発症3ヶ月時点で認知機能障害が残存した橋梗塞例
説明
【目的】橋梗塞後に認知機能障害を呈した症例の報告は少なく,慢性期まで経過を追ったものは極めて稀である。今回,橋梗塞後に認知機能障害を呈した症例の経過を発症3ヶ月時点まで追うことができたので報告する。【症例提示】60歳,女性。発症とともに近医を受診。MRIにて橋に限局した梗塞巣が認められ,橋梗塞と診断。発症3週後にリハビリテーション目的で転院。転院時の神経学的所見では右上下肢に軽度の錐体路障害,運動失調を認めた。BRSは上下肢手指V~VI。FIM92点。神経心理学的所見では意識は清明,WAIS-III FIQ94,RBMT標準プロフィール点11/24,PASAT 1秒条件正答率17%,Position Stroop Test正答率85%。部屋の場所を誤る,動作が不安定であるにも関わらず階段昇降,入浴時に支持物を使用しないことがある,入浴時の清拭が不十分といった行動障害が観察された。【経過と考察】発症3ヶ月時点で退院。退院時,右上下肢の運動麻痺は改善し,運動失調はわずかに残存。WAIS-IIIFIQ101,RBMT標準プロフィール点20/24,PASAT 1秒条件正答率21%,Position Stroop Test正答率89%。部屋の場所を誤ることはなくなった。しかしその他の入院時に観察された行動障害は,練習場面では改善したが,病棟内や自宅など環境が変化した際には認められることがあった。そのためADLの一部に見守りを要し,FIM119点であった。また,調理練習では複数の料理を同時に調理することが困難であり,見守りを要した。PASATは注意の分配,変換,作業記憶の機能を,ストループ課題は遂行機能の一部である習慣的反応の抑制能力を反映する検査であると考えられており,上記の行動障害を説明することが可能である。退院時も注意機能,作業記憶,遂行機能といった認知機能の障害が残存したと判断された。本症例は発症3ヶ月時点で認知機能障害のためにADL,IADLの一部に介助を要した点でこれまでの報告と異なっており,本症例報告は貴重である。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2014 (0), 0884-, 2015
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205574979584
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- NII論文ID
- 130005248586
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可