ハムストリングスの同時収縮を伴う大腿四頭筋等張性筋力強化法の検討

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  • 筋電図学的検証

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【目的】<BR>整形外科的下肢疾患において早期大腿四頭筋筋力強化法としてQuadriceps muscle settingや膝伸展挙上運動が広く使われている。これらの方法は大腿四頭筋の単独収縮となるため前十字靭帯再建術を受けた者には適さない。大腿四頭筋の単独収縮は大腿骨に対する脛骨前方引き出し力を生じ前十字靭帯に大きな負担をかける。このため脛骨の前方引き出しに抑制的に働くハムストリングスとの同時収縮を伴った大腿四頭筋の筋力増強運動が模索されている。先行研究より等尺性運動による足部の蹴りだし動作において足部への抵抗の方向を調節することにより大腿四頭筋の筋活動およびハムストリングス(Hamstrings)と大腿四頭筋(Quadriceps)との活動比(以下H/Q ratio)をコントロールできることが明らかとなった。今回,我々は先行研究で安全なH/Q ratioを得られる足部への抵抗負荷条件にて蹴り出し動作を行わせH/Q ratioを評価したので報告する。<BR>【方法】<BR>下肢疾患のない健常な男子大学生10名を対象とした。測定は背臥位にて測定側の股関節,膝関節90度屈曲位を測定開始肢位とし,蹴り出し動作を行わせた。その際,重錘を用い,蹴り出し動作を行う足部へ,水平方向,水平から15度上方,30度上方の3方向へ抵抗をかけた。その抵抗は体重の10%,20%,40%に設定した。蹴り出し動作は5秒間行わせ,筋電計(NORAXON TELEMYO 2004T)を用いて内側広筋(VM),外側広筋(VL),大腿直筋(RF),半腱様筋(ST),大腿二頭筋(BF)から筋電位を導出した。蹴り出し肢位での股関節90度,60度,45度,30度,0度における前後0。25秒間の積分筋電図(IEMG;Integrated Electromyography)を求め,最大随意収縮時のIEMGに対する比率(%MVIC;Maximum voluntary isometric contraction)を算出した。得られた各筋の%MVICからH/Q ratioを算出した。統計処理は一元配置分散分析を行い,有意差が認められたものを多重比較検定のDunnett`s test法を用いた。有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR>被験者には本研究の趣旨,方法を十分説明し同意を得た。<BR>【結果】<BR>蹴り出し動作で,足部への抵抗負荷角度0度,15度,30度において安全なH/Q ratioは蹴り出し動作の開始から終了まで変化無く保たれた。また,%MVICは足部への抵抗負荷が大きいほど高かったが,本実験での最大抵抗である体重の40%の負荷においても%MVICは20%に満たなかった。<BR>【考察】<BR>先行研究において,安全なH/Q ratioを得られる等尺性の蹴りだし動作が示された。本研究の結果はその蹴り出し動作を下肢伸展まで行い等張性の筋収縮とした場合にも安全なH/Q ratioが保たれることが明らかとなった。今回の本研究では十分な体幹の固定が困難であったため大腿四頭筋の筋活動は最大でも20%の%MVICに満たなかったが,体幹の固定をしっかりすることでより大きな筋活動を得られると思われる。本研究における蹴り出し動作は,前十字靭帯再建術を受けた者に対して安全に行える有効な等張性大腿四頭筋筋力強化法であり負荷量や体幹の固定方法を含めて臨床適用に向けてさらなる研究を続けていきたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>短期間の安静においても筋萎縮は進むため可及的早期に筋力強化運動を行うことが重要である。本等尺性大腿四頭筋筋力強化法は拮抗筋であるハムストリングスの同時収縮をその運動中維持できるものであり前十字靭帯再建術を受けた患者が早期に行えるものでその臨床的意義は大きい。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205573424896
  • NII Article ID
    130004583053
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.h4p2354.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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