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関節可動域制限における骨性因子への理学療法士の対応について
Bibliographic Information
- Other Title
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- 大腿骨骨幹部骨折後に第3骨片摘出に至った症例と他症例の比較より
Description
【目的】骨折後の関節可動域制限の因子には、軟部組織の伸張・滑走障害のように運動療法で改善が可能な「機能障害」と、骨変形など運動療法で改善が困難な「解剖学的破綻」とがある.後者では、主に整形外科的治療が適応となるが、画像上で転位した骨片やscrew・nail先端部の突出を認めても、運動療法で改善することがあり、その判断は容易ではない.本研究の目的は、解剖学的破綻による可動域制限の判断方法を紹介し、適応を判断するために何が必要であるかを再考することである.<BR>【方法】第3骨片摘出術に至った1症例を含む大腿骨骨幹部骨折後の5症例の結果を比較・検討する.なお、対象は、受傷前に機能障害がないこと、高エネルギー外傷であること、他の合併症がないこと、同一の理学療法士が担当することを条件とした.<BR>【説明と同意】本発表にあたり、ヘルシンキ宣言に則り、全症例および主治医、X線撮影を施行した診療放射線技師に研究の意義を説明し、同意を得た.<BR>【結果】全症例で受傷時に骨の転位を認め、受傷後4~8日にて髄内釘による骨接合術が行われた.翌日から理学療法を開始し、共通所見としてCRPの上昇、大腿中央部の腫脹と熱感・安静時痛・圧痛・運動時痛等を認めた.<BR> 症例1は、20歳代前半の男性で、交通外傷による右大腿骨骨幹部骨折である.症例2は10歳代後半の男性で、転落による右大腿骨骨幹部骨折である.症例3は60歳代前半の女性で、交通外傷による右大腿骨骨幹部粉砕骨折を含む多発骨折である.先の共通所見に加え、損傷・侵襲のある組織を徒手的に緩めて屈曲運動を行うことで可動域の増加がみられた.骨折部周囲の広筋群の損傷による炎症と筋攣縮の病態と推察し、広筋群の修復に合わせた運動療法を行った.それぞれ4週、3週、6週で全可動域を獲得した. <BR> 症例4は、10歳代後半の男性で、交通外傷による左大腿骨骨幹部開放骨折である.初期から骨折部周辺に著明な腫脹を認め、疼痛も強かったため、可動域運動を中止した.術後2週の時点で化骨性筋炎と診断された.術後6週間は可動域運動を実施できず、大腿骨顆部周辺と膝蓋骨周辺組織の柔軟性の維持に努めた.可動域運動再開時の屈曲は60°であり、大腿前外側面に著明な骨突出を認めたが、軟部組織に徒手操作を加えることで可動域が改善したため、週1~2回の運動療法を実施した.術後150日にて左右差は10°であったが、諸事情により理学療法を終了した.<BR> 症例5は、50歳代前半の女性で、交通外傷による右大腿骨骨幹部骨折を含む多発骨折である.術後の画像所見において直立化した第3骨片を認め、膝関節の自動・他動での屈曲40°および自動での伸展運動にて鋭い疼痛を認めた.2週間を経過し腫脹は軽減したが、軟部組織の徒手操作にて可動域が変化する条件を見出せなかった.医師と相談し、術後3週経過時に授動術を行った.腰椎麻酔下で屈曲方向への徒手操作により剥離音とともに可動域が110°となったが、それ以上は改善しなかったため、第3骨片の摘出に踏み切った.骨片は一方が骨折部に陥入し、もう一方が中間広筋の筋膜を貫いて屈曲時の中間広筋の伸張・滑走を妨げていた.骨片摘出後は持続的硬膜外麻酔薬の点滴下にて可動域運動を実施し、骨片摘出術後3日間で屈曲全可動域を獲得した.<BR>【考察】大腿骨骨幹部骨折後の可動域制限は、症例1~3のように広筋群の損傷に対して初期の安静と組織の修復に合わせた運動療法にて1~2ヶ月で全可動域を獲得できることが多い.しかし、症例4・5のように軟部組織の損傷に加えて骨性の制限因子が疑われるケースに遭遇することがある.両症例ともに画像上は骨が筋の伸張・滑走を妨げているようにみえるが、症例4では筋炎が沈静化した後、軟部組織の操作により可動域が変化する所見を得ることができ、実際に運動療法により改善した.一方、症例5では軟部組織の条件により可動域が変化する所見が得られず、実際に骨片が筋の滑走を妨げていることから運動療法の適応外であったと言える.画像所見に加え、損傷していると予想される軟部組織を徒手的に弛緩させるなど軟部組織の条件を変化させて屈曲運動を行うと疼痛の軽減とともに可動域の増大が得られるかどうかが制限因子を特定する上で重要な所見になると考えられた.運動療法が適応外の場合も、評価結果を医師との共通言語の中で説明し、治療方針をよく話し合うことが患者にとって最良の選択を可能にするものと考えられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】可動域の改善において重要なのは病態に合った治療法であり、当臨床研究から、制限の原因・部位・病態の推察や理学療法の適応か否かの判断は、画像だけでなく、条件を変化させた理学所見を丁寧にとることが重要であると示唆された.<BR>
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2009 (0), C3O2109-C3O2109, 2010
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205573855488
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- NII Article ID
- 130004582257
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed