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認知症性疾患患者のADL評価法に適しているのは?
Description
【はじめに、目的】 認知症性疾患に対する運動療法は認知機能を向上させるが,日常生活活動(以下ADL)などの生活機能が向上するかは明らかでない.認知症性疾患のADLは入浴や更衣などに強い拒否的反応を示すなどの疾患特異性が高く,兵庫脳研版日常生活活動評価表(以下HADLS)など,その障害特性を反映した特異的な尺度の使用が望まれる.しかし,医療機関・介護施設では,ADLの実施状況を機能的自立度評価法(以下FIM)やBarthel Index(以下BI)を用いて把握していることが多く,これらの評価表が認知症性疾患の障害特性を反映しているかは定かでない.認知症性疾患に対する運動療法が生活機能に与える影響を検討するためには,認知症性疾患のADLを反映した評価表が必要になる.そこで、従来の評価表により認知症性疾患のADLを適切に評価できているか検討することを目的とした.【方法】 対象は当施設利用中で認知症性疾患と診断された57名中,認知症・アルツハイマー型認知症と診断された34名のうち,明らかな運動麻痺やパーキンソン症状による運動機能障害を合併しておらず、本研究の参加に同意が得られた27名(平均年齢85.5±8.1歳,男性6名,女性21名)とした.すべて簿対象者に対して,HADLS,FIM,BI,臨床認知症評価法-日本版(Clinical Dementia Ratimg-Japanese:以下CDR-J)を測定した.HADLSとFIMに関しては,主たる介護者に質問調査を実施した上で,BIに関しては,訓練室での実施能力を観察した上で採点し,HADLSとFIM,BIの関係を検討した.また,CDR-Jの点数から,0.5・1を軽度群14名(84.1±7.1歳),2を中等度群4名(87.8±2.5歳),3を重度群9名(85.3±11.1歳)に分類し、3群間のHADLS,FIM,BIの得点を比較した.統計学的手法には,HADLSとFIM,BIの関係にはSpearmanの順位相関係数を,3群間の比較には一元配置分散分析,多重比較にBonferroni法を用い,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者の家族に本研究の意義,権利を紙面で説明し,同意を得た.【結果】 HADLSとFIMはr=-0.95(p<0.001)の強い負の相関を示した.また,HADlsとBIもr=-0.92(p<0.001)の強い負の相関を示した.HADLSの平均点は,軽度群47.2点,中等度群62.4点,重度群88.3点で,軽度群と中等度群,軽度群と重度群で有意差を認め,変動係数は0.48であった.FIMの平均点は軽度群96.4点,中等度群70.0点,重度群35.1点で,軽度群と中等度群,軽度群と重度群で有意差を認め,変動係数は0.37であった.BIの平均点は,軽度群76.1点,中等度群50点,重度群18.3点で,軽度群と重度群で有意差を認め,変動係数は0.67であった.【考察】 HADLSはアルツハイマー病の障害特性を反映した特異的なADL制限の評価表であるため,アルツハイマー症に適応がある.しかし,多くの認知症性疾患の罹患者は合併症や既往歴が多く,アルツハイマー病のみの罹患者は少ない.本研究においても27名中23名が合併症や既往歴で運動機能が制限されていた.そのため,臨床においては,異なる疾患におけるADLの実施状況を比較することができるFIM,BIを用いることが多い.認知症性疾患では入浴や更衣を拒否するといった特徴がみられ,介護負担を増強することがある.また,HADLSの各項目の得点は,アルツハイマー病の患者92名の主成分分析の結果に基づいて設定されており,単純な順序尺度ではない.しかし,両者ともにHADLSと非常に強い相関関係を持っていた.そのため,FIM・BIともに認知症性疾患のADLをとらえることができていると考えた.また,HADLS・FIMは軽度群と中等度群,重度群間に有意差を認めたが,BIは軽度群と重度群間にしか有意差を認めなかった.BIの各項目の点数は2~3段階で,細かい介助段階が設定されておらず,変動係数も大きいため,HADLSやFIMほど認知症性疾患の重症度を反映しなかったと考えた.つまり,認知症性疾患のADL評価にはHADLSやFIMの方がBIより適していると考えられ,特に運動機能に制限を有した認知症性疾患の罹患者に対してはFIMが有効と考えた.一方,本研究の限界は,中等度群が少なかった点が挙げられる.また,合併症や運動機能の制限の少ない対象者ならば,HADLSとFIMの相関係数も低値化する可能性が考えられる.【理学療法学研究としての意義】 認知症性疾患に対する運動療法の効果が認知機能や脳血流などで示されてきているが,行動評価や生活機能に与える影響を検討することが今後必要になる.本研究の結果から運動機能の制限が少ない認知症性疾患の罹患者に対する評価にはHADLS,運動機能の制限が多い場合にはFIMが適していると考えられた.本研究は認知症性疾患に対する運動療法の効果を検討するための基礎的研究としての意義があると考えられる.
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2011 (0), Eb0629-Eb0629, 2012
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205571638400
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- NII Article ID
- 130004693505
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed