Cine-MRI(FIESTA法)を用いた腹部ローカル筋群の断面積計測と検者内・検者間信頼性の検証

説明

【はじめに、目的】 腰部疾患に対する理学療法において、腹部ローカル筋群の筋力低下はADLやQOLに大きな影響を与える因子の1つであり、客観的な筋力評価が重要となる。腹部ローカル筋群の評価において、これまで超音波画像診断装置を用い筋厚を測定する方法が多く行われてきた。また、MRIにおける同様の研究もあるが、撮像時間が長いなどさまざまな問題があった。そこでこれまで我々は、MRIの撮像時間を短縮する撮像方法で筋の動態撮影を行い、動作中の腹部ローカル筋群の形態学的評価を行ってきたが、信頼性についての検討は行っていなかった。本研究の目的は、健常者を対象に腹部ローカル筋群の断面積を計測し、へそ引き運動(以下drawing-in)における断面積の変化を捉え、それらの結果に対する信頼性について検討することである。【方法】 対象は、外傷歴がなく腰痛や下肢痛などを有さない健常成人男性5名、女性9名の計14名とした。最大収縮時のMRI画像において外腹斜筋(以下EO)、内腹斜筋(以下IO)、腹横筋(以下TrA)の境界が明らかに不明瞭であった者は除外した。最終的に女性1名が除外され13名(平均年齢24.2歳)を対象とした。検者は計測経験のある理学療法士2名とし、計測の順序は無作為であり検者間の臨床経験年数には差がないものとした。運動は、股関節を45度屈曲した背臥位で、20秒かけて1回のdrawing-inをゆっくりと5回連続で行い、最大収縮時のEO、IO、TrAと、その3筋を合わせた筋を側腹筋(以下LAB)としてそれぞれの断面積を求め、各検者は5回ずつの計測を行った。断面積の計測にはGE社製のプログラムを用いた。統計学的検討は、一元配置分散分析、二元配置分散分析を用いて、次に示す級内相関係数を求めた。各検者の検者内信頼性の検証に級内相関係数ICC(1,5)、また各回の検者間信頼性にICC(2,1)、5回の平均値の検者間信頼性にICC(2,2)を求めそれぞれ検討した。また、使用機器はGE社製MRI・Signa1.5T、撮像方法はFIESTA法Full(2.1msec)、Flip Angle:20、Bandwidth:±62.5、Matrix:256*224、NEX:1.0、FOV:28*28、Slice Thickness:6.0mm)にて行い、撮像断面は第4腰椎上縁とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき、口頭にて説明を行い同意を得たうえで実施した。【結果】 各検者の検者内信頼性ICC(1,5)は0.88以上であった。同様に各回の検者間信頼性ICC(2,1)は、0.90‐0.99であり、5回の平均値の検者間信頼性ICC(2,2)は0.70‐0.82であった。【考察】 本研究において、2人の検者における筋断面積計測の級内相関係数から、Cine-MRIは信頼性の高い有用な測定方法であったと考える。超音波画像診断装置を用いた筋厚測定の先行研究において、特に検者間の信頼性についての結果にばらつきが出ることが指摘されてきたが、本研究では5回の平均値による各筋のICC(2,2)は0.70‐0.82と比較的高い信頼性が得られた。しかし、EO、TrAにおいて比較的低値(0.70‐0.77)であったのは超音波画像診断装置を用いたHidesらの先行研究と同様であった。これはCine-MRIにおいても筋間の境界線が不明瞭な部分の計測に差が生じたことが原因の1つと考えられ、1つの限界点とも考えられる。しかし、ICC(2,1)及び、ICC(1,5)においては、ICC(2、2)と同等以上の高値を示した。したがって、drawing-inにおいて検者内・検者間の信頼性が十分に得られたと考える。Cine-MRIでは個々の筋を3次元的に捉えることができ、運動の全容を可視化できる。そして、これまで困難とされた筋の最大収縮時に比較的高い信頼性が得られた。この結果より、Cine-MRIは最大収縮時において腹部ローカル筋群の機能評価として有用な手段となりうると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 腰部疾患における理学療法は、徒手的なものや運動療法や物理療法など多岐にわたり、その効果を判定する評価には客観性に乏しいものも散見される。しかし、腹部ローカル筋群の機能を形態学的・数値的に評価することは腰部理学療法のエビデンスを確立していくうえで有用と考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011 (0), Ac0394-Ac0394, 2012

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205573464064
  • NII論文ID
    130004692611
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.ac0394.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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