急性期の閉塞性無気肺に対する呼吸理学療法

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  • 症例検討

抄録

【目的】当院では呼吸器合併症のうち無気肺を呈した症例に対しても呼吸理学療法(以下呼吸PT)が処方される。今回、術後無気肺と急性薬物中毒後の2症例の閉塞性無気肺を担当し、呼吸PTを経験する機会を得たのでここに報告する。<BR><BR>【方法】<症例1>患者;30代、男性。急性胆嚢炎の診断にて腹腔鏡下胆嚢摘出術の緊急手術を施行。手術翌日午前10時の胸部単純写真(以下CXP)にて左側無気肺を認めた。この時に呼吸PTの依頼があり夕方のCXPで改善がない時は気管支鏡検査(以下BF)をすることとなった。開始時の覚醒状態は良好で、咳嗽は創部痛による制限を認めるものの咳嗽力は自己喀痰可能な程度だった。<経過>1)酸素飽和度の変化(室内気);呼吸PT開始時91%。施行直後は5%上昇するもすぐに低下が生じたが、漸増的に95%を維持可能となる。2)CXP透過性の変化;呼吸PT開始前の午前10時のCXPでは左側無気肺であったが、同日午後4時には透過性の改善を認める。3)聴診の変化;初回の聴診で左側全領域での聴取不可であったが2時間後より左前胸部にラ音が出現する。4)痰の性状;呼吸PT開始時は黄色痰粘性高め。2日目午後は淡黄色となった。<症例2>患者;40代、女性。急性薬物中毒。入院後、人工呼吸器管理となる。覚醒状態良好となり気管支鏡で喀痰吸引後抜管を行ったが、翌日朝のCXPで左無気肺が見られ、2時間後に呼吸PT開始となる。呼吸PT開始時の覚醒状態は良好だった。<経過>1)酸素飽和度の変化;呼吸PT開始時98%(鼻カヌラ1L/分)で施行中の著明な変化なし。夕方より室内気となる。2)痰の性状;呼吸PT時の喀痰は40分間の間で15回。黄色痰で粘性高い。3)聴診の変化;開始時は左肺の呼吸音は聴取不可だったが呼吸PT施行後はわずかな呼吸音が聴取可能となった。4)BF;呼吸PT直後のBFでは左主気管支、左上葉・下葉支に白色粘稠痰の貯留を認めたがいずれも喀痰による閉塞は無かった。しかし「この検査は呼吸PT時と比較すると5倍辛かった」と訴えられた。5)CXP;午前7時のCXPでは透過性を失っていたが正午のCXPでは透過性の改善を認めた。<治療内容>1)排痰体位を聴診にて決定した。2)吸入療法;超音波ネブライザーを使用し呼吸PT中に施行。3)呼吸PTの実際;体位排痰は吸入と同時に開始。調節呼吸~胸郭拡張(深呼吸)~Huffing~調節呼吸とアクティブサイクル呼吸法(以下ACBT)を実施した。また呼吸PT中は強制呼出手技(FET)も合わせて施行した。4)自己排痰の指導;体位やACBTを用いた自己排痰方法を指導した。5)施行頻度;開始初日は可能な限り頻回とした。<BR><BR>【説明と同意】今回の報告は、当院の倫理委員会の承認を受けている。<BR><BR>【結果】1)治療体位は常に聴診しながら決定したことで、より生理的な喀痰排出を促すことが出来た。2)ネブライザーと同時に呼吸介助手技を実施したことで吸入が末梢まで到達し、痰の粘稠度を低下させ換気改善を促すことが出来た。3)1日に頻回の積極的な呼吸PTを行う事で早期に改善を得られた。4)ACBTを指導したことで、夜間帯を含め患者自身でも喀痰が効率的に可能となった。<BR><BR>【考察】急性期の無気肺の治療としてBFが施行されるが覚醒している人にとっては苦痛を伴う処置である。今回の症例は呼吸PT後無気肺の病態の改善を認めた。今回の2症例から自己排痰が可能な急性期の閉塞性無気肺に対する呼吸PTは苦痛を伴わない有効な治療手段であることが経験できた。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), D4P3172-D4P3172, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205571701504
  • NII論文ID
    130004582679
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.d4p3172.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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