脳卒中患者におけるpatterned electrical stimulationと随意運動の併用が脊髄相反性抑制に与える効果

DOI
  • 高橋 容子
    慶應義塾大学大学院 医学研究科
  • 藤原 俊之
    東海大学医学部 専門診療学系 リハビリテーション科学
  • 山口 智史
    慶應義塾大学医学部 リハビリテーション医学教室
  • 川上 途行
    慶應義塾大学医学部 リハビリテーション医学教室
  • 水野 勝広
    慶應義塾大学医学部 リハビリテーション医学教室
  • 里宇 明元
    慶應義塾大学医学部 リハビリテーション医学教室

抄録

【はじめに,目的】脳卒中後の尖足の原因の1つとして,下腿三頭筋の過剰収縮や前脛骨筋との同時収縮があり,脊髄相反性抑制(reciprocal inhibition:RI)の障害の関与が報告されている(Bhagchandani, et al., 2012)。我々は,健常者において総腓骨神経に対するpatterned electrical stimulation(PES)に随意的足関節背屈運動を併用すると,単独介入と比較しRIの増強効果が高いことを報告した。本研究では,これまでの知見を脳卒中患者に適用し,PESと随意運動の併用が脳卒中におけるRI障害に与える効果を検討した。【方法】対象は,慢性期脳卒中患者8名(平均年齢:57±11歳,平均発症後年数:5.1±3.0年)とした。採用基準は,Stroke Impairment Assessment SetのFoot-Pat testが1から3点,かつ,下腿三頭筋のmodified Ashworth scaleが1以上である初発脳卒中患者とした。除外基準は,下肢の骨関節疾患または糖尿病の既往がある者とした。介入課題は,1)PESのみ,2)随意運動のみ,3)PES+随意運動の3課題とし,全対象者が1週間以上をあけて,それぞれの介入を20分間実施した。PESは,麻痺側の総腓骨神経に対し,100 Hzの刺激パルス10発を1 trainとして,0.5 Hzで刺激した。刺激強度は,前脛骨筋のM波閾値とした。随意運動は,麻痺側足関節の背屈運動を0.5 Hzで実施し,運動強度は前脛骨筋の表面筋電図にて振幅200-300μV相当とした。評価は,RIについて,ヒラメ筋H反射を用いた条件-試験刺激法にて,介入前,介入直後,10,20,30分後の時点で測定した。試験刺激は脛骨神経,条件刺激は総腓骨神経へ実施した。RIは[条件刺激を加えて得られたH波振幅平均/試験刺激のみで得られたH波振幅平均]とした。統計解析は,介入課題と時間の2要因による反復測定分散分析と多重比較検定(Bonferroni法)を実施した。有意水準は5%とした。【結果】分散分析の結果,介入課題(F[2,14]=6.26,p<0.05)および時間(F[4,28]=5.30,p<0.01)において主効果を認めた。多重比較検定では,PES+随意運動は介入前と比較し,介入終了直後および10分後に有意にRIが増強した(介入終了直後:p<0.05;10分後:p<0.01)。PESのみでは,介入前と比較し介入直後に有意にRIが増強した(p<0.01)。随意運動のみでは,介入前と比較し介入後の有意な増強はなかった。課題間の比較では,PES+随意運動は,介入直後(p<0.05)および10分後(p<0.01)の時点で,随意運動のみに比較しRIの増強が有意であった。PESのみは,介入直後の時点で,随意運動のみに比較しRIの増強が有意であった(p<0.01)。【結論】脳卒中患者におけるPESと随意運動の併用は,単独介入よりもRIの増強効果が高いことが示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205574808448
  • NII論文ID
    130005417327
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0386
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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