小脳性運動失調症に対する弾性緊縛帯の効果
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【はじめに、目的】 小脳性運動失調症の改善において、弾性緊縛帯による効果の報告が多くなされている。しかし、症状の悪化をきたしたという報告もあり、具体的な使用方法も不明瞭である。今回、小脳性運動失調症を呈した患者に対して弾性緊縛帯を使用し、静的バランスに改善があるのか、また、弾性緊縛帯装着部位の違いにより改善の違いがあるのかを検討した。【方法】 対象は、小脳性運動失調症を呈し当院に入院した患者10名(男性10名・平均年齢は54.9±20.6歳)。理学療法開始の際に、弾性緊縛帯非装着時と両大腿部~両下腿部装着時、弾性緊縛帯非装着時と両股関節部装着時における、重心動揺を比較した。重心動揺計測には、Active Balancer EAB100(酒井医療社製)を使用し、サンプリング周波数は20Hzとした。閉眼立位や閉脚立位は困難な症例が多かったため、計測は開眼立位とし歩隔は10cmで行った。計測時間は30秒間、計測間隔は5分間とした。計測項目のうち、総軌跡長、外周面積、矩形面積、矩形面積のX軸Y軸の距離を比較検討した。統計学的処理にはWilcoxonの符号付順位和検定を用い、有意水準は1%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には本研究についての説明を行い、同意を得て実施した。【結果】 各計測項目の平均値を、弾性緊縛帯非装着時、両大腿部~両下腿部装着時、両股関節部装着時の順に以下に示す。総軌跡長(1381.5mm±926.7・1151.5±774.5mm・1134.2±788.3mm)外周面積(1064.1±1271.5mm²・692.9±778.1mm²・578.5±530.6mm²)矩形面積(3218.6±3800.9mm²・1806.4±2158.7mm²・1566.4±1445.8mm²)X軸距離(51.7±32.7mm・39.0±23.5mm・33.9±14.4mm)Y軸距離(46.4±28.0mm・37.2±21.2mm・39.5±22.8mm)弾性緊縛帯非装着と両大腿部~両下腿部装着間の比較では、両大腿部~両下腿部装着において全項目で改善がみられたが、有意差がみられたのはX軸距離のみであった。弾性緊縛帯非装着と両股関節部装着間の比較では、両股関節部装着において全項目で改善がみられ、Y軸距離以外は全て有意差がみられた。【考察】 弾性緊縛帯の使用により、静的バランスが改善すること、弾性緊縛帯の装着部位は、両股関節部で改善効果が高いことが分かった。弾性緊縛帯の作用機序としては、装着部筋紡錘からの求心性入力の増加による、筋緊張低下の改善といわれている。弾性緊縛帯非装着と両股関節部装着間で、矩形面積は有意差がみられているがY軸距離には有意差がみられないことから、左右への側方動揺を示すX軸距離の改善が、矩形面積の改善に関与していると考えられ、これは、弾性緊縛帯を股関節部に装着することで、股関節周囲筋の筋緊張低下が改善し、側方への動揺が小さくなり静的バランスが改善したことを示唆するものと考える。【理学療法学研究としての意義】 小脳性運動失調症患者は、静止立位でさえ困難な症例が多い。そのため理学療法において、支持基底面内で重心を移動する、支持基底面を不安定にするなど、難易度の高いプログラムを設定するために、弾性緊縛帯を使用することは有効であると考える。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2012 (0), 48100797-48100797, 2013
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205572307712
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- NII Article ID
- 130004585226
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed