医療法第42条疾病予防健康増進施設における トレーニング効果についての検討

DOI
  • 加藤 芳司
    国際医学技術専門学校 理学療法学科 名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科
  • 石田 英二
    医療法人なるみ会 メディカルフィットネス NARUMI AIR STUDIO

書誌事項

タイトル別名
  • ─運動頻度から見える傾向報告─

説明

【はじめに、目的】 近年, 介護予防,健康増進分野への理学療法士の活動が広がりはじめている. 新しい活動の場の一つに「医療法第42条施設」(以下,42条施設)がある. この42条施設とは,「医療の管理下において安全かつ適切な運動指導を行うことにより,疾患回復または疾病予防を推進していく施設」と位置づけられている. 42条施設で求められる運動指導とは, 適切な運動処方を提供する事から始まる.加えて重要であるのが運動頻度と期間である.運動処方のガイドラインでは, 運動効果を得る為には, 週に3回から5回程度の運動頻度が有効であるといわれている. 今回,42条施設(通称メディカルフィットネス施設)において,週何回施設にて運動を行なったのかという運動頻度と身体機能測定結果との関係について検証を試みた.【方法】 施設会員である中高年男女47名を対象とした. 対象の身体特性は,平均年齢55(±10)歳, 身長158(±8)cm, BMI 25(±4)である. 初回時にメディカルチェックと機能的体力テスト(筋力・柔軟性・持久力), 腹囲測定, 体組成測定を実施し,その結果をもとに個別運動プログラムを作成・実施した. 対象者は運動頻度により,週に1回以下の施設利用群と2回利用群,3回以上利用群の3群に分け, 機能的体力テスト等12項目(血圧・体重・腹囲周径・筋量・脂肪率・握力・上肢筋力・下肢筋力・体幹筋力・上肢柔軟性・下肢柔軟性・VO2max)の初回時と6ヶ月経過後の変化率と運動頻度との関係を検証した. 運動プログラムは,ACSMのガイドラインをもとに,ボルグ指数12~13程度のレジスタンストレーニング(6種目×15回を1~2セット)と有酸素運動(VO2max50~60%程度を10~20分間×2回)を既往歴, 体力水準を考慮に入れ,運動強度の漸増を行いながら実施した. また可能な限りスタジオ集団プログラム(ダンス・ピラティス・バランスボールエクササイズ等, 約30~40分)への参加を促した. 統計分析は,男女間の各測定項目の変化率の差の検定にt検定を用いた. 3群の比較はクラスカル・ウォリスH検定を用い, 有意差が認められた項目についてマン・ホイットニーU検定を行った. 各群の多重比較をするためにボンフェローニの不等式による修正を行い, 正確有意確率が0.0167未満のものを有意差ありと判定した. 【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には運動全般のリスクに関する説明を行うとともに研究内容の説明を書面にて行い, インフォームドコンセントを得た.【結果】 測定12項目の変化率すべてにおいて男女間に有意差は認めなかった. マン・ホイットニーU検定の結果, 週1回以下群と週3回以上群比較では, VO2max, 腹囲周径, 下肢筋力に有意差を認めた. 週1回以下群と週2回群間および週2回群と週3回以上群間の比較では, 全ての項目で有意差を確認できなかった.【考察】 ACSMのガイドラインでは,健常成人の健康や体力増強には中等度から強度の有酸素運動を1日20~50分間,週に3~5回行うべきとしている. 今回,運動処方に沿ったプログラムを6ヶ月間継続した結果,先行研究が示すように週3回以上運動を行った群に有意差が見られた. 施設型運動の形態ではガイドラインに示された運動頻度3~5回程度の運動継続が望ましいが, 42 条施設の対象者は疾患を有する者が多く, 運動開始時の体力水準が健常者と比べ低く, 運動頻度, 負荷量の設定には慎重を期す. ちなみに虚弱高齢者の運動処方においては週1回程度の頻度でも効果が確認できたとの報告もある. 今回3群ともほぼすべての測定項目において実測値の増減を確認できていることから, 運動頻度における運動効果に加え, 運動期間, 運動強度による影響についても今後検証が必要と思われる.【理学療法学研究としての意義 】 介護予防・疾病予防および健康増進への取り組みに理学療法士が関わる機会が増えている中で, その対象となる人は疾病を有する人のみならず, 健康を維持させたいと考える人も対象となってきている. 運動療法を提供するにあたり, 適切な運動処方を行うことが今後さら重要視されることから, 運動効果の原理についての探求を押し進めていきたいと考えている.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011 (0), Eb1229-Eb1229, 2012

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205571998720
  • NII論文ID
    130004693525
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.eb1229.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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