座位における頭尾側方向への軸圧抵抗エクササイズが立位姿勢に与える影響

  • 西村 圭二
    市立長浜病院 リハビリテーション技術科
  • 北村 淳
    市立長浜病院 リハビリテーション技術科
  • 白星 伸一
    佛教大学 保健医療技術学部 理学療法学科
  • 山﨑 敦
    文京学院大学 保健医療技術学部 理学療法学科

書誌事項

タイトル別名
  • セルフエクササイズとしての有効性

説明

【目的】<BR>不良姿勢を伴う患者に良姿勢を指導するにあたり様々な方法を用いるが,頭頸部と骨盤の位置関係をコントロールすることにより認識が得られやすいことを臨床上経験する。第44回日本理学療法学術大会において,背臥位で軸圧抵抗エクササイズを施行した結果,立位アライメントの正中化や安定化が得られたことを報告した。そこで今回は,セルフエクササイズとして座位における軸圧抵抗エクササイズを施行したところ立位姿勢に変化を認め,さらに抵抗を加えない伸び上がりエクササイズと比較し各々の有効性について検討したので報告する。<BR>【方法】<BR>健常成人10名(平均29.2±5.2歳)を対象に,各エクササイズ(以下EX)施行前後の立位の重心動揺測定と姿勢撮影を行った。測定肢位は両脚の中心を舟状骨粗面に合わせ20cm幅で開脚した立位とし,下肢荷重計(アニマ社製G-620)を用いて,両脚,片脚立位の重心動揺を30秒間計測した。また,耳垂,肩峰,大転子,第5中足骨底にマーカーを付け,矢状面の立位姿勢を撮影した。各EXの肢位は,ハーフカットのストレッチポール(LPN社製)の弧の頂点に坐骨を位置させた端座位とした。軸圧抵抗EXは両坐骨と頭頂を通る幅9mmのゴムの輪で,頭頂から坐骨方向へ圧を加え,張力に対し頭側へ伸び上がる運動とした。この際,ゴムの長さは座高の2/3から1/2の間で調節した。伸び上がりEXは頭頂と坐骨を引き離すようにそのまま頭側へ伸び上がる運動とした。各EXはセルフで行うように指示し,実施回数は20回を2セットとした。セット間に1分間の休憩を設けた。得られた結果から,各々のEX前後の両脚,片脚立位の総軌跡長,外周面積を比較した。撮影画像より第5中足骨底を通る垂直線を基準に各マーカーの距離をパソコン上で求め,値の減少をもってアライメントは正中に近付いたと判断した。統計処理は対応のあるt検定を用い,危険率5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR>厚生労働省が定める「医療,介護関係事業における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン」に基づき,被験者に本研究の趣旨を書面にて十分に説明し同意を得た。<BR>【結果】<BR>総軌跡長は,両脚立位では両EXともEX後の減少を認めたが有意差はなかった。片脚立位でも両EXとも動揺減少を認めたが,特に軸圧抵抗EXにてEX前118.9±25.2cm,EX後108.5±28.3cmと有意に減少を示した(p<0.01)。外周面積は,両脚立位では有意差はなかった。片脚立位では両EXとも減少を認めたが,特に伸び上がりEXにてEX前5.1±1.4cm2,EX後4.4±1.3cm2と減少を示した(p<0.05)。垂直線との距離は,すべてのマーカーにおいて減少を認めた。特に軸圧抵抗EXにおいて,片脚立位の耳垂はEX前4.6±1.9cm,EX後2.8±2.0cm(p<0.01),肩峰はEX前3.0±2.6cm,EX後2.0±1.8cm(p<0.05)と有意に減少した。伸び上がりEXでは両脚立位の肩峰にのみEX前1.6±1.1cm,EX後1.1±0.6cmと有意な減少を示した(p<0.05)。<BR>【考察】<BR>両EXにより動揺減少が得られた。頭側へ伸び上がることで腹横筋の活動を生じることが報告されているため,両EXにより下部体幹の安定性向上が得られたと考える。軸圧抵抗EXでは,ゴムを用いることで張力による鉛直下方向への圧刺激が加わるので,頭側へ伸び上がるための正しい運動方向の認識が可能となる。さらに,頭頂と坐骨を支点とし張力に抗することで,下部体幹だけでなく頭頸部の安定化筋群も促通していることが推測される。そのため,片脚立位での動揺および垂直線との距離の有意な減少が得られ,立位姿勢の安定化だけでなくアライメント改善にも影響を及ぼしたと考える。しかし,伸び上がりEXでは伸び上がり時の運動方向は自己の感覚に依存するため一定ではなく,頭頸部のコントロールも不十分であることから,アライメント改善への影響は小さかったと考える。したがって,立位姿勢の安定化およびアライメント改善において軸圧抵抗EXの有効性が示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>臨床上,理学療法を施行する中で患者の姿勢に対してアプローチすることは多い。患者の現疾患は障害部位のみの問題だけではなく,日常生活での不良姿勢の影響が大きく関与していることを経験する。患者に指導した良姿勢は,日常生活においても持続できるようにホームEXとして患者自身が再現できる必要があると考える。わかりやすく,より効果的で継続可能なEXを指導することが,再発防止および予防において重要であると言える。軸圧抵抗EXはゴムの装着方法を正しく指導するだけでセラピストが目的としている運動を容易に行える。したがって,本研究において軸圧抵抗EXの有効性を示すことで,より効果的で再現性の高いセルフEXを患者に提供することが可能であると考える。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), C3O2114-C3O2114, 2010

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205573869824
  • NII論文ID
    130004582262
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.c3o2114.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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