二分脊椎症の活動予想について

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  • Sharrardの分類と当院との比較

抄録

【目的】<BR>二分脊椎症にとって実用歩行の獲得は、健常者と共に社会生活を営むうえで必要かつ重要であると考えている。<BR>二分脊椎の活動予想にSharrardの分類が一般的に多く用いられているが、当院では昭和48年から700例以上の二分脊椎症症例に対し独自の理学療法、装具療法を施行し、Sharrardの分類に挙げられる活動予想以上の移動能力の獲得を可能としてきた。今回、成人期以降の二分脊椎症症例を対象に獲得移動能力に関してアンケート調査を行い、Sharrardの分類と当院で成人期の活動予想を比較した。また実用歩行の限界とされている残存運動最下髄節L3レベルを対象にSharrardの分類以上の移動能力である屋外での実用歩行を獲得した群(以下:獲得群)と獲得困難であった群(以下:非獲得群)で、訓練頻度、訓練継続期間、訓練開始年齢をそれぞれ比較し関連性を検証したので報告する。<BR>【方法】<BR>成人期を18歳以上と設定し、昭和48年以降に来院した成人の二分脊椎症症例403名にアンケート調査を行った。内訳は男性180名、女性223名。18歳~42歳(平均年齢29.7歳)であった。アンケートは年代別(幼児期、思春期、成人期)に各時期で家庭内、学校内(社内)、屋外で通常行っている移動方法とその際に使用する補装具、クラッチ類を記入する形式を用いた。移動能力を分類する為にHofferの歩行能力評価分類を使用し、独歩群Community Ambulator(以下:CA)、クラッチ群Household Ambulator(以下:HA)、歩行器群Nonfunctional Ambulator(以下:NFA)、車椅子Nonambulator(以下:NA)とした。<BR>また過去のカルテから訓練頻度、訓練継続期間、訓練開始年齢を調査し、それぞれ獲得群と非獲得群で関連性があるかを調査した。訓練頻度は幼児期の訓練回数を対象にし、訓練継続期間は初診日と年10回以上来院した年を訓練最終日と設定しその期間を対象とした。訓練開始年齢は初診日の年齢を対象とした。CA+HAを獲得群と設定した。<BR>統計学処理にはt検定を用い危険率5%未満を有意とした。<BR>【説明と同意】<BR>本人とその家族には本研究の趣旨を説明し、書面による同意を得た。<BR>【結果】<BR>70例からの返信があり、内訳は男性37名、女性33名、残存運動最下髄節別ではThレベル2例、L1、L2レベル1例、L3レベル19例、L4レベル14例、L5レベル17例、S1、S2レベル17例であった。Sharrardの分類と各レベルを比較すると、Thレベルでは車椅子移動が主であり歩行不能であるに対し、NA群2例であった。L1、L2レベルでは車椅子移動が主であり歩行は非機能的歩行であるのに対し、HA群1例であった。L3、L4レベルでは50%が車椅子であり松葉杖を使用しての家庭内歩行であるのに対し、L3ではCA群5例、HA群3例、NA群11例で獲得群は42%であった。L4ではCA群6例、HA群4例、NFA群1例、NA群3例で、獲得群は71%であった。L5レベルでは松葉杖での地域社会内歩行であるのに対し、CA群14例、HA群1例、NA群2例で獲得群は88%であった。S1、S2レベルでは独歩で地域社会内歩行、50%が松葉杖又は杖であるのに対しCA群16例、NA群1例で獲得群は94%であった。<BR>残存運動最下髄節L3レベルの実用歩行獲得に関して、訓練頻度では獲得群が30.0±29.8回であるのに対し非獲得群は55.3±35.9回、訓練開始年齢では獲得群が33.4±20.8カ月であるのに対し非獲得群は44.6±42.8カ月、訓練継続期間では獲得群が111.2±63.0カ月であるのに対し非獲得群は36.2±42.8カ月であった。訓練頻度、訓練開始年齢では有意な差は認められず、訓練継続期間では有意な差が認められた。(p<0,05)<BR>【考察】<BR>今回の結果から訓練頻度、訓練開始年齢では実用歩行獲得の関連性は認められず、訓練継続期間の差が実用歩行獲得に影響することが明らかとなった。当院に来院している多くの二分脊椎症症例が幼児期に最も訓練頻度が多く、小学校入学とともに減少する傾向にある。小学校では集団生活となり移動スピードが要求され車椅子での移動を余儀なくされるケースが多く認められる。長時間車椅子で過ごすことで、関節拘縮や筋力低下に結びつき歩行能力低下の原因になると考えられる。その為、小学校入学以降も継続し理学療法を行うことでROMの維持・拡大、筋力増強が期待でき実用歩行の獲得・維持が可能であると考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>Sharrardの分類以上の移動能力獲得が、理学療法を施行する事で可能であることを示す事ができ、二分脊椎症への理学療法の新たな展開につながると思われる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), BbPI2147-BbPI2147, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205573101696
  • NII論文ID
    130005016885
  • DOI
    10.14900/cjpt.2010.0.bbpi2147.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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