ストレッチポールエクササイズが抗重力肢位での肩甲骨・胸腰椎アライメントに与える影響

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【目的】<BR>ストレッチポール(以下SP)の効果として、 過去の報告から杉野らは立位矢状面脊椎のリアライメント効果や秋山らは胸郭拡張機能改善など姿勢変化に関する報告が散見している。<BR> 臨床上、round shoulder posture(以下RSP)を呈しているケースを多く観察する。この不良姿勢は、頭部前方姿勢や上腕骨頭の前方偏位を導き、さまざまな疼痛や症状を誘発する可能性がある。<BR> SPを用いて肩甲骨のアライメント変化について、山口らが背臥位においてSPex後に床と肩峰間距離が変化したと報告しているものの、日常生活動作の主な場面である座位や立位などの抗重力肢位でのSPエクササイズ(以下SPex)前後における肩甲骨のアライメント変化に関係する報告はみられない。そこで、我々はSPex前後で、抗重力肢位での肩甲骨・胸腰椎のリアライメントに与える影響を調査した。<BR>【方法】<BR>対象は現在肩に痛みのない健常成人、11名(男性7名・女性4名、平均年齢28.6±6歳)とした。 測定時肩に疼痛を有するもの及び、肩は除外した。<BR>方法はSPex前後に安静立位姿勢で肩甲骨と胸腰椎アライメントを計測した。<BR>SP課題には、日本コアコンディショニング協会が推奨しているベーシックセブンを使用した。<BR> 肩甲骨アライメントの計測は、矢状面からの評価として、Charlesらの方法に準じForward shoulder angle(以下FSA)、前額面からの評価として、Jackらの方法に準じTotal scapular distance(以下TSD)の計測を行なった。<BR> FSAの測定にはデジタルカメラを使用し、C7と肩峰を結んだ線と床に対し下ろした垂線との成す角をFSAとした。TSDの計測にはメジャーを使用し、T3棘突起と肩峰下角を結ぶ距離をTSDとした。また肩峰下角から肩甲骨内側縁を結ぶ距離を肩甲骨長とし、正規化するために肩甲骨長とTSDで除した値を肩甲骨脊柱間距離とした。<BR> 胸腰椎アライメントの計測には、脊柱カーブを曲線定規:(Flexicurve ruler)を用いて評価し、Lindseyらの方法に準じてラウンドマークはC7棘突起とL5-S1棘突起間とした。胸腰椎カーブを紙にトレースし、C7からL5-S1に直線を引き交わる点を交点とした。C7から交点までthoracic length(以下TL)とし、胸椎カーブの頂点からTLに下ろした垂線をthoracic width(以下TW)とした。TWをTLで除した値に100をかけたものを胸椎アライメントKyphosis index(以下KI)を求めた。また、肩甲骨アライメント及び胸腰椎アライメントの計測は、熟達した同一検者(検者内信頼性は検証済み)が行った。<BR>各項目3回行いその平均値を採用した。<BR>統計処理として、SPex前後で各項目を比較しt検定をおこなった。(p<0.05)<BR>【説明と同意】<BR>本研究への参加について説明書および同意書を作成し、研究の目的、進行および結果の取り扱いなど十分な説明を行った後、研究参加の意思確認を行った上で同意書へ署名を得た。<BR>【結果】<BR>SPex前後でFSAは52.71°から50.66°、肩甲骨脊柱間距離は1.51から1.49と有意に減少した。胸腰椎アライメントKIには有意差はみられなかった。<BR><BR>【考察】<BR>本研究の結果、SPexはFSA、肩甲骨脊柱間距離を減少させた。このことから、肩峰が前方から後方へ偏位し、肩甲骨が内転方向へリアライメントされたことが示唆された。<BR>山口らは同様の結果を背臥位にて報告しており、我々は抗重力肢位でもリアライメントされることを証明した。しかし、肩甲骨はリアライメントされたことが示唆されたが、胸椎アライメントには、有意差は見られなかった。原因として、今回の対象者が健常者であることで、SPex前の段階で胸椎後弯が強かったものが減少した者、胸椎後彎が弱かったものが増加した者などのさまざまな脊柱アライメントが混在していたことが考えられる。 <BR> 今後の課題は、対象の脊柱アライメントを事前評価しグループ分けをしてから解析するこが必要であると考える。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>現代社会における生活様式の変貌から、姿勢不良を呈している人々が多くなっており、その姿勢を修正することは、障害予防の観点からも重要である。今回の結果は、臨床上有益なものであると考える。

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