健常男性における吸気粘性抵抗負荷換気応答の解析

DOI

抄録

【はじめに、目的】 呼吸器疾患の主症状の一つに呼吸困難感がある。臨床では呼吸困難感の軽減のための介入方法として、呼吸訓練に関する報告がされており、呼吸への介入は、呼吸困難軽減に重要な役割を果たしていると考えられる。しかしながら、呼吸介入と呼吸困難感軽減を検証する基礎実験に関する報告は少ない。本研究では、粘性抵抗負荷試験を使用して、段階的な吸気抵抗負荷呼吸中の呼吸パターン、呼吸困難の変化等の換気応答の特徴を、無介入時と呼吸介入時で比較・解析し、呼吸困難軽減に関わる特徴を明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は健常男性10名であった。呼吸困難感の惹起には吸気粘性抵抗負荷装置を用いた。安静換気後に4段階(0、10、20、30cm)の吸気粘性抵抗をそれぞれ順不同に負荷し、換気パターン、呼吸困難(Borg scale)、および負荷前後における最大吸気量(IC)を測定した。抵抗負荷は、呼吸法を全く指導しないで行った(無介入)実験と、ある程度の日数を空けて、呼吸方法について「できるだけ息を長く、深くはくように」という介入指導での実験を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には、本研究の目的および内容を十分に説明し、参加の同意を得た。【結果】 吸気粘性抵抗負荷に対し、換気量はほぼ一定のまま、呼吸パターンに有意な応答が認められた(吸気速度(VT/TI)の低下(0cm:0.39±0.12l/sec,10cm:0.29±0.09l/sec,20cm:0.22±0.05l/sec,30cm:0.19±0.06l/sec p<0.05)、duty ratio(TI/TTOT)の増加(0cm:0.35±0.06,10cm:0.45±0.06,20cm:0.50±0.05,30cm:0.54±0.04 p<0.05)。呼吸困難は呼吸法指導介入により、非指導時に比し、低下傾向を示した。TI/TTOTとBorgの関係は非介入時と同じ直線上にあったが、 VT/TIとBorgの関係は右方に偏移していた。【考察】 呼吸パターンと呼吸困難は一定の関係を有しており、呼気時間を長くとらせてゆっくり息をはかせるなど、より具体的な呼吸パターンの面からの指導アプローチが有効である可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】 本研究は、呼吸困難軽減に関与する呼吸パターンの換気応答を明らかにしようとしたものである。これらは生理学の基礎的な意味にとどまらず、呼吸理学療法などの治療的介入の臨床的な意義を明らかにしてくれるのと期待したい。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011 (0), Ab0676-Ab0676, 2012

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205572644096
  • NII論文ID
    130004692444
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.ab0676.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ