当院における臨床実習指導形態変更による影響の検証

DOI
  • 吉村 直人
    医療法人社団水光会宗像水光会総合病院リハビリテーション部
  • 藤田 聡美
    医療法人社団水光会宗像水光会総合病院リハビリテーション部
  • 辻 義輝
    医療法人社団水光会宗像水光会総合病院リハビリテーション部
  • 髙橋 博愛
    医療法人社団水光会宗像水光会総合病院リハビリテーション部
  • 堤 文生
    東筑紫学園専門学校九州リハビリテーション大学校

書誌事項

タイトル別名
  • 実習生対象アンケートより

この論文をさがす

抄録

【はじめに、目的】宗像水光会総合病院は福岡県福津市にある入院病床数300床(一般病床227床、亜急性期病床24床、回復期病床49床)の一般病院で、理学療法士は26名(急性期19名、回復期7名)在籍している。理学療法士養成校の臨床実習を年間12施設21名(長期14名、評価4名、短期3名、平成23年度実績)受諾している。当院では平成23年度より臨床実習指導形態を一新し、それまでの実習指導者2名体制・完全症例担当制による指導・評価から実習指導者5名体制・クリニカルクラークシップ導入による指導・評価へと移行した。またそれに伴い、実習指導者が増え経験年数の少ない指導者が実習生を指導することが発生することを踏まえ、指導内容の平準化を図るため、実習予定表を作成・導入し、グループ内の他施設の見学や症例発表等をマニュアル化した。今回の新体制移行に伴う影響を実習生対象の実習後アンケートを比較検討することにより検証し、多少の知見を得たのでここに報告する。【方法】旧実習指導体制(平成18~22年度)で長期実習を修了した実習生40名(男性25名、女性15名、平均年齢23.1±4.4歳)、新実習指導体制(平成23・24年度)で長期実習を修了した実習生13名(男性10名、女性5名、平均年齢22.3±2.9歳)にアンケートを実施した。回収率は100%、有効回答数は旧体制36(男性23、女性13、平均年齢22.5±3.4歳)、新体制13(男性8、女性5、平均年齢22.5±3.1歳)であった。アンケート内容は、1.実習形態(期間等)2.性別3.年齢4.職種5.症例報告等の実施の有無6.回診等の見学の有無7.家屋調査等の見学の有無8.訪問リハの見学の有無9.老健の見学の有無10.ケースバイザーの必要性11.今後重点をおきたい点(5項目、完全順位回答形式)12.悩み・不安の有無13.悩み・不安の内容(8項目、完全順位回答形式)14.自由記載である。質問1~4は今回の研究には特に関係がないため取り扱わなかった。質問5~10,12はl×m分割表によるχ²検定で回答の分布の差異を検定した上で質問内容の特性より実数の変化も比較した。質問11,13は項目毎にMann-Whitney検定を実施しその平均値の差を検証した。【倫理的配慮、説明と同意】今回の研究では個人が特定できないよう十分配慮した。また、アンケート実施に際し、口頭で研究に使用することの説明を行い、同意を得た。【結果】質問5~10・12に関して前後における有意差はなかった。しかし、質問5,6,8,9においては実数でみると、「はい」と回答した割合が新体制下で質問5は100%(旧94.4%)、質問6も100%(旧83.3%)、質問8は92.3%(旧69.4%)、質問5も100%(旧86.1%)と見学・発表等をほぼ100%経験できている、という結果となった。また、質問11に関しては、項目5(向上心を高める)の前後の順位に有意差があることが示された(p=0.031)。次に質問13に関しては項目5(向上心に関する悩み)の前後の順位に有意差があることが示された(p=0.037)。つまり、新体制移行により、「向上心に関する悩み」が相対的に減少し、「今後向上心を高める必要性」が相対的に減少した、という結果が示された。【考察】結果で述べた向上心に関する点をプラス面から考察すると、常に高い向上心を持ち臨床実習に臨めている、もしくは頻度・度合ともに重圧・ストレスを感じることが減少し、常に現実的な目標を持ち安定した心理状況でと実習に臨めている、ということが推察される。マイナス面から考察すると、臨床実習で求められるハードルが低下し、実習生が現状で今後の臨床に十分対応できる、と考えるようになっている可能性があり、向学心・向上心が低下している、ということが推察される。また、新体制下では見学・発表等をほぼ100%経験できている、という結果より、新体制に移行し実習内容をマニュアル化したことで、旧体制でみられた指導者個々の考え方により実習生が臨床実習において経験する内容が異なる、という問題が一部解消されたといえる。現在、新体制に移行しまだ約1年半という状況であり新体制移行後のサンプル数が不足していることは否めない。今後の課題として、調査を継続しサンプル数を増加し、より明確な結果を得る必要があることが挙げられる。【理学療法学研究としての意義】近年の臨床実習形態の変化に伴うメリット・デメリットに関してさまざまな意見・見解がみられているが、統一したアンケート用紙を使用した調査・分析による検証はまだあまりみられない。今回得られた結果を今後の臨床教育・後進育成に活用することで、医療・理学療法の発展に寄与できると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48100188-48100188, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ