大腿四頭筋腱断裂2症例に対する術後理学療法の報告
Description
【はじめに、目的】 大腿四頭筋腱断裂の発症率は、膝伸展機構損傷のうち2~4%と言われている。その術後理学療法の報告は少なく、先行報告においては、大腿周径、関節可動域(以下ROM)、徒手筋力テスト(以下MMT)の項目が中心に評価されてきた。今回、2例の大腿四頭筋腱断裂患者の術後理学療法を経験し、大腿周径、ROM、MMTに加え、等速性筋力、片脚スクワット、片脚跳躍距離について評価したので報告する。【症例】 症例1は10代男性、学生。身長は174cm、体重は49kgであった。既往歴は右脛骨骨端線損傷。現病歴は階段降段時、足を踏み外した際に受傷し、同日、整形外科を受診し右大腿四頭筋腱断裂の診断となる。受傷後14日目に手術を施行した。 症例2は30代男性、会社員。身長178cm、体重76kgであった。併存疾患は痛風。現病歴は階段降段時、足を踏み外した際に受傷し、同日、整形外科を受診し右大腿四頭筋腱断裂の診断となる。受傷後7日目に手術を施行した。【説明と同意】 対象者には本報告の内容、個人情報の保護を十分に説明し、同意を得た。また、本報告は本学医学部倫理委員会の承認を得て行なった。【経過】 症例1の経過は、術後1週間は右膝関節完全伸展位にてシーネ固定し、術後1週より膝ROM exを0~45度の範囲で開始した。術後1週より大腿四頭筋の著明な筋萎縮を認め、筋電図モニターを用いたバイオフィードバック療法を実施した。術後2週より1/3荷重を開始、術後3週より膝屈曲ROM exを0~60度、1/2荷重を開始した。術後4週より膝屈曲ROM exを0~90度、全荷重を開始し、閉鎖位での筋力強化、筋再教育練習を追加した。術後5週目で退院し、週2回の外来理学療法を継続した。術後26週よりジャンプ等の高負荷な練習を実施し、体育の授業に参加可能となり、術後32週で理学療法終了となった。膝屈曲ROMの推移は術後9週で90度、10週で120度、16週で150度であった。最終評価(術後33週目)は膝屈曲ROMが150度で正座可能であった。大腿周径は上極より5~15cmで1.0~1.5cmの左右差を認めた。MMTは膝伸展4、膝伸展不全は認めず、内側広筋の萎縮を著明に認めた。等速性筋力測定装置による膝伸展最大トルクの患健比は60度/秒で34%、180度/秒で65%、300度/秒で66%であった。片脚スクワットは可能であり、片脚跳躍距離の患健比は95%であった。 症例2の経過は、術後4週間は右膝関節完全伸展位にてキャスティング固定をし、術後4週より1/3荷重、膝ROM exを開始した。術後4週の時点で大腿四頭筋の著明な筋萎縮を認め、バイオフィードバック療法を実施した。術後5週より2/3荷重を開始し、退院となり、週2回の外来理学療法を継続した。術後6週より全荷重を開始し、閉鎖位での筋力強化練習を追加した。術後24週よりジャンプ等の高負荷な練習を実施し、日常生活が問題なく行えるようになり、術後27週で理学療法終了となった。膝屈曲ROMの推移は術後6週で90度、9週で120度、15週で150度であった。最終評価 (術後33週目)は膝屈曲ROMが150度で正座可能となった。大腿周径は上極より5~15cmで1.0~3.0cmの左右差を認めた。MMTは膝伸展4、膝伸展不全は認めず、内側広筋の萎縮を著明に認めた。膝伸展最大トルクの患健比は60度/秒で37%、180度/秒で47%、300度/秒で57%であった。片脚スクワットは不十分であり、片脚跳躍距離の患健比は70%であった。【考察】 2症例とも術後の膝屈曲ROMは良好であり、正座が可能であった。これは、術後早期より、膝関節周囲軟部組織伸張性や膝蓋骨の可動性の低下、膝蓋上嚢等での癒着の防止に留意し、超音波療法、モビライゼーション、筋再教育練習を積極的に施行したためと考える。膝関節伸展筋力は漸増的に筋力強化を行ったが、理学療法終了時でも大腿四頭筋の萎縮が認められ、等速性筋力の低下も著明であった。等速性筋力は、特に低角速度での低下が顕著であり、症例2では片脚スクワットが不可能であった。したがって、ジャンプの着地や片脚スクワット肢位での支持などで発揮する運動などに機能低下が残存していることが考えられた。理学療法上の改善点は、腱縫合部の回復過程を考慮した上で、低角速度かつ高負荷な練習を含めた、大腿四頭筋の筋力強化練習を再考する必要があると考えた。【理学療法学研究としての意義】 大腿四頭筋腱断裂の術後理学療法に関する症例報告は少ないため、今後のエビデンス構築においては客観的な筋力評価を含めた症例データの蓄積が重要である。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2011 (0), Cf1505-Cf1505, 2012
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205574050048
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- NII Article ID
- 130004693213
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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