急性広範前壁心筋梗塞後,低心機能心不全を呈し,長期に渡る心臓リハビリテーション施行により職場復帰に至った1症例
説明
【目的】急性広範前壁心筋梗塞は,低心拍出量症候群を合併した場合致命率が高く,心臓リハビリテーション(心リハ)の進行に難渋するケースが見られる。今回,急性広範前壁心筋梗塞後,低心機能により心不全を呈し,心リハの進行に難渋したが自宅退院後,職場復帰に至った症例を経験したので報告する。【症例提示】52歳男性。急性広範前壁心筋梗塞後に心原性ショックや心不全を合併し,経皮的冠動脈形成術後も大動脈バルーンパンピング,強心薬や利尿薬等の点滴,内服薬にて治療継続されるも,心尖部が瘤化し,強心薬からも離脱困難で,左室形成術,冠動脈バイパス術が施行された。術後は心不全治療が継続された。【経過と考察】心リハは,介入当初より低血圧や胸水貯留による倦怠感や呼吸困難感,精神的苦痛が続き離床に難渋した。症状が安定するまでは,患者の話を傾聴し,筋緊張異常の緩和や端坐位,立位等の低負荷の離床を実施し,耐久性や筋力維持に努めた。全身状態安定後は心不全症状や兆候に注意し,各ADL動作の獲得や歩行距離の延長を図った。6分間歩行では338.7mから415.5mと改善を認めた。退院までに外出や外泊を経て入院238病日に自宅退院となった。退院後は,外来心リハにて運動療法,心不全管理のための生活指導を実施し,生活記録を記載することにより,少しずつ行動変容が見られるようになった。結果,心不全増悪する事なく職場にも出勤可能となり,今後は完全職場復帰を予定している。本症例の入院時心リハにおいては,頻回に病室へ足を運ぶことで精神面の安定化に努め,離床が困難な時期でもリスクに配慮し心リハを継続したことがデコンディショニングの進行を防止し,全身状態安定後の速やかなADLの改善に繋がったと考える。また,退院後は運動療法のみならず,生活指導を実施し,最終的に患者本人が自己管理できるようになったことが心不全増悪を防止し,職場復帰へ繋がったと考える。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2014 (0), 0915-, 2015
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205574777088
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- NII論文ID
- 130005248597
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可