中年期ラットACL損傷モデルにおける神経栄養因子NGF・BDNF,成長関連タンパク質GAP-43 mRNAの発現動態

DOI
  • 武川 夏奈
    埼玉県立大学 保健医療福祉学部 理学療法学科
  • 金村 尚彦
    埼玉県立大学 保健医療福祉学部 理学療法学科
  • 国分 貴徳
    埼玉県立大学 保健医療福祉学部 理学療法学科
  • 村田 健児
    埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科
  • 森下 佑里
    埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科
  • 宮下 紗季
    埼玉県立大学 保健医療福祉学部 理学療法学科
  • 峯岸 雄基
    埼玉県立大学 保健医療福祉学部 理学療法学科
  • 清水 大介
    埼玉県立大学 保健医療福祉学部 理学療法学科
  • 萩台 保之
    埼玉県立大学 保健医療福祉学部 理学療法学科
  • 中本 幸太
    埼玉県立大学 保健医療福祉学部 理学療法学科
  • 高柳 清美
    埼玉県立大学 保健医療福祉学部 理学療法学科

抄録

【はじめに,目的】前十字靭帯(以下ACL)損傷後,急激な方向転換時や減速動作時に膝くずれを起こすなど,関節不安定性を生じることが多い。靭帯が再建し力学的に制動された状態であってもそのような関節不安定性を呈することがある。その原因として,ACL損傷時にそこに存在する神経も損傷され,神経機能が低下している事が予想される。神経栄養因子は,神経細胞の発生・成長・維持・再生を促進させる物質の総称であり,神経成長因子(以下NGF)や脳由来神経栄養因子(以下BDNF)もそのうちのひとつである。成長関連タンパク質-43(以下GAP-43)は成長中,軸索再生中の神経成長円錐において高レベルで発現される。我々はラットにおいてACL完全損傷であっても膝関節の異常運動を制動することで自然治癒することを報告してきた。しかし,ACL損傷後,治癒したACLにおける神経再生については未だ不明である。そこで本研究では治癒したACLにおけるGAP43,NGF,BDNFの発現について靱帯内で産出されるのかについて明らかにすることを目的とした。【方法】Wistar系雄性ラット6か月齢12匹を対象に,術後2・4週群に分け,さらに各群においてACL切断群(以下ACL-T群)3匹,関節制動群(以下CAM群)3匹に割り当てた。それらはラットの右後肢を対象として手術を行い,ACL-T群の左後肢をCTR群として用いた。CAM群はACL切断後,脛骨の前方引き出しを制動する手術を行った。術後2・4週経過時点でACLを採取した。採取したACLからTotal RNAを抽出し,その後cDNAを合成した。GAP43・NGF・BDNFのプライマーを使用して,real time PCR法(ΔΔCT法)にて分析を行った。統計は一元配置分散分析と多重比較検定Scheffe法を行った。【結果】GAP43は術後2週では,CTR群の発現量を1とするとACL-T群で12.0倍,CAM群22.5倍であり,CTR群とCAM群との間で有意に高い発現量であった(p<0.05)。術後4週ではCTR群と比較してACL-T群で45.9倍,CAM群62.8倍であり,両者とも有意に高い発現量がみられた(p<0.01)。NGFは術後2週では,CTR群と比較するとACL-T群で3.7倍,CAM群2.5倍であった。術後4週ではCTR群と比較するとACL-T群で2.0倍,CAM群1.4倍であった。術後2週,4週ともにACL-T群とCAM群において有意な差は認められなかった。BDNFは術後2週,4週ともに,CTR群と比較してACL-T群は0.2倍,CAM群は0.1倍であり,有意な差は認められなかった。【結論】本研究では神経再生にかかわる因子GAP43,NGF,BDNFmRNAの発現量について検討した。ACL-T群,CAM群においてNGFの発現量が高値を示したことから,ACL損傷後の神経再生を促進している可能性が示唆された。また,ACL-T群に比べCAM群においてGAP43の発現量が高値を示したことから,異常な関節運動を制動すると,靭帯の治癒が促されると共に,ACLに存在する神経も再生する可能性が示唆された。今後は組織学による検討を行い,神経走行について検証する事が必要である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205575081856
  • NII論文ID
    130005417475
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0463
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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