8±4.3歳)、1回転倒群は9名(男性1名、女性8名:平均年齢80.1±4.2歳)、複数回転倒群は18名(男性5名、女性13名:平均年齢78.9±3.9歳)であり、各群の平均年齢に有意差は認められなかった。座位足開閉テストの平均施行回数は、非転倒群15.2±2.1回、1回転倒群12.6±1.7回、複数回転倒群11.4±2.1回であり、1回転倒群および複数回転倒群が非転倒群よりも施行回数が有意に減少していた。1回転倒群と複数回転倒群の施行回数に有意差は認められなかった。<BR><BR>【考察】転倒群は非転倒群に比べて座位足開閉テスト施行回数が有意に減少しており、先行研究と同様の結果が得られた。また、有意差は認められなかったが転倒回数が多い群ほど施行回数が少ない傾向を示した。本テストは両足を左右同時にすばやく開閉する必要があり、下肢を中心とした敏捷性や筋力、協調性などが関与する。これらの因子は、加齢により低下することや転倒リスクを増大させる内的因子であることが報告されている。本テストはこのような身体要素を反映し、結果に影響を及ぼしたと考えられる。今後、転倒との関連性を更に追究し、妥当性のある評価とすることが課題となった。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】座位足開閉テストは椅子座位で簡便に実施できるため、高齢者など臨床現場で幅広く応用できることが本研究の意義であると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), E3O2198-E3O2198, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205571432192
  • NII論文ID
    130004582774
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.e3o2198.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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