当院回復期リハビリテーション病棟におけるチーム医療の意識調査
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【はじめに、目的】 近年,医療現場の医療マネジメントにおける重要な課題のひとつとして,「チーム医療」が挙げられる.それは,効率的な医療提供を可能としうる協働システムとして期待される反面,その有効性を十分に引き出すことは容易ではなく,医療機関管理者ならびに医療スタッフにとってその効率的遂行は悩みの種となっている.細田(2003年)によれば,チーム医療の理想型としては,専門性志向・患者志向・職種構成志向・協働志向の4つの志向全てが最大限にある状態とされている.しかし,医療機関の機能やミッションによって,その志向性は対立関係にあるため,各チームの特性により取り組みが異なることになる.その志向性の対立関係とは,患者に対しての志向に「専門性志向」と「患者志向」で,チーム全般に対しての志向に「職種構成志向」と「協働志向」であると分類できる.また,この志向性の対立によりチームを構成するスタッフ間で,臨床現場での葛藤(以下 医療の倫理的ジレンマ)が生じると考えられる.医療の倫理的ジレンマとは,ある医療行為の倫理的妥当性あるいは倫理的根拠を論じる際,拠り所とする倫理原則によって,様々な結論が導かれ対立関係となることを指す.これが,チームの協働システムを阻害する一因になる.したがって,当院回復期リハビリテーション病棟のチーム医療の概況を調査することで,チーム構築の志向性と倫理的ジレンマの経験を明らかにしていきたい.【方法】 対象は,当院回復期リハビリテーション病棟に関わるスタッフ72名中,56名(回収率77%)とする.男女比は男性40%女性60%,平均年齢32.2±12.5歳,職種割合は医師5%,看護師25%,理学療法士25%,作業療法士18%,言語聴覚士7%,介護士9%,ソーシャルワーカー12%,経験年数9.7±9.6年目となっている.方法は,アンケートによる意識調査を実施した.アンケートの内容は一般情報と1)チーム医療に対する満足度,2)チーム医療の志向性として患者対する志向性とチームに対する志向性,3)対象とする7職種間での倫理的ジレンマの経験となっている.アンケートは説明の基,全て手渡しで行い,1人で記入することを条件に任意の場所で行ってもらった.アンケートは無記名の自己記入質問用紙を用い,個人が特定されないようにした.統計解析はSPSS15.0J for Windowsを使用した.【倫理的配慮、説明と同意】 対象となるスタッフ及び管理者に対して依頼書を配り説明を開催した.アンケート実施の同意については,アンケートに記入回収を行うことで同意とし,以下の留意点を掲示した.対象者の個人情報や収集したデータが外部に漏れることがないように,全て数値によって分類・分析し,個人が特定されないようにしている.加えて,データの開示によって不利益がこうむることがないことを保障する.各種研究発表の機会に使用する旨に対して承諾を受けている.【結果】 結果は,1)チーム医療に対する満足度は,満足28%で不満足59%,未回答13%となり,2)チーム医療において患者とチームに対する志向性は,患者に対する志向は専門性志向24%・患者志向76%,チームに対する志向は職種構成志向28%・協働志向69%であった.3)7職種間での倫理的ジレンマの経験において有した職種数は,医師3.5種,看護師4.6種,理学療法士5.5種,作業療法士4.2種,言語聴覚士6.8種,介護士4.0種,ソーシャルワーカー4.6種となった.さらに,クロス集計によりチーム医療に対する満足度と患者に対する志向性へのカイ二乗検定の結果,有意差がみられなかった.また,チーム医療に対する満足度とチームに対する志向性へのカイ二乗検定の結果も,有意差はなかった.【考察】 チーム医療は,4つの志向全てが最大限にある状態が理想とされており,それぞれがどの立場であるかを理解しておくことが前提条件となっている.このため,志向性に偏りがあることは,必ずしもチームの意見が一致している傾向にはないことがわかる.むしろ,同じ志向であるため暗黙の了承が多くなり,詳細な理解を深めることが難しくなることも考えられる.また,同じ志向性同士でも対立が起こりうる可能性が示唆される.これらが,チームの成長を妨げる状態に陥ると考察する.統計結果から,チームの志向性はあくまでチーム構成の基盤となる部分であり,スタッフの満足度にはその他の要因が関与していることを示唆している.【理学療法学研究としての意義】 チーム医療の効率的な運営は,患者に対する包括的な介入は基より各職種の業務効率にも直結する事項であり,その可能性を最大限に活かす一助になると考えている.
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2011 (0), Ge0081-Ge0081, 2012
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Keywords
Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205572771968
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- NII Article ID
- 130004693758
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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