青年海外協力隊としての活動報告

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抄録

【はじめに、目的】 毎年、青年海外協力隊(以下JOCV)に参加し海外で活動している理学療法士(以下PT)は数十人に及ぶが、実際の活動報告などの文献は少なく、情報が不足していると感じる。そこで今回、JOCVに興味を持っている方に対し、参加の手がかりになることを目的として、以下に活動内容を報告する。【方法】 2010年1月5日から2012年1月4日までの約2年間、中国の江蘇省無錫市錫山区錫北人民医院に理学療法士として配属し、現地スタッフと共に働きながら、日本のリハビリテーション(以下リハ)概念を紹介し、評価や治療方法について指導した。また赴任当初、リハ科が開設して2年しか経過していなかったことから、システムや連携の向上、及びリハの普及や浸透に努めた。【倫理的配慮、説明と同意】 今回の報告に当たり、所属の国際協力機構(JICA)及び配属先病院に対し、説明し同意を得ている。【結果】 先述した活動に対し、具体的内容を述べる。まず赴任当初は、スタッフと筆談を交えながら会話するといった形で交流し、人間関係を築くようにした。同時に中国のリハ事情や病院の状況などを把握することを中心に行った。その後2年間の活動計画表を作成・報告し、活動内容を共有した。またスタッフと共に共通の患者を評価・治療した後、治療方針について意見交換を行った。ここでは日本のリハ概念や治療方法を展開し、知る・理解してもらうようにした。赴任して2-3カ月経過した頃から、スタッフと同様に担当制で患者を治療しながら、カンファレンスや講義を通じて治療方法などを伝達した。特にPT記録に関して、用紙は治療前後のバイタルだけを記録するといった書式を使用しており、評価の不足が挙げられた。これに対し、先ず自分がノートを利用して毎日患者の治療内容や評価を記録し、患者の状況や治療経過を把握することを認識させた。また講義も実施し記録の意義や方法を学習した。次にスタッフにも同様にしてノートに記録し、自分が内容をチェック・指導しながら記録を習慣づけるようにした。その後、院長やスタッフと相談しながら記録用紙の改定を検討し、バイタルだけでなく他の評価も記載できる書式に変更した。変更後も記録内容を時々チェックし、評価の資質向上を図った。開始当初スタッフの反応として、記録の利点は理解しているものの、ノートに書くのが手間という理由で定着しなかった。しかし2年という長期に渡り、段階的に実施していくことで、徐々にシステムが定着していった。次にリハの普及に関して、市内の急性期病院でリハを実施している所は少なく、赴任当時脳卒中を発症して3カ月から1年を経過して開始していた。しかし、開始が遅いことから廃用が進行し、機能回復が乏しく十分な治療効果が出せないでいた。そこで早期リハ開始の重要性を訴え、院長を中心に市内の急性期病院に対して、早期にリハ開始ができるよう働きかけた。赴任して1年経過した頃より、発症から約20日前後で当院に転院し、比較的早期から開始できるようになり、治療効果も向上した。【考察】 上記活動を通して意見を述べる。JOCVに参加し、現地の人と共に生活しながら仕事をする中で、自分自身の物事に対する視点や意識が変化し、視野が広がった。リハに関しても中国の事情を把握した上で、自分の意見や方法を訴えるばかりでなく、相手の意見を聞きつつ、一緒に考えながら治療方針を提案するように心がけた。相互理解することによって、相手にも自分の意見を受け入れてもらいやすく、自分も柔軟に対応し知識の幅を広げることができた。発展途上国におけるリハ事情や形態は様々であり、日本での方法が他国で同じように適応するとは限らない。しかし、知識や技術向上させ治療効果を出したい、リハを発展させたいという意識は国内外を問わず共通していると考える。よって現地のスタッフと協力し、要求を聞き意見交換を行いながら、共同してリハ向上に努めることが重要である。【理学療法学研究としての意義】 最後に、日本のリハビリを学びたいという中国人治療師は多いが、留学などの機会はかなり少ない。今後の理学療法士の活動展開として、国内を問わず、海外の治療師を対象とした教育や技術協力といった形でJOCVに参加する、また帰国した後もこの経験や語学力を生かし、国際交流の懸け橋として展開するなどの場が考えられる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011 (0), Gc1041-Gc1041, 2012

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205572863488
  • NII論文ID
    130004693726
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.gc1041.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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