スクイージング手技における手掌圧について

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抄録

【目的】呼吸リハビリテーション(以下、リハ)におけるスクイージング手技は、排痰補助手技として広く用いられている。しかし、実際の手技は、セラピストの経験や熟練の程度によるところが大きい。また患者様の呼吸パターンや胸郭コンプライアンス、胸壁の大きさや、陽圧管理の程度や有無、セラピストの癖やいわゆる「やり易さ」により、スクイージング手技は変容する。池田らは新生児用マンシェットと手掌感覚から、スクイージングの手掌圧を40~60mmHgと報告した。今回、生体へのスクイージング手技における手掌圧を実測し、その特性について分析した。<BR>【方法】背臥位での左上肺野の片手、左側臥位での右中肺野の両手(腹側/背側)、左側臥位での右下肺野の両手(腹側/背側)の3パターン5箇所のスクイージング時の手掌圧を測定した。圧測定はモルテン社製簡易式体圧測定器プレディアを用いた。5呼吸の最大圧を5mmHg単位で読み取り、比較検討した。また、施術者は圧をモニタリングせず、あくまで通常施行している程度の圧で手技をするように指示した。各施術者の臨床経験を聴取すると共に、NRSを用いて手技の自己評価と被術者評価も実施した。<BR>【説明と同意】経験年数1~16年の理学療法士に本研究の目的を説明し、同意を得た20名に協力を依頼した。なお被術者は呼吸器疾病のない理学療法士であり、術者同様に本研究を理解した1名を対象とした。<BR>【結果】手技自己評価NRSから明らかな傾向は見出せず、手技の被術者評価NRSでも手掌ピーク圧に順位性は認めなかったが、比較的上手に手技が実施出来ていた上位者は、手掌圧の変化が比較的緩徐であった。各結果において、男女や利き手による明らかな圧差は認めなかった。内部疾患系の経験年数が1年以下、2年目、3年目以上に分類すると、5箇所の平均ピーク圧(mmHg)は1年:68.4±13.3、2年:70.7±7.7、3年:73.0±14.8。統計学的有意差はないが、経験年数が高いほど各手技の手掌圧は高い傾向があった。中/下肺野の左右手掌圧差(mmHg)は1年:20.3±18.7/16.9±12.5、2年:17.4±16.0/28.0±24.0、3年:12.2±16.3/7.0±14.4で、経験年数が高いほど左右手掌圧の差は少ない傾向であった。<BR>【考察】スクイージング手技は、言うまでもなく、呼吸パターンに併せて実施する必要がある。いわゆる「上手下手」はピーク圧だけでなく、1.被術者の呼吸パターンにいかに追従出来るか、2.圧の変動性が緩徐か、3.手指掌圧に隔たりが少なくトータルコンタクトされているかが、重要なポイントであると思われた。手指掌圧の分布について、丸尾は呼吸リハ経験の少ないセラピストについて調査し、トータルコンタクトの必要性を述べている。本研究では、片手指だけでなく、左右手においても圧差を少なくよりトータルコンタクトした方が手技評価が高い傾向にあった。また個々の呼吸パターンに追従し、急な圧変化を抑えた手技を提供できれば、手掌ピーク圧が高くても負担を感じずに、より呼気流速や流量的にも有効なアプローチが出来る可能性が示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】スクイージングの手掌圧測定による手技の分析により、技術伝達や指導における指標となる可能性を考慮して、本研究を実施した。理学療法手技の質的評価は、臨床上効率かつ有効な診療サービス提供にも有用であると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), D4P1192-D4P1192, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205571901056
  • NII論文ID
    130004582644
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.d4p1192.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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