地域小児リハビリテーション充実への取り組み

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  • 地域資源で地域療育を

抄録

【目的】<BR>県内の小児リハビリテーションの実情は、専門医療機関が4施設あり、当施設は開設以来、県内唯一の肢体不自由児施設として県内全域のフォローを、外来リハビリを中心に巡回療育、学校・施設支援により地域療育を行ってきた。宮崎県は九州の南東部で、南北に縦長な地理的環境にある。県内各地域からの交通は、バスや電車といった公共交通機関が十分網羅できておらず、通所の患者様方は自家用車での来所が殆どである。高速道路も十分整備されていないため、遠隔地からは片道1時間以上かけての通所となり、ご本人やご家族の負担軽減とリハビリフォロー頻度の不十分さ、生活圏における問題への対応等が常に課題となってきていた。平成17年以前は、地域で小児リハビリテーションに係わるセラピストも極僅かな“有志”の方達によるサービス提供に留まり、決して十分な環境にはなかった。そこで当施設では平成18年度より県内の地域小児リハの充実を図るべく、障害児地域療育推進事業として「小児リハビリテーション研修会」(以下「研修会」と示す)という事業を展開、今年度も5月中旬より5期目の研修会を開催、終了した。当初の目的に対し効果が少しずつ現れてきている。ここで、先に開かれた全国肢体不自由児療育研究大会で紹介した内容(これまでの5期の研修会の、経過・効果・課題を整理、研修会参加者アンケート集計)に加え、利用者へのアンケートを実施し集計、結果を検討し提示することで本事業の可能性と更なる発展、地域の肢体不自由児施設の役割について検証してみたいと考える。<BR>【方法】<BR>1 研修会の紹介<BR>期間:5下旬~10月初旬 毎週金曜日の終日で、全20回 (H22~全15回)<BR>研修の種類(研修カリキュラム:講義24科目、実技、見学)<BR>・施設研修:講義、実技、症例実習、各生活場面見学(セラピー・ADL・他セクション)<BR>・巡回療育会場研修 :出前講義、症例検討、<BR>・リフレッシュ研修 :既受講者を対象に施設研修、巡回療育会場研修<BR>2 研修会の経過<BR>当初は県北、県西の民間2施設に協力を依頼し開始。 その後、事業対象地域を県全域に拡 大、協力施設も増えて、ほぼ県全域の施設から受講者が募れた。受講者数の推移として、年々希望者は増加傾向で、当施設の受け入れキャパシティーを勘案し、徐々に増やしてきた。<BR>3 受講者アンケート:研修会受講者に対し、講義、実習、症例検討、見学等について<BR>4 利用者アンケート:主要協力施設の利用者に、小児セラピスト育成後の地域療育の変化について<BR>【説明と同意】<BR>アンケートを実施した施設へは、調査の説明を行い、各施設の倫理委員会にて承諾を得ている。利用者については、保護者に説明文書を提示、同意書にて承諾を得ている。<BR>【結果】<BR>各地域の主要協力施設の実績を例に、研修会開始前年度から開始後5年目の今年までの、小児セラピスト数、登録利用者数の推移を検証する。各施設とも研修会開始前年度からすると、年々小児セラピストの数は増えてきたが、専属としてある程度まで増えたらそれ以上増えていないという結果を得た。一方、利用者の人数の伸びはめざましく、地元施設でのフォロー患者数が多くなってきたことが伺える。これまでに分析できた、研修会受講者アンケートの結果では、講義の科目・時間数・手法で、約8割の受講者が満足、実技では、技術援助で約7割の受講者が納得と回答。しかし、症例検討や他セクションの見学で、約3割の不満回答があった。利用者アンケートの結果を踏まえて、本発表で報告する。<BR>【考察】<BR>各地域の主要協力施設で小児セラピスト数、利用者人数の両者において増加傾向にあり、地域のリハビリテーション資源である地域施設のセラピストにて、地元で小児セラピーのフォローが充実してきたことが伺える。しかし、一方では専属小児セラピストの配置人数に限界があるようで、利用者が増加してきたことで、今後、従事者の負担が増加していくことが懸念される。今回の調査結果を踏まえると、研修会の方向性として既存の資源の更なる充実により、地域完結型の療育を目指す必要性を感じた。今後は利用者のアンケート結果も勘案し、地域療育充実に向けて更なる工夫を図っていく必要があると考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>宮崎県における地域小児リハビリテーションの充実は、これまでに効果的な対策に乏しく困窮していた問題であった。平成18年より開始した当研修会は、年々確実に効果を上げている感触があった。これまでの5年間を振り返り検証し、地域完結型療育を目指し理学療法士が専門性を持って、今後有効に関わっていくために、方向性を再検討することは重要な意味を持つ。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), BbPI2152-BbPI2152, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205573110016
  • NII論文ID
    130005016890
  • DOI
    10.14900/cjpt.2010.0.bbpi2152.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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