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骨盤前傾を促す効力を具備した継手付き体幹装具装着が高齢者の歩行に与える影響
Description
【はじめに、目的】日本人は加齢に伴って骨盤後傾姿勢を呈しやすいといわれており,姿勢変化によって運動学・運動力学的変化が起こることや,高齢者の歩行に関与することが示唆されている.そのため,高齢者に対するリハビリテーションの場面では骨盤後傾姿勢が問題になることが多い.骨盤後傾を改善させる方法として,股関節のストレッチが高齢者の骨盤傾斜を変化させるという報告があるが,介入効果に一貫性がないことや長期介入を必要とする点などの問題がある.そのため道具を用いた即時的な骨盤後傾姿勢の改善はリハビリテーションの場面において有用であると考えられる.我々は抗力を具備した継手付き体幹装具の開発・研究において,継手の抗力により胸部を前方から押す力を与えることで,健常若年者の骨盤前傾を促す効果を明らかにした.しかし,これまでに高齢者を対象とした装具の効果は検証されていない.そこで本研究では,骨盤前傾を促す効果を持つ継手付き体幹装具の装着が地域在住高齢者の歩行に与える影響を骨盤や体幹角度,下肢関節角度,下肢関節モーメントに着目し,分析することを目的とした.【方法】対象は地域在住高齢男性27 名(年齢68.3 ± 5.33 歳,身長163.5 ± 5.09cm,体重62.8 ± 6.26kg),日常生活動作が自立しており,既往に整形外科的な手術歴や神経疾患を有さない者とした.計測機器は三次元動作分析装置VICON612,AMTI社製床反力計6 枚を使用した.赤外線反射マーカーを被検者の身体各部48 か所に貼付し,骨盤に貼付したマーカーより骨盤傾斜角度(ASISとPSISを結ぶ線を基準とした絶対座標系に対する角度)を算出した.また,継手付き体幹装具が抗力により胸部を後方に押す力は胸部接触部に設置したひずみゲージによりリアルタイムで計測し,20 〜25Nで統制した.被験者は10m歩行路を,抗力を具備した継手付き体幹装具装着(以下,装具群),装具なし,コントロール群としての軟性コルセット装着(以下,コルセット群)の3 条件で自由速度にて歩行を行った.なお,軟性コルセットは先行研究より,装着によって骨盤と体幹の角度を変化させないことが明らかになっている.各条件について3 施行ずつ歩行を行い,3 施行の平均値を算出した.計測によって得られた歩行パラメータは一歩行周期を100%に正規化し,条件間で比較を行った.あわせて歩行速度を算出,比較を行った.なお統計処理は,一元配置分散分析反復測定法を用い,その後Bonferroni法による多重比較検定を実施した.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】研究の実施に先立ち,国際医療福祉大学の倫理委員会にて承認を得た.なお,全ての被験者には予め本研究の目的・内容・リスクを十分に説明し,書面による同意を得た後に計測を行った.【結果】歩行速度は装具なしと比較して,装具群とコルセット群において有意に増大した.また,装具群では他の2 群と比較して立脚期において有意に骨盤が前傾し,体幹が伸展した.さらに装具群は立脚初期における股関節外転モーメントが他の2 群と比較して有意に増大した.【考察】今回,抗力を具備した継手付き体幹装具の装着により高齢者の骨盤を有意に前傾させることが分かった.これにより装具を装着すると地域在住高齢者においても,健常若年者と同様の効果が得られたことが明らかになった.また,装具を装着することで歩行速度と立脚初期における股関節外転モーメントが増大することが分かった.先行研究において,骨盤後傾を呈する高齢者は歩行速度の低下や,立脚期の股関節外転モーメントが低下することが示唆されている.装具装着による姿勢の改善によって,立脚初期における前方への重心移動が円滑に行われるとともに,股関節外転モーメントを発揮しやすくなったと考えられる.立脚期における股関節外転モーメントは歩行において側方への重心動揺を抑える役割があるため,抗力を具備した継手付き体幹装具の装着は歩行時の側方安定性の向上につながることが期待される.【理学療法学研究としての意義】日本における高齢者の姿勢として問題とされる骨盤後傾姿勢を改善することで,歩行速度や立脚期の股関節外転モーメントが増大することが示唆された.今回得られた結果は,高齢者における継手付き体幹装具装着の効果と,歩行における姿勢への介入の意義とを示す上で有用な情報であると考えられる.
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2012 (0), 48101673-48101673, 2013
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205575152000
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- NII Article ID
- 130004585854
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed