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油圧制動付き短下肢装具を使用し歩容の改善を認めた脳卒中片麻痺患者の一症例
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- 吉田 裕志
- 社会医療法人財団 白十字会 佐世保中央病院
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Description
【はじめに】 従来の足関節固定式短下肢装具は、フットロッカーにおける足関節底屈筋の遠心性収縮の補助とフォアフットロッカーの終わりから遊脚期にかけてトゥークリアランスを保つ事が目的と考えられてきた。しかし、正常歩行ではPerryが提唱する立脚期のロッカーファンクションがあり、それにより体全体が前方に回転していくとされている。 今回、ラクナ梗塞を発症し右片麻痺を呈した症例に対し、治療時に油圧制動付き短下肢装具(以下ゲイトソリューションデザイン)を使用した事で、ロッカーファンクションがみられ、歩容の改善を認めた為、ここに報告する。【説明と同意】 症例には,本発表の主旨を説明した上で同意を得た。【症例紹介】 症例は、84歳の女性。平成24年8月中旬に右上下肢の脱力感を認め、歩行不可能であった為、家族の付き添いの元、当院の救急外来を受診される。頭部MRI(diffusion)にて左放線冠に高信号領域を認めた為、ラクナ梗塞の診断にて即日入院となった。【理学療法初期評価】 1病日目より、ベッドサイドにて理学療法を開始した。高次脳機能障害は特に認められず、Brunnstrom Recovery Stage(以下Br.stage) 下肢IV、Functional Independence Measure(以下FIM)は、71点であった。歩行は独歩にて軽介助レベルであった。【初期歩行】 2病日目より、リハビリ室にて理学療法を行った。イニシャルコンタクト~ローディングレスポンスにかけて、ヒールロッカーが見られず足底接地であった。また、ミッドスタンス~ターミナルスタンスにかけては、下腿の前傾あるも不十分であった。さらに遊脚期においてはトゥークリアランスの低下が認められた。【治療経過】 発症後1週目には、足関節の背屈・底屈の求心性・遠心性収縮は、わずかしか認められず油圧2、初期角度0°にて歩行練習を開始した。2週目には、足関節の背屈・底屈の求心性・遠心性収縮が認められるようになってきたが、油圧1ではフットスラップになっていた為、油圧2にて歩行練習を継続した。3週目には、足関節の背屈・底屈が求心性・遠心性収縮が認められるようになってきた為、油圧1にて歩行練習を行う。4週目には、足関節の背屈・底屈の求心性・遠心性の収縮が可能になった為、装具を使用せずに平地・坂道歩行、階段昇降も行えるようになった。【結果】 症例は、Br.stage下肢Vとなり、FIMは124点となった。歩行は、独歩にて自立となった。イニシャルコンタクト~ローディングレスポンスにかけてヒールロッカーが認められるようになり、踵接地となった。また、ミッドスタンス~ターミナルスタンスにかけては、下腿の前傾が認められるようになった。さらに遊脚期のトゥークリアランスも向上した。その為、30病日後に自宅退院となった。【考察】 ゲイトソリューションデザインは、イニシャルコンタクト~ローディングレスポンスにかけて、油圧ダンパーの制動により、踵接地後徐々に足関節の底屈を調整する。その動きが、正常に近い前脛骨筋の遠心性収縮を促通し、徐々に足関節底屈を行えるようになった事で、ヒールロッカーが認められるようになったと考える。また従来の足関節固定式短下肢装具では、ミッドスタンス~ターミナルスタンスにかけて、下腿の前傾が急速に起こっていたが、ゲイトソリューションデザインは背屈の角度がフリーになっている為、下腿を徐々に前傾させる事ができる。その動きが、正常に近い下腿三頭筋の遠心性収縮を促通し、徐々に下腿の前傾を行えるようになった事で、フットロッカーが認められるようになったと考える。さらに、ミッドスタンス~ターミナルスタンスにかけて、下腿の前傾により下腿三頭筋の腱が引き伸ばされることで弾性エネルギーを蓄え、下腿三頭筋が収縮しやすい環境になった事、また下腿三頭筋の求心性収縮が促通された事で、強く蹴り出す事ができ、さらに遊脚期での前脛骨筋の求心性収縮が促通された事で、トゥークリアランスを高く保つことができるようになったと考える。【まとめ】 今回、急性期の脳卒中片麻痺患者に対し、早期よりゲイトソリューションデザインを使用し歩行練習を行った。治療時にゲイトソリューションデザインを使用した事で、正常に近い筋収縮を促し歩行練習が行えたと考える。その結果、ロッカーファンクションが認められるようになり、歩容の改善に繋がったと考える。今後も早期より油圧制動付き短下肢・長下肢装具を使用し運動療法を行う事で、正常に近い筋収縮を促し、歩行能力の向上・歩容の改善を目指し日々の臨床業務を行っていきたいと思う。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2012 (0), 48100376-48100376, 2013
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Keywords
Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205572474240
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- NII Article ID
- 130004584901
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed