運動頻度及び運動時間の差異が身体機能指標及び生活空間指標に及ぼす影響

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  • 二次予防事業対象者での検討

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【はじめに,目的】近年,二次予防事業対象者に対して様々な介護予防事業が各地で展開されている。一般高齢者を対象とした先行研究においては運動を継続することによって運動機能が有意に改善すると報告(宮本ら2005,田口ら2008)しており,我々は高齢者の運動習慣を定着させ心身機能の維持向上や生活空間拡大を図ることが重要であると考えている。しかし,運動習慣と身体機能の関係を検討した報告は散見されるが,運動頻度や運動時間と生活空間の関係を検討した報告は少ない。そこで,本研究では二次予防事業対象者の運動頻度や運動時間の差異が身体機能指標及び生活空間指標にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とする。【方法】対象は平成24年度A県B広域連合の3町における通所型介護予防事業に参加した二次予防事業対象者43名(男性:6名,女性37名,平均年齢75.8±5.6歳)である。方法は,対象者に対して事前に作成した質問紙にて年齢,性別,運動習慣の有無,運動頻度,運動時間,運動内容(重複回答)を調査し,厚生労働省の運動習慣の定義を参考に週2回以上30分以上の運動習慣を持つ群(以下,運動群),運動習慣を持つが運動群に当てはまらない群(以下,低運動群),コントロール群として運動習慣を持たない群(以下,非運動群)の3群に分類した。また,身体機能指標として握力,開眼片脚立ち,長座体前屈,30秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS30),Timed up and go test(以下,TUG),5m最速歩行時間(以下,5mMWS)を,生活空間指標としてLife space assessment(以下,LSA)を点数化し,3群間での各身体機能指標及び生活空間指標を比較検討した。統計学的解析には一元配置分散分析を用い有意差を認めた場合は多重比較検定を行った。なお,全ての有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】全ての対象者に本研究の趣旨を書面にて説明し測定及び学会発表等の同意を得た。【結果】対象者を運動習慣別に分類した結果,運動群15名(34.9%),低運動群19名(44.2%),非運動群9名(20.9%)であった。運動頻度は運動群では毎日が7名(46.7%),週4-6日が2名(13.3%),週2-3日が6名(40.0%),低運動群では,毎日が7名(36.8%),週4-6日が3名(15.8%),週2-3日が3名(15.8%),週1日が5名(26.3%),月2-3日が1名(5.3%)であった。運動時間は運動群では2時間以上が1名(6.7%),1-2時間が5名(33.3%),30-60分が9名(60.0%),低運動群では1-2時間が1名(5.3%),30-60分が1名(5.3%),20-30分が3名(15.8%),10-20分が6名(31.6%),10分未満が8名(42.1%)であった。運動内容(重複回答)に関しては運動群で最も多かったのはウォーキングで12名(80.0%),低運動群で最も多かったのは筋力トレーニングで7名(36.8%)であった。また,身体機能指標及び生活空間指標においては低運動群に比べて運動群のTUG,5mMWSは有意に低値を示し(p<0.05),LSAは有意に高値を示した(p<0.05)。しかし,非運動群との間に有意差を認めなかった。【考察】本結果から週2回以上30分以上の運動習慣を持つ二次予防事業対象者は,運動習慣が低い者よりも歩行能力や生活空間が有意に高くなることが示され,運動頻度や運動時間の差異が影響を及ぼしていることが示唆された。また,運動群と低運動群の運動内容にも差が認められており,運動群の8割がウォーキングを行っていたことも影響を及ぼした一要因ではないかと推察された。さらに,総務省による日本人の生活時間における調査(2011)では,一次活動(睡眠や食事等)及び二次活動(仕事や家事等)を除いた三次活動(自由時間)が約6時間を占めているとの報告があることから,生活空間だけでなく生活スタイルの影響も考慮すべきと考えられた。今後は対象者数を増やし検討を行うことや,非運動群の生活スタイルや身体活動量を調査すること等も視野に入れる必要性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】二次予防事業対象者の身体機能及び生活空間と運動頻度や運動時間の関係を明らかにすることは健康増進及び介護予防分野における運動指導や生活指導等,理学療法士としての役割を明確にするものであり,本研究の理学療法研究における意義は深いと考える。

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