フットケア外来介入患者における足部関節可動域制限の検討

DOI
  • 瀧原 純
    総合病院土浦協同病院リハビリテーション部
  • 矢口 春木
    総合病院土浦協同病院リハビリテーション部
  • 中安 健
    総合病院土浦協同病院リハビリテーション部
  • 村野 勇
    総合病院土浦協同病院リハビリテーション部

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抄録

【はじめに、目的】糖尿病性足部潰瘍の危険因子である足底圧異常は、足部の切断や槌趾などの変形以外に足部関節可動域(以下、ROM)との関連が指摘されている。糖尿病患者における足部ROM制限の検討では神経障害を合併する群でROMは低下していたとの報告がある。しかし、足部変形や血流障害、潰瘍形成などの病態の変化とROMの特徴を関連づけた報告は渉猟し得なかった。そこで、今回糖尿病足病変に関する国際ワーキンググループ(以下、同グループ)が定めたリスク分類を用いて、その群毎のROM制限の特徴についての知見を得ることを目的に調査を行った。【方法】同グループのリスク分類はグループ0から3まで分けられている。グループ0は、神経障害も血流障害も認めない段階である。グループ1は、神経障害は認めるが足趾の変形や血流障害は認めない段階である。グループ2は、神経障害に加えて足趾の変形か血流障害のいずれかを認める段階である(足趾変形有、血流障害無が2A、足趾変形有、血流障害有が2B)。グループ3は足潰瘍(3A)か足壊疽(3B)の既往がある段階である。対象は、2010年4月から2012年10月までに依頼があった42例のうち、リハビリテーション部に介入依頼がない0群と1群および介入依頼はあるが下腿切断を施行している例が多い3B群を除く、2Aと2Bと3Aの3群28例(2A群7名・2B群10名・3A群11名、男性20人・女性8人、平均年齢67.7歳)とした。調査項目は、患側の足関節背屈 (以下、足背屈)と母趾中足趾節関節伸展(以下、母趾伸展)のROMで、診療録より後方視的に調査した。その後、分析のため、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の基準と歩行に必要なROMを考慮して、足背屈で20度以上、母趾伸展で70度以上をROM制限無(以下、無群)とし、それに満たないものを制限有(以下、有群)とした。また、患側が両側であれば制限が大きい方を選択した。統計処理は、SPSS.ver18を使用し、各群内の足背屈と母趾伸展の無群と有群の割合の比較にχ2検定を用い、有群におけるそれぞれ3群間のROMの比較にKruskal-Wallis検定および多重比較検定を用いた。いずれも有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には研究の主旨を説明し同意を得た。【結果】足背屈における有群は2A群で4名(57.1%)、2B群で6名(60.0%)、3A群で4名(36.4%)であった。有群のROMは、2A群14.0±2.5度、2B群5.8±4.9度、3A群6.8±4.8度であった。母趾伸展における有群は2A群で6名(85.7%)、2B群で4名(40.0%)、3A群で5名(45.5%)であった。有群のROMは、2A群56.7±8.2度、2B群46.3±14.9度、3A群43.0±17.9度であった。各群内の足背屈と母趾伸展の無群と有群の割合に有意差を認めなかった。足背屈と母趾伸展の3群間のROMは足背屈における2A群と2B群間で有意差を認め、それ以外では認めなかった。【考察】同グループのリスク分類によると、リスクが高まるにしたがって3年後の潰瘍発生率が上昇するとされている。そこで、リスク分類が2Aから3Aに移行していくとROM制限を有する割合も多くなり、制限の程度も大きくなると予想した。今回の検討において各群内でROM制限の無群と有群の割合に差を認めず、これは血流障害や潰瘍形成に至るまでの病態の急激な悪化や生活環境を含めた変化が関連していると推測した。足背屈の有群に関しては2B群で2A群よりも制限が大きくなっていた。2A群から2B群へは血流障害が合併されており、組織の低栄養による軟部組織の変性や高血糖による異常蛋白沈着により組織の伸張性が低下することによってROM制限が進行する可能性が考えられた。母趾伸展に関しては2Aから3A群でROM制限に差はなかった。これはすでに2Aの段階で末梢神経障害による足関節内在筋の萎縮に起因する足変形が母趾伸展ROMに影響していると考えられた。今後はROM制限の有無に関わらず、現状に至るまでの過程や罹病期間、血糖コントロール状況、血流障害の程度との関連やリスク分類の1群を含めた調査が必要になると考えられた。【理学療法学研究としての意義】同グループが定めたリスク分類における2A・2B・3A群のROM制限の有無の割合と制限の程度を明らかにすることで、糖尿病性足病変患者の胼胝や潰瘍を形成した原因を把握するための足部ROMや病態、生活環境を含めた総合的な評価の重要性を確認できた。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48101478-48101478, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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