腰椎後弯症に対するPSO(pedicle subtraction osteotomy)の周術期リハビリテーションについての検討

DOI
  • 宮原 小百合
    帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
  • 河野 めぐみ
    帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
  • 木本 龍
    帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
  • 篠原 竜也
    帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
  • 渡邉 昌
    帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
  • 常住 美佐子
    帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
  • 宗村 浩美
    帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
  • 菅原 成元
    帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
  • 輪座 聡
    帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
  • 遠藤 洋毅
    帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
  • 大隅 雄一郎
    帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
  • 柴田 大輔
    帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
  • 鈴木 洋平
    帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
  • 菅谷 睦
    帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション科
  • 豊根 知明
    帝京大学ちば総合医療センター 整形外科

抄録

【はじめに、目的】腰椎後弯症は、脊柱矢状面のアライメント異常によって、強い腰痛、間欠性跛行様の歩行障害、立位保持困難、呼吸障害、逆流性食道炎、外見上の問題などをきたす疾患である。従来保存療法が主体であったが、近年、保存療法では症状が改善しない場合に変形矯正固定手術が選択され、当施設ではその術式としてPSO(pedicle subtraction osteotomy)を施行している。椎体を楔状に短縮骨切りすることで30°程度の前弯矯正が期待でき、侵襲の大きさや合併症が少なくないが、手術手技の向上や高齢化に伴って症例数が増加している。一方、腰椎後弯症の周術期リハビリテーションについての先行研究はない。今回、PSOにおける周術期の経過を調査し、リハビリテーションアプローチについて考察したので報告する。【方法】2008年11月から2012年10月に、腰椎後弯症に対してPSOを施行された28症例を対象とした。診療録から、立位X線像(側面)にて腰椎前弯角(第12胸椎椎体下縁と仙椎上縁のなす角)、SVA(sagittal vertical axis:第7頸椎の垂線から仙骨後壁上縁までの距離)を、臨床所見として術前および退院時の歩行時腰痛(VAS100mm法)、膝伸展筋力(microFETにて測定、左右の平均)、6分間歩行試験(6MD)を、リハビリテーション経過として離床開始および病棟での歩行器歩行自立までの期間を調査した。病棟での手放しまたは杖歩行自立を達成できた症例を達成群、達成できなかった症例を未達成群として比較検討した。統計的検討にはχ二乗検定、対応のないT検定、対応のあるT検定を用いた(有意水準5%)。【倫理的配慮、説明と同意】対象者に本研究の目的、発表時の匿名化について口頭にて説明し、同意を得た。【結果】全例、術前は手放しまたは杖歩行で自宅内ADLは自立しており、自宅退院していた。達成群は16名(男性3名女性13名、64.4±9.4歳)、非達成群は12名(男性3名女性9名、68.9±6.4歳)であり、年齢、性別に有意差はなかった。腰椎前弯角は達成群で術前5.1±14.6→術後38.0±10.3°、非達成群で2.7±16.1→37.7±10.4°、SVAは達成群で9.8±7.4→5.9±4.3cm、非達成群で11.2±7.6→8.4±6.1cmであった。二群間の比較では術前、術後の腰椎前弯角、SVAにはいずれも有意差はなかった。術前後の比較では非達成群のSVA以外は有意な改善を認めた。歩行時腰痛は達成群で術前平均52.6mm→退院時平均48.0mm、非達成群で51.8→1.0mmであり、また膝伸展筋力は達成群で1.19→0.92Nm/Kg、非達成群で0.79→0.78Nm/Kgであり、術前の筋力は非達成群で低下していた。6MDは達成群で289.6→334.2m、非達成群191.2→111.0mであり、術前、退院時とも歩行能力は非達成群で低下していた。離床開始までの期間は達成群4.4±1.8日、非達成群5.8±1.4日、歩行器自立までの期間はそれぞれ13.0±5.2、25.3±13.6日、術後入院期間はそれぞれ34.0±9.9、49.8±25.6日であり、いずれも非達成群で有意に長かった。【考察】両群とも手術によって腰椎前弯角度は平均30°以上と大きな改善を認めたが、7cm以内が理想とされるSVAは非達成群では統計的な改善を認めなかった。一方、術前の下肢筋力、歩行能力は非達成群で低下がみられ、術後も歩行能力改善が遅延していた。よって、非達成群のような歩行能力改善が遅延し入院が長期化する症例は、術前から筋力低下によって歩行能力が低下していることが推察され、そのため後弯が改善し痛みが軽減しても歩行能力改善には至らなかったと考えられる。また、膝伸展筋力が低下していることから体幹や股関節伸展筋力も低下していることが予測され、前弯角の改善がSVAの改善に結びつきにくい可能性が示唆された。歩行練習のみならず適切な筋力強化を中心としたアプローチや、高齢要因も加味した活動設定が重要と考える。本研究の限界として、術後の臨床所見は退院時に測定しているため評価時期にばらつきがあり、特に達成群では手術による侵襲そのもの影響が残存している可能性があることや、長期的な結果をふまえて検討を加える必要性があることが挙げられる。今回の研究を、予後予測についての評価方法の確立や重症度に応じたアプローチ方法の検討につなげていきたい。【理学療法研究としての意義】腰椎後弯症に対するPSOにおける周術期の臨床経過と理学療法アプローチの重要点を提示した。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48100560-48100560, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205572794112
  • NII論文ID
    130004585045
  • DOI
    10.14900/cjpt.2012.0.48100560.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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