外側ウェッジが歩行時の足部バイオメカニクスに及ぼす影響
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- 澤田 智紀
- 広島大学 大学院医歯薬保健学研究科 保健学専攻 森整形外科
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- 徳田 一貫
- 広島大学 大学院医歯薬保健学研究科 保健学専攻 森整形外科
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- 谷本 研二
- 広島大学 大学院医歯薬保健学研究科 保健学専攻
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- 緒方 悠太
- 広島大学 大学院医歯薬保健学研究科 保健学専攻
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- 阿南 雅也
- 広島大学 大学院医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 広島大学 大学院医歯薬保健学研究科 附属先駆的リハビリテーション実践支援センター
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- 高橋 真
- 広島大学 大学院医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 広島大学 大学院医歯薬保健学研究科 附属先駆的リハビリテーション実践支援センター
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- 木藤 伸宏
- 広島国際大学 総合リハビリテーション学部
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- 新小田 幸一
- 広島大学 大学院医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 広島大学 大学院医歯薬保健学研究科 附属先駆的リハビリテーション実践支援センター
説明
【はじめに,目的】外側ウェッジの処方は,内側型変形性膝関節症の進行リスクに関連するとされる,歩行時の外部膝関節内転モーメント(KAM)の軽減を目的にしているが,効果を認めないとする否定的な研究報告も散見される。外側ウェッジの装着により,足圧中心は外側へ変位し,足関節外反モーメントが増大することで,KAMが軽減するとの報告がある。これらの知見は,足関節複合体が外側ウェッジの力学的効果に重要な役割を担っていることが示唆される。我々の知る限りにおいて,外側ウェッジによるKAMの変化に関連した,足部運動を詳細に検討した先行研究はない。したがって,本研究は外側ウェッジが足関節,特に踵骨と舟状骨の運動学に及ぼす影響を明らかにすることを目的として行った。【方法】整形疾患や外傷の既往がなく,正常な足部アライメントを有する健常高齢者5人(年齢71.8±4.1歳)を被験者とし,両下肢10肢を対象とした解析を行った。課題動作は裸足(条件BF),外側が内側よりも7mm厚い外側ウェッジ(高強度の型取り用液状シリコーンゴムで作成)装着(条件LW)の2条件での平地歩行を採用した。計測には,時間同期させた床反力計(テック技販社製)と三次元動作解析装置Vicon MX(Vicon社製)を使用し,データはサンプリング周波数100Hzで取得した。立脚期を解析対象とし,各条件5試行の平均を解析した。解析項目はKAM最大値の他,KAM最大値出現時の前額面上の足関節複合体角度,下腿セグメントに対する踵骨セグメントの相対角度(後足部角度),絶対空間に対する踵骨セグメントの角度(踵骨角度)ならびに足底面と舟状骨間の距離(舟状骨高)とした。統計学的解析には統計ソフトウェアSPSS Ver.22.0(日本アイ・ビー・エム社製)を用い,2条件間の比較のために対応のあるt検定もしくはWilcoxonの符号順位検定を行った。有意水準は5%未満とした。【結果】KAM最大値は条件LWが条件BFと比較して有意に低値を示した(条件LW:0.48±0.13[N・m/kg],条件BF:0.53±0.16[N・m/kg],p<0.05)。また,足関節複合体角度(外反+)は条件LWが条件BFと比較して有意に大きく(条件LW:-2.0±2.9[deg],条件BF:-5.0±2.7[deg],p<0.01),踵骨角度(外反+)は条件LWが条件BFと比較して有意に小さかった(条件LW:-0.1±7.0[deg],条件BF:2.0±6.7[deg],p<0.01)。さらに,舟状骨高は条件LWが条件BFと比較して有意に高かった(条件LW:15.3±6.3[mm],条件BF:14.2±6.5[mm],p<0.05)。なお,後足部角度は条件間で有意差を認めなかった。【結論】本研究から,外側ウェッジの装着は足部全体を外反方向,踵骨を内反方向へ作用させ,さらに舟状骨を高くすることが明らかとなった。したがって,KAMの軽減を目的とした外側ウェッジの処方には,足部の外反運動に対して踵骨が中間位となるように,内側縦アーチの剛性を高める足部機能の反映が重要であることが示唆された。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2015 (0), 0422-, 2016
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205575030912
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- NII論文ID
- 130005417488
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可