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近赤外分光法(NIRS)による局所筋の疲労評価 表面筋電図周波数解析との関係
Description
【はじめに、目的】これまで代謝活動に関して行われてきた運動負荷における研究として、疲労物質の一つである血中乳酸の測定や代謝の結果として発生する呼気ガス分析などが行われてきた。一方、表面筋電図上、筋疲労に伴い、そのパワースペクトルの高周波成分から低周波成分へと移行し、かつ表面筋電図の振幅が大きくなるとされている。近年、運動中の局所筋における酸素動態を非侵襲的かつリアルタイムに観察する方法として、近赤外分光法(以下NIRS)が用いられるようになってきた。NIRSは生体組織内のヘモグロビンが酸素との結合状態により近赤外光の吸収特性が異なることを利用して、非観血的に血中酸素動態を計測する光計測法である。脳活動のイメージングやリハビリテーション、スポーツ科学など幅広い分野での応用が期待されている。一方、NIRSを用い、血中酸素動態を計測した研究はいくつか存在し、NIRSによる筋疲労評価の可能性は示唆されているが、いまだに確立されたものはない。今回、20 歳以上の健常成人を対象に運動強度の違いによる局所筋の疲労状態について、NIRSを用いて血中酸素動態を計測し、表面筋電図との関連を分析した。【方法】対象は健常者36 名(男性18 名、女性23 名)で平均年齢は21.9 ± 3.3 歳である。対象筋の上腕二頭筋に筋電図(日本光電社製 WEB-7000)及びNIRS(Spectratech inc.社製 OEG-16)のプローブを1 組ずつ取り付けた。運動強度の設定は、BIODEX system3 により、規定の肢位にて最大等尺性収縮(以下MVC)を3 回測定し、得られた値のうち最大値をMVCとして採用した。十分に休息を入れた後、同一肢位にてまず20%MVCで30 秒間の等尺性収縮運動を30 秒間の休憩をはさみ3 回計測し、3 回目の20%MVC計測後60 秒間の休憩を入れ、80%MVCでも同様に計測を行った。3 回目の80%MVC終了後も60 秒間は同一肢位のままNIRSの計測を行った。得られた筋電図は整流平滑化(以下ARV)を行い、これを動作時間で積分した値を積分筋電図(以下IEMG)として筋使用量の評価に使用した。その後、高速フーリエ変換(以下FFT)を用いて、2 秒毎の平均周波数(以下MPF)を算出した。各運動強度実施時にも筋電図同様、NIRSの計測を行った。使用した装置では、770nmと840nmの2 波長の近赤外線吸収係数を使用し、血中の酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの濃度変化量(⊿Coxy・D、⊿Cdoxy・D)を算出し、その差(⊿Hb60s)を筋疲労の値として採用した。統計学的分析はDr SPSS Ⅱを用いて、運動強度及び施行回数によるMPFの変化は二元配置分散分析を用い、運動強度による⊿Hb60sの違いは個別に分析した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、国際医療福祉大学倫理審査委員会の審査承認を受けた(承認番号:11-182)。研究協力者には書面を用いて口頭で研究内容を説明し、同意書の取り交わしを行った。【結果】各運動強度におけるIEMGは、20%MVCよりも80%MVCで有意に高値を示した。また、各運動強度の施行終了後のMPFは、20%MVCよりも80%MVCで有意に低値を示した。さらに、対象者による違いはあるが、各運動強度での施行回数の増加に伴い、MPFの低下率は20%MVCよりも80%MVCの方で増加傾向を示した。20%MVC負荷時の血中酸素動態⊿Coxy・D、⊿Cdoxy・Dはともに、動作終了後すぐに動作前の値(ゼロ)に漸近した。一方、80%MVC負荷時の血中酸素動態は動作前の値に漸近はせずに、⊿Coxy・Dと⊿Cdoxy・Dの間に大きな差が生じた。このような傾向はすべての対象者で観察された。【考察】筋電図のFFT解析において、20%MVCでは一部の対象を除き、施行回数が増えても測定時間内の変化を示さなかったことから筋疲労をきたすまでに至らなかったと推測される。逆に、80%MVCでは測定時間の後半になるほど低周波領域に移行する傾向があり、筋疲労を表していたと思われるが、MPFの低下率と施行回数増加との関連は認めなかった。一方、NIRSを用いた新たな評価指標⊿Hb60sは、低負荷の場合は低値を、逆に高負荷の場合は高値を示した。このことからも比較する対象の⊿Hb60sの値が疲労程度に深く関与していることが明確であり、NIRSは局所筋の疲労評価には有効であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】NIRSは小型軽量で操作も簡単であることに加え、局所筋の筋疲労を非侵襲的に観察でき、臨床上のトレーニング効果を客観的にとらえることが可能である。また、NIRSでは、筋電図ではとらえられない運動後の状態を測定でき、トレーニング後の疲労回復を血中酸素動態で評価することが容易であり、リハビリテーション領域における有用性が期待できる。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2012 (0), 48101543-48101543, 2013
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Keywords
Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205575328128
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- NII Article ID
- 130004585755
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed