正常アーチ足と低アーチ足の足底圧力と足圧中心軌跡の比較

DOI
  • 清水 新悟
    医療法人三仁会 あさひ病院リハビリテーション科
  • 横地 正裕
    医療法人三仁会 あさひ病院リハビリテーション科
  • 竹中 裕人
    医療法人三仁会 あさひ病院リハビリテーション科
  • 宮地 庸祐
    医療法人三仁会 あさひ病院リハビリテーション科
  • 古田 国大
    医療法人三仁会 あさひ病院リハビリテーション科
  • 鈴木 惇也
    医療法人三仁会 あさひ病院リハビリテーション科
  • 猪田 邦雄
    医療法人三仁会 あさひ病院リハビリテーション科
  • 花村 浩克
    医療法人三仁会 あさひ病院整形外科

書誌事項

タイトル別名
  • アーチ低下による疼痛発生メカニズムの検討

抄録

【はじめに、目的】扁平足を呈する人はスポーツや走行時などに何らかの異常ストレスがかかり、足底部に疼痛が出現することがある。我々の先行研究によると扁平足の疼痛および胼胝の出現頻度は第1中足骨頭や第2中足骨頭、第3中足骨頭、踵骨などの地面と接する箇所、足底全体では内側部の方に高かった。そこで実際に各足底部位にかかる圧力に差があるのかを明確にするために歩行時の正常アーチ足と低アーチ足の足底にかかる圧力の比較を行なった。また足圧中心軌跡の比較も行ない、低アーチ足が足に及ぼす影響を検討した。【対象と方法】対象は下肢の骨折や外傷など特記すべき既往歴のない健常者18例36足であり、全例がボールを蹴る足が右であった。これらの症例に対しアーチの評価を行い、正常アーチ群と低アーチ群に分類して足底圧力と足圧中心軌跡の比較を行った。アーチの評価は床面から舟状骨下端までの距離を足長で除した値に100を掛けた内側縦アーチ高率を用いた。正常アーチ足は内側縦アーチ高率が男性16.5%以上、女性14.7%以上とした。低アーチ足群(扁平足変形)は内側縦アーチの低下で内側縦アーチ高率が男性16.4%以下、女性14.6%以下とした.足底圧力と足圧中心軌跡はモンテシステム・ソリューションのRS scan(300Hertz)を用いて歩行時の足底圧力10 zone(母趾、2~5趾、第1中足骨部、第2中足骨部、第3中足骨部、第4中足骨部、第5中足骨部、アーチ中央部、踵部外側、踵部内側)と足圧中心軌跡の座標を測定し、その結果を正常アーチ足群と低アーチ足群との間で比較した。足底圧力は体重と重力9.8で除した値とし、足圧中心軌跡は足長と足幅で除した値とした。統計学的解析はwinstatを用いてMann-Whitney 検定とspearmanの順位相関係数を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には本研究の目的と方法、健常者としての権利および個人情報の保護について書面と口頭にて十分な説明を行い、同意を得た。なお本研究は三仁会あさひ病院の倫理委員会の承認を得た。【結果】正常アーチ群と低アーチ群に分類した内訳は、左正常アーチ足(女性6足、男性3足)が9足、左低アーチ足(女性2足、男性7足)が9足、右正常アーチ足(女性6足、男性3足)が9足、右低アーチ足(女性2足、男性7足)が9足であった。足底圧力は左が低アーチ群で第1中足骨、第3中足骨、第5中足骨、アーチ中央部、踵部外側、踵部内側において有意に高く(p<0.05)、右は低アーチ群でアーチ中央部において有意に高い値を示した。足圧中心軌跡は左右ともに低アーチ群で正常アーチ群と比べて、一定ではなく内側寄りとなり、不規則な波形を示した。立脚中期時の足圧中心X座標は正常アーチ足と低アーチ足で比較したところ、左がp=0.0153、右がp=0.1769となり、左低アーチ群が正常アーチ群と比べて有意に内側寄りの軌跡であった(p<0.05)。【考察】通常、アーチが低下する扁平足は床との接触面積が増加するため、地面と接する箇所の圧力は低下すると考えられるが、今回の結果では扁平足の方が、明らかに圧力が増加していた。これはアーチの衝撃吸収機能が低下したことにより圧力が増加した可能性がある。実際に本研究結果は我々の先行研究で行った疼痛箇所に関するデーターとも一致しており、衝撃吸収機能の低下が疼痛発生メカニズムの一要因と思われた。また不規則な足圧中心の軌跡は、扁平足の疼痛が足底の様々な箇所に生じることに関連しているとも考えられた。さらに足圧中心の軌跡が内側に寄っていることは、疼痛発生部位が内側に多いことに関与しているのではないかと推察した。【理学療法学研究としての意義】アーチ低下による足底の圧力増加や足圧中心の内側寄りで不規則な軌跡から足部への負担増加による様々な疾患が出現する可能性が示唆された。実際アーチ低下が原因の1つといわれている足部疾患は多数あるが、そのメカニズムが明確にされているわけではない。本研究結果は、そのメカニズムを解明する一助となるとともに足部疾患の治療方法を考える上でも意義のある内容であると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48100119-48100119, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205573287168
  • NII論文ID
    130004584701
  • DOI
    10.14900/cjpt.2012.0.48100119.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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