脊椎手術患者における術前・術後の能力障害評価と動的バランス評価の関連性

書誌事項

タイトル別名
  • Oswestry Disability IndexとTimed Up and Go Test・Functional Reach Testの相関についての検討

説明

【目的】オスヴェストリー能力指数(Oswestry Disability Index:ODI)は、腰痛・下肢痛による日常生活活動(Actibities of Daily Living:ADL)障害を評価する自己記入式の疾患特異的評価法である。身体機能についての患者の自己報告は、記入と採点が比較的早く簡単にでき、実用的であるため臨床現場でよく使用されている。当院は、脊椎脊髄の変性疾患などに対して手術療法が多く施行されている施設で、術後の日常生活活動向上を考慮したリハビリテーションを提供するために、術前と術後定期的に機能障害の他にODIを用いた能力障害の評価を行っている。また、ODIは長年にわたり世界的に広く使用されてきた評価法で、その妥当性の検証に関しては数多くの報告があり、JOAなどの腰痛疾患評価法や疼痛のスケールであるVisual Analogue Scale Index、QOL評価法であるSF-36などと相関関係があるとされている。今回、我々はODIが動的バランスの指標となるTimed Up and Go Test(TUG)・Functional Reach Test(FRT)と関連性があるか検討したのでここに報告する。<BR>【方法】対象は、2009年12月~2010年6月までに胸腰椎の手術目的で当院へ入院した者で、退院後に定期的な来院が可能だった者19名とした。除外基準は、術前・術後に立位・歩行が困難な者、下肢に著明な整形外科的疾患を有している者、神経学的疾患を有している者、テストの説明を理解できない者とした。対象者の内訳は、男性12例、女性7例、平均年齢(標準偏差)は58.5(16.0)歳であった。疾患の内訳は、腰部脊柱管狭窄症8例、腰椎椎間板ヘルニア4例、腰椎変性すべり症3例、脊椎圧迫骨折2例、腰椎分離症1例、腰椎変性側弯症1例であった。評価項目は、術前(Pre)と術後3カ月(3M)のODI、Pre・術後1週(1W)・3MのTUG・FRTとした。なお、ODIは、修正版ODIを使用し対象者には質問紙に自己記入してもらった。データ解析は、ODIのPre・3Mの差を対応のあるt検定で、TUG、FRTそれぞれのPre・1W・3Mの変化を一元配置分散分析・Tukeyの多重比較検定で、評価間のPreから3Mにおける改善率に関連性があるかをPearsonの相関係数を用いて検討した。なお、すべての検定で有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】全対象者に対して、事前に本研究の目的、研究への参加の任意性と同意撤回の自由について説明を行い、本研究協力への同意を得た。<BR>【結果】ODIの平均(標準偏差)はPre:30.2(11.3)%、3M:6.6(6.9)%、TUGの平均(標準偏差)はPre:11.0(3.2)秒、1W:11.1(3.5)秒、3M:8.8(1.4)秒、FRTの平均(標準偏差)はPre:18.7(6.5)cm、1W:20.3(6.1)cm、3M:24.5(3.5)cmであった。ODIのPre・3M間、TUGのPre・3M間、1W・3M間、FRTのPre・3M間で有意な改善を認めた。また、Preから3Mの改善率において、ODI改善率とTUG改善率に相関を認めた(r=0.46)がODI改善率とFRT改善率には相関を認めなかった。<BR>【考察】本研究の結果より、脊椎術後患者は3カ月経過時点で、ODI、TUG、FRTともに向上していた。なお、その中でもODIとTUGの改善率には関連性があることが示唆された。しかし、FRTとは相関を示さなかった。TUGは支持基底面が移動する状態での随意運動であるのに比べ、FRTは支持基底面を固定した状態での随意運動であることが原因ではないかと考えられる。ADLは、支持基底面が移動する状態でのバランス能力を必要とすることが多く、ODIにもその内容が多く含まれている。TUGは高齢者においてBarthel IndexなどのADL評価法とも有意な相関関係をもつとの報告もあり、脊椎術後患者にもADLの指標となるODIとの相関関係を示したものと思われる。この結果から、脊椎術後のリハビリテーションを施行するにあたり、TUGに必要な機能向上を考慮した運動療法・動作指導などがADL向上に繋がることが考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】脊椎術後患者の日常生活活動の指標であるODIと動的バランス能力の指標であるTUGの経時的な改善に関連が示唆されたことにより、脊椎術後患者に対するリハビリテーションの方向性として、立ち上がり、歩行、方向転換、立ち座りの各動作を円滑に実行できるバランス能力を獲得することの重要性が述べられる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), CbPI2212-CbPI2212, 2011

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205572147328
  • NII論文ID
    130005017189
  • DOI
    10.14900/cjpt.2010.0.cbpi2212.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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