中足骨と楔状骨レベルの横アーチに対する足底パットが歩行の立脚期に及ぼす影響
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- 島田 周輔
- 昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 リハビリテーション部
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- 石原 剛
- 昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 リハビリテーション部
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- 神原 雅典
- 昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 リハビリテーション部
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- 水元 紗矢
- 昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 リハビリテーション部
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- 加藤 彩奈
- 昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 リハビリテーション部
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- 浅海 祐介
- 昭和大学横浜市北部病院 リハビリテーション科
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- 吉川 美佳
- 昭和大学豊洲病院
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- 千葉 慎一
- 昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 リハビリテーション部
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- 大野 範夫
- 昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 リハビリテーション部
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- 入谷 誠
- (有)足と歩きの研究所
書誌事項
- タイトル別名
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- 矢状面上での下腿と大腿傾斜角および膝関節角度に着目して
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説明
【目的】<BR>歩行動作は左右交互に行う循環運動であり,日々繰り返されるわずかなストレスや運動の偏りが関節の障害を引き起こすことは広く知られている.臨床にて我々は,障害発生の原因となるメカニカルストレス軽減を目的に,入谷式足底板の処方や足底パットによる歩行動作の誘導を行っており,動きの変化により疼痛が軽減することを経験する.その中で,中足骨と楔状骨レベルの横アーチに対する足底パットは体重の前方移動をコントロールする目的で用いているが,下腿と大腿への影響についての関係性は明らかにされていない.本研究は,足底パットが下腿と大腿の傾斜角および膝関節角度に及ぼす影響ついて,矢状面上での角度に着目して検討を行った.<BR>【方法】<BR>対象は,健常成人男性9名(平均年齢27.7±3.6歳)の右下肢とした.課題動作は自然歩行とし,歩行条件は(1)自然歩行,(2)中足骨レベルの横アーチ後方部分への足底パット貼付(以下,中足骨パット.2mm厚のポロンシートソフト縦15mm×横30mm),(3)楔状骨レベルの横アーチへの足底パット貼付(以下,楔状骨パット.3mm厚のポロンシートソフト縦30mm×横25mm),の3条件とし,それぞれ3回ずつ計測した.尚,パット貼付は入谷の方法に準じて貼付を行った.検討項目は,矢状面における下腿と大腿の傾斜角および膝関節屈伸角度とし,三次元動作解析装置VICON370 (Oxfordmetrics社製,60Hz)を用いて計測した.反射マーカーを大転子,大腿骨外側上顆,内側上顆,腓骨頭,脛骨内側顆,外果,内果に貼付しリンクモデルを作成.角度の算出は,歩行データ演算用ソフトVICON Body Builderにて演算処理を行い,床面に対する傾斜角と膝関節角度を算出した.傾斜角は,床面からの垂線を0°とし近位部の進行方向側への傾斜を+とした.1歩行周期の中でも立脚期での角度に着目し,踵接地からつま先離地までを100%stanceとして正規化を行い,5%stance毎の角度を算出.それぞれの被験者毎に3条件での各角度平均値を算出した.統計学的解析は,対応のあるt検定を用いて条件間での各角度を比較した.尚,有意水準は5%未満とした.<BR>【説明と同意】 <BR>ヘルシンキ宣言に基づき,被験者には研究の主旨を十分に説明し同意を得た上で計測を行った.<BR>【結果】<BR>自然歩行と中足骨パット歩行との比較では,40%stance~55%stanceまでの下腿傾斜角と,20%stanceおよび35%stanceでの膝関節屈曲角度にて有意な増加(p<0.05)が認められ,大腿傾斜角では有意な差は認められなかった.自然歩行と楔状骨パット歩行との比較では有意な差は認められなかった.中足骨パット歩行と楔状骨パット歩行との比較では,15%~20%stance,35%~70%stanceでの下腿傾斜角と,15%~20%stanceでの膝関節屈曲角度に有意な低下(p<0.05)が認められ,15%stanceでの大腿傾斜角に有意な増加(p<0.05)が認められた.<BR>【考察】<BR>中足骨パット歩行は下腿傾斜角と膝関節屈曲角度の増加を生じさせることが示された.歩行は15%stance付近にて立脚中期へと移行し50%stance付近まで継続することが知られており,本研究の結果では,おおむね立脚中期での角度変化であった.また,膝屈曲角度の変化はより早期に出現する傾向があった.角度変化を起こした理由として,支点の変化による「てこの作用」が影響を及ぼしたと考えられた.中足骨パットは,足長のおよそ中心にあるリスフラン関節よりも遠位に位置する.パットによる支点がより遠位に存在することで前方への移動を制限し,後方に体重が残りやすくなる.そのため足関節背屈運動が起こり,下腿傾斜角と膝関節屈曲運動の増大へとつながったと考えられた.楔状骨パットは、自然歩行との間に有意な差は認められなかったが,中足骨パットとの関係においては有意に低下していた.各被験者内での比較では,自然歩行より低値を示す例が多くみられ,楔状骨パットにて下腿傾斜角と膝関節角度が低下する可能性が考えられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】 <BR>足は唯一地面に接する部位であり,その足を誘導することで荷重関節のメカニカルストレスを減ずることは,理学療法として有用な治療手段となる.本研究で得られた結果は,臨床において歩行の誘導を行う際の一助になるものと考えられた.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2010 (0), AcOF1025-AcOF1025, 2011
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205573991936
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- NII論文ID
- 130005016689
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可