反復的他動運動の運動頻度の違いが皮質脊髄路の興奮性に与える影響
抄録
【はじめに,目的】他動運動は,リハビリテーション分野で幅広く用いられている運動療法の一つである。Miyaguchiら(2013)は,反復的他動運動を0.5 Hzの運動頻度で10分間行うことにより,皮質脊髄路の興奮性が低下することを報告している。一方,1 Hzの頻度で1時間の反復的他動運動を行うことで,皮質脊髄路の興奮性が60分以上も増加しているとの報告もあり(Mace, et al., 2008),他動運動の条件の違いが皮質脊髄路の興奮性に対して異なる影響を及ぼしていると考えられる。しかし,他動運動が皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響についての研究は少なく,反復的他動運動の頻度数や持続時間,運動速度などの要因が皮質脊髄路の興奮性にどのような影響を与えるのかは不明である。そこで,運動頻度に着目して,10分間の反復的他動運動が皮質脊髄路の興奮性に与える影響を明らかにすることを本研究の目的とした。【方法】対象は健常成人8名であった(23.3±3.2歳)。皮質脊髄路の興奮性の評価には,経頭蓋磁気刺激(TMS)によって誘発される運動誘発電位(MEP)を使用した。刺激部位は左一次運動野手指領域とし,右第一背側骨間筋からMEPを導出した。磁気刺激強度は,介入前に約1 mVのMEP振幅値を導出する強度とした。他動運動課題は10分間の反復示指外転運動とし,運動頻度は1 Hz,3 Hz,5 Hzの3条件とした。被験者は各介入条件をそれぞれ別日にランダムな順序で実施した。MEPは介入前(pre)と介入終了後0分から10分までの2分毎(post 0-10)と15分後(post 15),20分後(post 20)に各24波形計測した。解析対象は,MEP振幅値とし,各時間において得られたMEP振幅24波形の加算平均値を算出した。統計解析には,反復測定一元配置分散分析を使用し,事後検定にはBonferroni法を用いた。有意水準は5%とした。【結果】反復測定一元配置分散分析の結果,1 Hz条件および3 Hz条件では,時間要因の主効果は認められなかった(P>0.05)。一方,5 Hz条件では,時間要因の主効果が認められた(P<0.05)。事後検定の結果,介入前のMEP振幅値は1.01±0.03 mV(平均値±標準誤差)であり,介入後のpost 0(直後-2分後)およびpost 2(2-4分後)でのMEP振幅値はそれぞれ0.57±0.07 mV,0.60±0.07 mVとなり有意な低下が認められた(P<0.05)。しかし,preのMEP振幅値に対して,post 4からpost 20の各MEP振幅値には有意差は認められなかった(P>0.05)。【結論】5 Hzの他動運動を10分間反復することにより,皮質脊髄路の興奮性が低下することが明らかになった。また反復的他動運動後の皮質脊髄路の興奮性の変化には,運動頻度が関与することが示唆された。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2015 (0), 0400-, 2016
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205574874752
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- NII論文ID
- 130005417391
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可