一週間に150分以上の運動がHbA1cに与える影響について
この論文をさがす
説明
【目的】運動療法は糖尿病治療の3本柱の一つであり重要な治療手段であるが、食事療法と並んで最も実行度の低いセルフケア行動でもある。セルフケア行動に影響を与える要因は様々だが、中でも運動を毎日継続することでライフスタイルの大きな変更を伴ってしまうことは実行度を低下させる要因とされている。一般に運動頻度は20~30分の運動を週に4~5日以上が望ましいとされるが、患者個人に見合った有効な運動頻度を提案できないだろうか。そこで今回、糖尿病患者に対する運動指導の一助を得るために1回の運動時間、運動日数を問わず、一週間に150分以上の運動がHbA1cに与える影響について調査した。<BR>【方法】一般病棟入院中の2型糖尿病患者46人の基礎データ(年齢、性別、HbA1c、血糖値、BMI)をカルテより調べ、口頭により一週間の総運動時間、運動内容などを調査し得られた回答を記録した。一週間の総運動時間が150分以上群21人(男性11人、女性10人、平均年齢70.3±7.4歳)と150分未満群25人(男性10人、女性15人、平均年齢77.3±7.2歳)に分類。更に150分未満群のうち一週間の総運動時間が0分群15人(男性6人、女性9人、平均年齢76.6±6.9歳)の3類に分類し、HbA1c、運動内容等を比較検討した。<BR>統計処理は、一週間の運動時間とHbA1cの関係にWilcoxonの順位和検定を用いた。統計解析にはR Ver2.8.1を用い、統計学的有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】2型糖尿病患者のうち、本研究の目的を理解し同意を得られた患者を対象とした。<BR>【結果】150分以上群の一週間の総運動時間は519.0±453.9分、150分未満群では33.9±43.9分であった。150分以上群のHbA1cは6.1±1.4%、150分未満群では7.1±2.0%であり有意な差はみられなかった(P>0.05)。0分群のHbA1cは7.3±1.9%であり150分以上群と比べ0分群のHbA1cが有意に高かった(P<0.05)。<BR>運動内容としては、150分以上群では歩行6名、集団スポーツ6名、畑仕事3名、アルバイト2名、デイサービスでの体操2名、スポーツジム2名であった。150分未満群では歩行6名、筋力トレーニング2名、畑仕事1名、体操1名であった。両群共に最も多い運動は歩行であったが、150分以上群においては集団スポーツが歩行と同数であり、次に畑仕事、アルバイトと活動性の高い運動が上位を占める結果となっている。<BR>【考察】150分以上群と0分群との間のHbA1cには有意な差がみられたが、150分未満群との間に差はみられなかった。HbA1cが過去の血糖値、他のセルフケア行動の影響を受けることから今後、運動療法の効果を検討するうえで、インスリン抵抗性との関係についても調査することが必要と考えられた。150分以上群では運動時間を設けるというより運動を生活の一部として一週間の中に取り込んでいる。さらに社会交流の場としても上手く活用することで高強度の運動を継続できている。<BR>【理学療法学研究としての意義】運動療法へのアドヒアランスを高め、健康を維持していくには、運動指導後も患者の行動変化に対し適切な指導を行っていく必要がある。患者の現状を把握し、適切な運動指導を行うことで良好なQOLを維持することができる。時間とともに常に変化していく実行度に対しても柔軟に対応するために、より運動を行いやすい環境を提供し続ける必要がある。
収録刊行物
-
- 理学療法学Supplement
-
理学療法学Supplement 2010 (0), DbPI2349-DbPI2349, 2011
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205573632896
-
- NII論文ID
- 130005017501
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可