フィジー国理学療法士臨床研修(第2報)

DOI
  • 貞松 徹
    沖縄リハビリテーションセンター病院 リハビリテーション部 社団法人 沖縄県理学療法士会
  • 池城 正浩
    翔南病院 リハビリテーション科 社団法人 沖縄県理学療法士会
  • 比嘉 つな岐
    北部地区医師会病院 リハビリテーション科 社団法人 沖縄県理学療法士会
  • 岡本 慎哉
    大浜第一病院 リハビリテーション科 社団法人 沖縄県理学療法士会
  • 溝田 康司
    熊本保健科学大学 リハビリテーション学科 理学療法専攻
  • 内山 靖
    名古屋大学医学部保健学科

書誌事項

タイトル別名
  • JICA草の根技術協力事業(地域提案型)

抄録

【目的】<BR> フィジー国理学療法士臨床研修(以下;プロジェクト)は、フィジー国理学療法士の患者治療への意識向上と安全で質の高い理学療法をフィジー国国民に提供する事を目的として、(社)沖縄県理学療法士会(以下;OPTA)と沖縄国際センター(以下;JICA沖縄)が協働して行った草の根技術協力事業である。本事業実施の経緯については、昨年第44回日本理学療法学術大会で報告を行った。プロジェクトの特徴は、フィジー国内の基幹病院に派遣中の青年海外協力隊員(以下;JOCV)の協力を得ながら取り組んでいることにある。今回2年に渡り実施したプロジェクトの紹介を行うとともに、各都道府県の今後の国際協力の参考となることを目的として総括報告する。<BR><BR>【方法】<BR> プロジェクトの実施期間は2008年4月~2010年3月までの2年間。2007年に実施した現地調査以降、OPTA内に研修員を受け入れる病院、施設(以下;施設)の理学療法士を中心としたプロジェクトチームを立ち上げ、1ヵ月に1回の頻度でミーティングを持ちながら、受け入れの準備を行った。2008年11月に第1次研修受入、2009年7月に第2次研修受け入れを実施。各年度約6週間、3つの国立基幹病院に勤務する3名の理学療法士を沖縄県内約10ヵ所の施設で研修員として受け入れた。研修は1施設1日~3日程度とし、主に、1)チーム医療としての医師及び看護師との連携、2)リハビリテーション総合実施計画書に基づく評価及び中枢疾患、整形疾患等に対する評価の重要性を全研修施設の共通研修項目に置き、研修目的がぶれないよう配慮を行った。研修員が作成したアクションプランをフィジー国内の理学療法士、JOCV、関連スタッフと共有するために、研修終了時と3ヵ月後にTV会議を通した発表会を実施した。なお、アクションプラン実施期間中はJOCVの協力を得ながら、メールを通して研修員の活動支援を行った。<BR> 2年次は1年次の要望を踏まえ、作業療法・言語聴覚療法部門見学と評価研修、糖尿病教室への参加、双方の学習の場として研修員によるOPTA会員への講義として妊産婦リハビリテーション講義の企画も取り入れた。<BR><BR>【説明と同意】 <BR> 本プロジェクトは、JICA草の根技術協力事業を利用したもので、JICA沖縄、JICAフィジー事務所、フィジー国保健省の承認を受け実施したものである。<BR><BR>【結果】<BR>1年次の主たる成果<BR> 日本におけるリハビリテーションの流れと理学療法士の役割が理解され、特に急性期病院でも、組織立ったチーム医療と計画的な評価が可能であることが理解された。また、医師、看護師との連携によるチームアプローチの見学とカンファレンスへの参加を通して、理学療法実施計画を通した一貫した患者介入への理解が促進された。その結果、自国の所属病院内に不足していたチームアプローチへの意欲が高まり、連携確立のための活動に対する明確な意思表示が示されるとともに所属病院の地域性を考慮したアクションプランが作成された。さらに、脳血管疾患モデルの総合実施計画書、整形外科疾患及び脳血管疾患患者に対する評価シートの作成とその運用が盛り込まれた。<BR><BR>2年次の主たる成果<BR> 1年次同様、チーム医療の重要性や定期的な評価、退院後のフォローの重要性が認識された。また、日本における糖尿病や生活習慣病予防における理学療法の役割について学び、自国でも取り組みが必要として、アクションプランに盛り込まれた。2年次は、フィジー国より帰国したJOCV(比嘉つな岐氏)がプロジェクトメンバーに加わり、専門用語通訳の部分でコーディネーター補助を務め、双方の言語面のストレスの軽減が図れた。また、現地のJOCVとの密な連絡により結果、本研修の内容、進捗状況について、フィジー国理学療法士、JOCVおよびフィジー国保健省、医師、看護師と内容を共有する事が出来た。<BR><BR>【考察】<BR> 本プロジェクトは、JICAとの協働による都道府県士会レベルで行った国内初の国際協力事例で、現地視察をスタートに3年を掛けて実施した研修事業である。特に研修員の研修終了後のアクションプランの実施について派遣中のJOCVと連携を取りながら支援を行うことが出来たことは、今後の効果的な国際協力のあり方を示す先例となったものと考えている。今年度は、2009年12月に第4回TV会議を、また、2010年2月頃を目処にフィジー国への専門家派遣を予定している。今後は日本理学療法士協会と地方の理学療法士会の国際協力上の連携を推進する必要があろう。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 理学療法領域における国際協力とJOCVとの連携事例は他の領域における先例として、今後検討に値する内容であると考えている。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), G4P3243-G4P3243, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205573770112
  • NII論文ID
    130004583020
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.g4p3243.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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