肩関節挙上運動時の肩甲骨の動態
書誌事項
- タイトル別名
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- 性別による差の検討
説明
【目的】肩関節の術後理学療法において,関節可動域の獲得期間が男女間で異なることを経験する。これまでの動態解析では,肩関節の運動戦略の男女差は十分検討されていない。本研究の目的は,肩関節の挙上運動時の肩甲骨の動態の性差を明らかにすることである。【方法】対象は肩関節に既往のない男性11名(平均26.1才),女性11名(27.8才)の計22名である。運動課題は肩関節屈曲,肩甲骨面挙上,外転であり,上肢下垂位から挙上130度間を速度10回/分で5回反復した。測定肢位は,端座位,肘関節伸展位,前腕および手関節中間位とした。肩甲骨の動態解析には,磁気センサー3次元空間計測装置(Polhemus社製LIVERTY)を使用した。センサーは上腕骨後面,肩峰,胸骨部に貼付した。得られたオイラー角から胸郭に対する肩甲骨の上方・下方回旋角度(以下,前後傾,内外旋角度を求めた。角度の算出にはScilabコード(Scilab-5.5.0)を用い,上肢下垂位からの挙上30度,60度,90度,120度位の変化量を検討した。統計解析は,挙上角度および性別を2要因とする二元配置分散分析を用い,有意水準は5%とした。【結果】屈曲時の肩甲骨上下回旋角度は挙上角度および性別の主効果が認められ,挙上に従い上方回旋し,120度位では男性34.6±6.2度,女性28.8±7.5度を示した。交互作用は認められなかった。屈曲時の前後傾角度は挙上角度と性別に主効果を認め,挙上に伴い後傾し,120度では男性11.9±6.1度,女性4.1±6.0度を示した。交互作用は認められなかった。屈曲時の内外旋角度は主効果,交互作用ともに認められなかった。肩甲骨面挙上時の肩甲骨上下回旋角度は,挙上角度と性別の主効果を認め,挙上に伴い上方回旋が増大し,120度では男性33.1±6.2度,女性26.6±5.4度となった。交互作用は認められなかった。肩甲骨面挙上時の前後傾角度においても,挙上角度および性別の主効果が認められ,挙上に従い後傾し,120度では男性11.7±7.1度,女性4.9±5.1度を示したが,交互作用は認められなかった。肩甲骨面挙上時の内外旋角度には交互作用,主効果とも認められなかった。外転時の肩甲骨の上方回旋は,交互作用は認められなかったが挙上角度および性別の主効果を認め,挙上に伴い増大し,120度では男性34.2±6.1度,女性26.1±6.9度となった。外転時の前後傾角度においても,交互作用を認めず,挙上角度と性別の主効果のみ認め,挙上に従い後傾し,120度では男性13.9±6.7度,女性6.9±8.1度であった。外転時の内外旋角度には主効果,交互作用は認められなかった。【結論】肩関節の屈曲,肩甲骨面挙上,外転運動において,肩甲骨の上方回旋角度と後傾角度は男性に比べ女性が有意に小さい値を示した。これは,女性は関節の柔軟性が高く,挙上運動の際,肩甲上腕関節が担う運動の割合が高いことが考えられた。この特性は拘縮改善の理学療法プログラムの立案の際において有益であると考える。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2015 (0), 0372-, 2016
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205574996864
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- NII論文ID
- 130005417408
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可